やんの読書日記
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夢枕 獏作 中央公論新社
オスマントルコの繁栄した時代 スレイマーン1世が自己の権力の象徴に 建てさせたセリミエジャーミー 建築したのがシナン 彼が建築家として活動を始めるのは 50才を過ぎてからで 若い時代には当時の先進国ベネチアなどを旅して 建築様式を学んだり、スルタンの目として 暗躍したのかもしれない。
この物語の佳境は、スルタンの側近で第二権力者の イブラヒムの死だと思う。 絶対権力者でありながら人を見る目を持っていた スレイマーンが元奴隷のイブラヒムを採用し オスマンの国作りをして繁栄させていくのだけれど 権力争いに負け、スレイマーンの后のわなにはまって 暗殺されてしまう。自らはイスラムに改宗していなかったらしく 死際にアーメンと唱えるイブラヒムの悟りを知って 胸がかきむしられる思いがした。
シナンが思い描いていた建築が数学に基づいていたこと 神も数学によって成り立つと言う 科学者の能力が発揮されるのには時間がかかったが それは素晴らしい遺産だと思う。
ひびけ!とどけ!34人の声...
社団法人日本てんかん協会編
てんかんについては若いころから理解していたつもりでいた。 隣に住んでいた女の子が大発作を起こす子だったし 学生時代には講義中に発作で倒れた子を見ていたし 長女も軽度で今は完治しているが同じ病気を持っていたからだ。 けれども34人の手記は私の思っていたものより厳しく、つらく悲しい 病気であることによって学習の場や就職の機会が奪われてしまう 発作の現場を見られたくない、という本人や家族の つらい気持ちがのしかかってくるようだった。 教育の機会を求めて働きかける家族の人々 前向きに生きる本人の姿を読むうちに 自分の立場がいかになまやさしいものであるかがわかってきた。 周囲の人の理解を求めなければ。 それは人に優しくなるということ。 自分は関係ない、と逃げていないでもっとよく知ろう。
畠中恵作 新潮社
しゃばけ第二弾 江戸の街中で殺人事件 おかっぴきの親分より先に事件の情報を 手に入れるのは薬種屋の若旦那 病弱の若旦那が今回はちょっと成長しているみたい 腹違いの兄を気遣い 自分の将来を不安に思い 甘やかされている自分から離れたいと感じる
短編集だけれどそれぞれに人間味のある ドラマがあって前作より味わいが深い
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