やんの読書日記
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2004年04月29日(木) |
スコットランドの早春 |
ロザムンド・ピルチャー作 一週間後に継母の弟と結婚することになっているキャロラインが、 生き別れになっている実の兄に会いに 年の離れた弟とスコットランドまで出かける 早春のスコットランドは猛吹雪 遭難しかけた二人を助けた青年と恋に落ちて キャロラインは結婚式を解消
一週間の出来事を速いテンポで書いているはずなのに なぜか自然描写は鮮やかでていねいだし 人の言葉もそれぞれに意味があって 読み飛ばすとわけがわからなくなるくらい 内容が詰まっている。
冒頭のパーティーの部分で 継母の友人とキャロラインが話題にしている スコットランドの農場主ケアニー 兄を事故で亡くして、ふるさとの家を手放すという青年オリヴァー それが偶然にもキャロラインを吹雪の日に助けた人
よくできているけれど ○○ロマンスみたいに軽いお話ではない 子どものように何も知らなかったキャロラインが スコットランドへの旅をする間に 弟や兄への愛情を強め 本当に大切な人が誰なのかを知ることになる またキャロラインとであったオリヴァーも 自分にとって大切なふるさと、家族を知るようになる。 この二人の心のふれあいがとてもあったかくて うれしい気持ちにさせてくれる。
2004年04月28日(水) |
白鳥の騎士 笛吹童子 |
中学生のときテレビの人形劇で見た笛吹童子が懐かしかったので 借りて読んでみた 白鳥党とされこうべ党が世の中にはあって 善と悪とが闘っている 白鳥党の先祖は朝鮮半島からきた王子だとか されこうべ党の先祖もその王子の弟だとか
奈良時代、東北地方の蝦夷を打つために 都から派遣された雄麿という武士が白鳥党の党首だった時代 だましだまされ、流転の末に いろいろな人々と出会っては分かれる であった人どうし必ず何かの縁でむすばれているところ ここのくだりは講談並みにテンポがはやくて ぐいぐい読めてしまう
どちらも危ういところを白鳥党が勝利するという 勧善懲悪的な冒険活劇だ 人形劇で見た笛吹童子 これはかなり脚色されていたみたいだ 大江山の幻術使い霧の小次郎とその妹胡蝶尼が 兄妹の名乗りをあげずに咲きに小次郎が殺されてしまったり 三日月童子なんていたっけというくらいの違いだけれど 映像で見たものは今でもはっきり覚えている もともとラジオドラマの脚本だったらしいから 本で読むよりオンエアの方が印象深いのに違いない 小次郎を殺さないで、という投書が放送局にたくさん届いた という話を思い出した なのに小次郎は殺されてしまった そこの部分は今でも覚えている
上橋菜穂子作 偕成社
守人が帰還する ということは、暴力神サーダ・タルハマヤに とりつかれたアスラが元の少女に戻って もしかしたら新ヨゴ王国の女商人のもとへ 行くのかと期待していた。
思いもかけなかった展開 アスラは帰還したけれど 人事不省のまま物語が終わってしまう 自分の民族が虐げられるままになっていることを 利用して、ロタ王国をひっくり返そうと画策した 女狩人も姿を消してしまう
タルハマヤがアスラの中に入り 暴力を振るうときに彼女が感じる快感 に寒気を感じたのはバルサだけではないと思う 暴力を止めようとしたのは アスラの兄の力が大きかったと思う
差別には報復で 報復には報復で 今の時代そのままがこの物語に描かれているが それを食い止める何かが きっとあるはずだ この物語に結末がないのは それを提示しているからだと思った
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