やんの読書日記
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2005年01月29日(土) イルカの家






サトクリフ作
乾 侑美子訳
評論者

サトクリフの初期の作品
女の子が主人公
鎧師のおじさんの家に引き取られたタムシンが
故郷から離れて居場所のない思いをしているのだけれど
いとこのピアズやちびちゃん、おじさん、おばさんに
囲まれて過ごすうちに、自分の夢をかなえる手前までいく。
魔法使いのおばあさんがくれた赤いチューリップの球根が
タムシンを導いてくれたのだ。

チューダー朝期のロンドンが舞台
大航海時代の幕開け
そういう時代背景を下地にしていて
テムズ川の流れや日の光
草花の香り、音楽など情景描写がきれいで
幸せな子ども時代のサトクリフの姿を見ているようだ


2005年01月19日(水) しゃばけ



畠中恵作
新潮文庫


あやかしと病弱な大店の若旦那が
連続殺人事件を解決すると言う
捕り物帖のようでもあり江戸の人情ものでもあり
妖怪ものでもあるふしぎで明るい物語。
あやかしというと陰陽師に出てくるような
かなり危ないモノかと思えば
若旦那と一緒に店の離れで活躍するあやかしは
家守みたいに小さくてかわいい感じがする。
体の弱い若旦那にぴったりついてその身をお守りするのも
手代に化けたあやかしでこちらはやさおとこだ。
ひょんなことから殺人の現場に遭遇してしまった
若旦那が殺人犯があやかしであることを突き止めて
最後の火事場で封じ込めるまでの
登場人物のせりふや動きがとても面白い。
江戸の風物、商売の動き、町屋のつくり
人の考え方など当時の江戸の風物を見ているようだ。
若旦那だけに見えるあやかし、と言うのにはわけがあるのだけれど
病気の自分のために家族や店の人がしてくれたことを思って
殺人を繰り返す凶悪なあやかしを退治しようと考え付いた
若旦那の姿にすっきりしたものを感じた。
甘やかされて育ったぼっちゃんと言う感覚はない。
気概のある若旦那。このあとも続編があればイイナと思ってしまった。
江戸時代の日本人は周りの自然現象にもあやかしを感じていたのだろうか。
そう考えると現代の機械と道具に囲まれた生活が
つまらないものに感じてしまう。


2005年01月05日(水) 青いチューリップ




新藤悦子作
講談社

オスマントルコのスレイマーンの時代
青いチューリップを作り出すことに
信念を持っていた人々と
モスクのタイル画を描く絵師たち
トルコとペルシャの国境の山岳地帯で
暗躍する義賊
たった3個の青いラーレ(チューリップ)のために
様々な人が現れてかかわりあっていく
その人々の中で一番引かれたのは
絵師頭の孫でラーレの研究者の娘ラーレだ
オスマンの世界では偶像禁止
肖像画も禁止されているのだそうだが
ラーレの母はひそかに自分の娘の肖像画を描いていたし
文様を描けと指導する祖父も、最後のほうでわかるのだが
自分の妻の肖像画を描いていたのだ。
ラーレは見たものをそのままに描きたいという欲求があり
祖父の教えに矛盾を感じるのだけれど
最後にはそれが解消される。
囚われの身となった父を助ける旅をして
自分も義賊にとらわれてしまうのだけれど
女首領にすすめられて壁画を描くときのラーレの姿が
一番生き生きとしている。
女首領の父が残した言葉
「パンは飢えを満たし、絵は魂を満たす」いい言葉だ。
青いラーレは2つは盗まれ
最後の1つは燃やされてしまうが
スルタンがラーレに熱狂するあまり
人民の平和を忘れてしまうからだと静かに語る
ラーレの父の誇り高い姿もすばらしい。


2005年01月04日(火) 剣闘士スパルタクス

剣闘士スパルタクス


佐藤賢一作
中央公論新社

世界史に出てくる剣奴の反乱
首謀者はスパルタクス
奴隷からの解放をめざして立ち上がり
三頭政治のひとりクラッススによって
鎮圧される。
それだけの知識しかなかった。
スパルタクスがトラキア人の一級剣闘士であった時代、
物語の前半の闘技場での試合の様子が臨場感たっぷり。
またスパルタクスの自尊心と退廃しかけた気持ちの
両方がよく表われていて面白かった。
映画やサトクリフの本などで出てくる剣闘士と
変らない戦い方、観客の様子に
サトケン文章の魅力に引き込まれた
強い癖があるけれど、正確で細かい描写であきが来ない
スパルタクスは、剣闘士の自分に誇りを感じていたが
奴隷であることから解放されたかった。
剣闘士仲間と陰謀して脱出はするけれど
農奴と合流したことから彼の心が揺れ動く
自分は骨の髄まで剣闘士であることを自覚せざるを得なかった
ところで敗北するのだ。
ローマ軍団に連戦連勝していながらスパルタクスに
心の闇が現れてきてそこがまた面白い。


2005年01月03日(月) 生きていてよかった


生きていてよかった

相田みつを
ダイヤモンド社

何年か前にネット友達が教えてくれた
相田みつを
書店で「にんげんだもの」を立ち読みして
少し感じるものがあった
そのときはそれだけだった
くねくねした毛筆
それがあまり私の心に響かなかったのかもしれない

最近回りで相田みつをの本が売れている
相田みつをの年賀状やら
カレンダーやらも出ている
なぜかなと思ったら、ドラマの影響だった
その役者が個人的に好きらしくて
ドラマの中で毎回相田みつをの言葉を使っているのだ。

改めて、本を探してみた
以前より歳も重ね
つらいことや避けられない苦しみも味わったあとだからか
この言葉たちがかなり私の胸に響いてきた
人生の機微
歳を重ねた人にわかるこの言葉たち


2005年01月02日(日) 今がいちばんいい時よ


今がいちばんいい時よ

ターシャ・チューダー著
メディア・ファクトリー

コーギー犬とガーデンと挿絵のオールカラーに
珠玉の言葉
89歳のチューダーさん
彼女のガーデンも手作りも好きだけれど
やはり彼女の凛として筋の通った生き方が好きだ

女手1つで子どもを育て
挿絵の仕事をし
今でも庭仕事と挿絵を描きながら
言葉をつむいでいる
こんなおばあさんになれたらいいな
と思いながら、自分に足りないものを探している


2005年01月01日(土) ローマ人の物語 ユリウスカエサル ルビコン以前


ユリウス・カエサル...新潮文庫

塩野七生著
新潮文庫

ローマの独裁者カエサルの青年期からガリア遠征の終わるまで
ルビコン川を越えてローマの反逆者の汚名を着せられるまでの
カエサルの行動はいかに。
カエサルというと第一回三頭政治の大立役者
独裁者で暗殺された悪人、というイメージが強かったが
この本では私のイメージを覆して戦上手、統率力のある
将軍カエサルという新しいイメージが出来上がった
若いころのプレイボーイの様子
読書好きで借金をしていても尊大に振舞う様子
それが人をひきつける要素になっていて
ガリア戦では神出鬼没でとらえどころのないガリア人を
次々と攻略していく
読みどころはヴェルチンジェトリクスとの攻防
ガリア人の最強の指導者となったヴェルチンとの戦いは
「カエサルを撃て」にも正確に書かれているが
塩野さんの本ではカエサルの賢さが前面に押し出されていて
その緻密な描き方にかなりうならされる。

ガリアを平定したカエサルを待ち受けていたのは
元老院最終勧告
要するに、反逆者の汚名を着せられたわけだ
国境のルビコン川を越えれば処刑に
カエサルはこれまでの経歴を無駄にすることを
一番に嫌ったため
ルビコン川を渡ることになる。
「賽は投げられた」


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