とりあえず歩くために
2004年09月27日(月) 世界があまりにも過ちで満ちている気がして あたしはどうにか何もかも避けようとして 暗い太陽を愛した気がしたし 明るい月を愛した気がしたし 雲を動かしているのはあたしだと思い込んだ 星を輝かせているのはあたしだと思い込んだ それはある種の真実だった 本当に 結局いま自分の真下にある道をあたしはあたしの足で歩いている 真上を見上げれば空があるし そんな常識のままに生きることに疑いの余地はない きれいなのだ 進んでいるのだ 逃避の願望はどこまでも広がってゆく それもまた動かしがたい あたしはあたしとして生きることに不安があるし 死にゆくすべてのものが幸福だとは限らない 精一杯や頑張りや努力を幸福だと勘違いしてはいけない 幸福を定義するべきではないのかもしれない 他人の心情は誰のものでもなく他人のものなのだから すべてが間違っているわけではない だから すべてを嫌うわけにはいかない すべてを投げ出してそのまま死ぬわけにもいかない 逆ももちろんあるけれど 生きているわけだ ここに生きているわけだ 何の印も何の証拠も残したくない でも生きてゆくわけだ その人が幸福ならいいじゃないか その人が不幸ならそれもいいじゃないか その人が嫌いならいいじゃないか その人が好きならいいじゃないか その人が憎いなら その人が愛しているなら 海とくらげと青い日々 2004年09月19日(日) 海へ遊びにゆこう。 と、君。 ゆっくりと。 のんびりと。 白い波の、音を聴く。 砂浜に座って、二人、 夕闇にのまれようと、 必死。 手を繋ぐ。 太陽が、沈んでゆくよ。 生まれ変わったら、何になりたい。 と、私。 くらげに、なりたい。 と、君。 くらげに、なって、 海の中を、 ふわふわと、ゆらゆらと、 揺れて、動いて、揺れて。 食われてもいいのさ。 早くに死んだっていいのさ。 と、君。 だったら、私は私に、生まれ変わって、君を食おう。 口には、出さなかったけれど、私。 本当は、死ぬ前に、 もっともっと、聞きたいことがあるし、 言わなければいけないことが、あるし、 生まれ変わりなんて、 本当は、信じていないし。 帰ろう。 帰ろう。 と、私たち。 黒い波は、 月の光を、反射した。 きょうという日 2004年09月17日(金) 朝 起きたら 雨が降っていた 思うよりも 考えるよりも はやく 時間は とてもはやく すぎていくものだ 雨が降っていた から タクシーに乗ることにした 久しぶりに 乗ることにした 本当に久しぶりだった ので メーターの上がりっぷりに 挙動不審 運転手は 最近はこんなもんですよ と 平気な顔 そりゃそうだ 雨が降って からだが寒くなってきた し おんせんに 行くことにした おんせん というには すごくすごく不釣合いな おっきな おんせん からだをしっかり洗って でも手早く ぷかりと からだを ゆぶねに浮かばせる ひとに 体をみられている と思ってしまう でかいでかい 換気扇の音を聞く ぶおー だれも聞いちゃいない すわれちまえばいいのさ すわれちまえば のぼせるまで 10秒かぞえ 私はすたすたと でいりぐちに 向かった 干上がった 2004年09月07日(火) 溺れきったら 助けてください。 まだ、大丈夫ですから。 それだけが あなたの、できることですから。 助けなど、呼ばずに、 あなたが 助けてください。 あなたしか できないことなのですから。 水から、あがった ずぶ濡れの服を あなたが、乾かしてください。 水から、あがった 冷たすぎる、あたしを あなたが、温めてください。 くつくつ、と。 くつくつ、と。 くつくつ、と。 笑ったり 抱きしめたり 囁いたり あなただけが してください。 私は、それに こたえるようになるべく 生きてきた、つもりなのです。 恋慕 2004年09月01日(水) 人は、息を呑んで、 その、誘惑を待つ 頑なに、 その効力を、信ぜずに その効力を、知らずに 人は、固唾を飲んで、 その、誘惑を待つ ひたすらに、 ひたすらに、 ひたすらに 囚われるために、 そこに、いる 抗うことは、できない それでも、 頑なに、 拒否しようと、 いやだいやだ と、腕を振るう 泣きじゃくる その裏は、 待ち構えているのだ、 その、誘惑を、 |