やんの読書日記
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2003年08月26日(火) アイスランドへの旅

ウィリアム・モリス作
大塚光子訳
晶文社

ウィリアムモリスのアイスランド旅日記
アイスランドというと地球の割れ目ギャオ
雪と氷の国、長寿の国くらいしか知らない
民族は北欧のスウェーデン、ノルウェイ
デンマークから移住してきた人々を祖先と
するらしい。美髪王ハーラルの圧制から逃れるために移住してきたと言う。
それだけでサトクリフの「ヴァイキングの歌」を思い起こす。
モリスがアイスランドに惹かれるのは
古ゲルマンの神話 サガの舞台であることかららしい。
ニーベルンゲンの歌のジークフリートもベーオウルフも
このサガが原典らしい

サガの舞台のアイスランド
わたしが興味深かったのはやっぱり
ギャオ。深い地球の割れ目の底を馬で
通り過ぎる場面でモリスの手書きの
地形図や溶岩が作り出した模様がユーモラスで興味深い。
島全体が火山なのに緑に覆われた牧草地帯に花畑があり、
石造りの家にはひとなつっこい人々が住んでいて
モリスたち一行をもてなしてくれる。
アイスランドから帰ったモリスが
人々が風景に対して異常に大きく見える
と言った言葉がおもしろい。
小さな島なのに人口密度の低い
大自然にあふれた島
アイスランドに一度は言ってみたいと思った


2003年08月22日(金) セカンドサマー

アン・ブラッシェアーズ
理論社

トラベリングパンツの続編
去年の夏から一年たってまた幸せのトラベリングパンツを回してはく季節がやってきた
4人の少女は成長して車の免許も取ったのに
少女趣味的にトラベリングパンツに自分の幸せを託したりする。
レーナは恋人のコストスと別れたことに未練を残し、ビーは自殺した母親のことを知るため祖母の家に自分が孫であることを隠して入り込む。カルメンは離婚した母に恋人ができたことで板ばさみになって悩み、ティビーは映画作りで母親を傷つけたことを知って落ち込む。
一度目にはいたトラベリングパンツが最悪の事態をまねき、二度目にはいたときに
彼女たちは幸せになる。
その展開は前回と同じだったけれど
今度の彼女たちは、トラベリングパンツを
幸せになる道具としてより、4人の友情を確かめる道具として扱っていたみたいだ。
4人は自分の力で最悪の事態を脱出し
家族特に母親と、恋人たちとの関係を修復しているのに、そこに気づいていない。
そこがまだ大人になりきっていないところかも知れないけれど。
自殺した母の残した物を見ながら
祖母のこと母のこと自分のことを考えるブリジットのことが今回は一番親身に思えた。
自分を見失っていた彼女が元のサッカー少女に戻っていく過程は読んでいて気持ちいい。

こんな篤い友情を続けられる彼女たち
4人がうらやましい


2003年08月12日(火) ウィリアム・モリスとアーツ・アンドクラフツ運動

リンダ・パリー著
高野瑤子訳
千毯館

ウイリアム・モリスが手がけた
壁紙、絨毯、カーテンなどのデザインが
148点。木版捺染という版画のような
方法で染めた壁紙がすばらしい。
バックの柳の葉、前面の花、鳥などが
微細な連続模様になっているのだが
手作業で木版を彫り、刷って、
一枚の壁紙に仕上げるのだという。
多色刷りだから版が何枚もあるだろうに
現代のコンピューター印刷と同じくらい
精密にできていて驚く。
アーツアンドクラフツとは、大量生産の
始まったイギリスで、技術ばかりが先行して芸術性のないものが増えたことを反省して
デザイナーや職人、業者が一体となって
はじめた芸術復興だ。
手作りのすばらしさ、本物のあじわいが
この本の中に現れている。

モリスの著書「ユートピアだより」にも
大量生産、大量消費に対する憂いの声が
老人の会話に出てきている。
資本主義社会の行き着くところ
モリスが理想としたユートピアは
職人が自分の楽しみのために仕事をできる
そういう社会だ。
経済的に何の心配もなければ
こういう仕事をしてみたいとは思うが
この資本主義優勢の現代社会では
夢のまた夢だろう


2003年08月04日(月) アツーク 少年がみたもの

ミーシャ・ダムヤン作
ヨゼフ・ウィルコン絵
宮内勝典訳

イヌイットの少年アツークが
友達だと思って一緒に暮らしていたハスキー犬のタルクを
オオカミに殺され、復讐を決意するが、
復讐のあとにはむなしさが残るだけだった。
タルクは戻ってこない。
ふと気づくと自分は誰よりも強い、
動物から恐れられる狩人になっていた。
アツークは、友達を失ったときに
やさしさも失ってしまっていたのだと思う。
小さな花を目にしたときに、
アツークは友達の大切さを知り、
やさしさを取り戻したのだと思う。
寒い冬の間にもわたしをずっと待っていてくれる友達がほしい
といった花の言葉、
アツークが花に向かってきみをみまもっていてあげるという
最後の場面がいい。


2003年08月03日(日) 白鳥の湖

チャイコフスキー原作
リスベート・ツヴェルガー再話と絵
池田香代子訳
ノルドズッド・ジャパン発行

名古屋三越百貨店に世界の絵本作家展を見て
帰りに買った絵本
2003年7月発行の新刊でCDつき。
ツヴェルガーの絵はタッチは軽いけれど
どこかに影があって、不気味なところもあるが、
それがかえってしぶい雰囲気をかもし出している。
大人のための絵本だ。
チャイコフスキーの「白鳥の湖」は
悲劇だけれどこの絵本ではハッピーエンドになっている。
それでもめでたしめでたしの明るい雰囲気ではない。
静かで落ち着いた絵と翻訳がそうさせている。
訳は、きれいでなつかしい日本語の香りがする。
CDの曲はオーケストラで聞く「白鳥の湖」のような山場がないので、
緊迫感がないかわりに癒される感じだ。
オーボエとハープのための編曲。
1ページの語りが終わるたびに、曲が挿入され、
挿絵のテーマにあった楽譜が描かれていて
きれいな仕上がりになっている。

まだ書店には出回っていないらしい。
いい買い物をした。


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