やんの読書日記
目次|昨日|明日
ローズマリ・サトクリフ作 ほるぷ出版
ケルトの原典。アイルランド神話の中心クーフリンの物語。 クーフリンといえばアイルランドの戦争「牛捕り」が有名で、 サトクリフのオリジナルにもところどころ出てくる。 太陽の神、槍のルガの息子クーフリンは力と知恵の英雄。 クランの猛犬という名前の通り、猛犬を素手で殺してしまうほど。 牛捕りで、クーフリンをわなにかけた女王メーブの書き方が、 闇の女王ボーディッカと王のしるしのリアサンにそっくりで驚いた。 完全に配偶者である王をないがしろにしているからだ。 同じアイルランドでも、メーブのいるコノハトは女系社会。 クーフリンのアルスターは男系社会。というのがよくわかる。 彼の武器は女戦死アイフェから譲り受けた魔法の槍ゲイ・ボルグ。 危険な槍で殺してしまったのは、親友と実の息子の二人だけだった というのが運命的で悲しい。この部分が、アーサー王によく似ていて、 何か関連がありそうな気がする。 自分の名前にかけて、犬を食べないという禁忌を守り通したクーフリンが 最期のときになって、犬の肉を魔女にすすめられるままに食べてしまう。 渡し場で血のついたものを洗う老婆。それがケルトの英雄の死を現す。 これを見たらどんな英雄でも運命は変える事ができない。 ケルトのどんな魔法も英雄の死を覆すことができない。 悲しいのに立派ですがすがしい、 それがケルトの戦士なのだろう。
2003年04月14日(月) |
シェイクスピアを盗め! |
ゲアリー・グラックウッド 白水社
芝居の台本を盗んで、別の芝居にかける。と言う事があったらしい。 著作権がない時代なので、盗まれたら損、 盗めばおおもうけと言う事になる。少年ウィッジは孤児だったけれど、 速記術を学ばされてその能力のために身を売買されて、 シェイクスピアのハムレットを速記させられる羽目に・・ 速記をした手帳がなくなり、どたばたのなかで ウィッジは少年役者の見習いになる。 台本を盗もうとしながらも、どうもそれができない彼。 知らないうちに宮内庁一座の人々と心を通わせていくところが 読んでいてなんだかうれしい。 それは孤児だった彼が、友達家族、信頼といった人としての愛情に 目覚めていくからだと思う。 特に同じ年頃のサンダーやジュリアンとの駈け引きがさわやかだ。 サンダーに「友達だろ?」と初めて言われてとまどっていた彼も その意味に気づいていく。 女である事を隠して役者になりたがったジュリアンが 役者を追われたときに思った同情心。 そう言うものがウィッジの成長を物語っているようだ。 続編「シェイクスピアを代筆せよ!」を先に読んでしまった。 この後にサンダーがペストで死んでしまうのがわかっているだけに、 ウィッジの出会いが 印象的に思えてしまった。
|