やんの読書日記
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許仲琳作 渡辺仙州編 偕成社
中国は殷の末期、紂王が政治を怠り、女色にふけ、 忠臣を退けて暴挙に出たため、諸国が反乱を起こして殷の国を滅ぼし 周王朝を建てるという歴史上の筋書き。 この物語は、紂王を陰で操る妲妃の怪しさ 家臣を惨殺してはばからない王の話が上巻 中巻は、紂王に反旗をひるがえした姫昌とその軍師に迎えられる姜子牙。 下巻は殷と周の対決、紂王と殷に見方する仙人たちの死、周の建国 この物語の中心は、二大勢力の仙人集団の対決と、 彼らの魂を封神台に祭る事 殷と周の対決で死んでいった仙人たちが神に報じられる、 そういう物語だが、おもしろくてたまらないのは対決のしかただ。 彼らのもつ武器は刀や槍ではなくて、宝貝といって、 妖術で相手をだましたり傷つけたり相手の武器を吸い取ったりする宝物だ。 宝貝を使って相手を倒し倒され、傷ついても不思議な薬で立ち直ったするが、それでもよみがえらなかった者たちが封神台へ上る。 登場人物の多さ、展開の速さは三国志や水滸伝、西遊記に通じるものがある。 殷の紂王、周の武王、文王は歴史にも出てくる実在の人物。 彼らを補佐する将軍がそれぞれ麒麟や獅子に乗っているのがおもしろい。 周の武王に請われてやってきた姜子牙は太公望だというし、 仙人の高い位にある南極仙翁は日本の福禄寿だという 少年の姿をしたなたは、西遊記で見た事があるし、 深読みするとはまりそうだ
O.Rメリング作 講談社
メリングのケルトファンタジー五作目 アイルランドを舞台にカナダ人とケルト人の 血を受け継ぐ少女が妖精の国へ旅に出て 自分さがしをしてくる物語 この巻もダーナとうい少女が幼いときに 突然出ていった母の行方を知るため 妖精の国とアイルランドの山岳地帯を行き来しながら、 ついに母が妖精の女王であった事を突き止め、 自分は母のために光をはこぶ 存在であった事を知るというもの。 ケルト人は現代でも妖精を信じ、 先祖が妖精であった事を示す名前を持っている ダーナの姓はフウェイラン、オオカミだという。 そのためか、彼女が現実世界で困難に会ったとき、 オオカミが現れて助けてくれる。 「影が王国を横切る、闇に光をかける光はいずこ」 というメッセージを彼女に託した妖精の上王の妃がなんと 前作「夏の王」で双子の妹として出てきたオナーだった。
闇というのは、アイルランドの自然破壊、森林伐採で、 光をはこぶというのは家族の絆を固めるという事なのかもしれない。 母を知り自分を知り、父との関係が元の戻ったときの ダーナの姿がいい。
2003年05月01日(木) |
十二国記 月の影影の海 |
小野不由美 講談社X文庫ホワイトハート
スケールの大きい異界ファンタジーだ 十二国の王は麒麟によって決められる その麒麟は王に忠誠を尽くすのだけれど 王が暗愚だと国は滅んで麒麟も死ぬ 麒麟が死ねば王も死す 十二ある国はお互いを蹂躙してはいけない そうなれば天命にそむいたことになり その国は滅ぶ。 どこかの国の誰かに聞かせたい言葉だ。 中国的な儒教精神が息づいている物語だけれど、主人公の陽子は、現代の女子高生 異界の子どもに生まれるはずだったのに 触という変動によって倭国(日本)に流されて、現代の日本人の子どもとして生まれ育ってしまった。 十二国のなかの慶国の王として麒麟が選んだのか陽子だったために物語が始まる。いきなり異界につれてこられて妖魔におそわれ、逃げながら自分の真実の姿を知る陽子。 慶国の王はいつわりの王であるため、国が滅びかけている。 麒麟のケイキを捕らえて、真の王である陽子をもとらえようとする隣国の王。そこには天命にそむいて滅び行く自分の道連れを陽子に仕立てた、浅はかでおろかな人の姿がある。 陽子自身も、もとの世界に帰りたい一心で、自分が王である事から逃れようとして浅はかな行動をとってしまう。 天命と徳に彩られて、栄えるはずの国が滅び行く。それはいったいなぜか。 この先の続編が楽しみだ。
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