+--- Cinema Memo ---+


■ 美しき殿方たちの様式美の世界「ラスト・サムライ」 2003年12月27日(土)
19世紀末、南北戦争の英雄オールグレンは酒に溺れる日々を送っていた。そんな彼が近代化を目指す日本政府に軍隊の教官として招かれる。初めて侍と戦いを交えた日、負傷したオールグレンは捕えられ、勝元の村へ運ばれた。勝元は天皇に忠義を捧げながら、武士の根絶を目論む官軍に反旗を翻していた。異国の村で侍の生活を目の当たりにしたオールグレンはやがて、その静かで強い精神に心を動かされていく。
監督-----エドワード・ズウィック 出演----トム・クルーズ 渡辺謙 小雪 真田広之
音楽☆☆☆.5 ストーリー☆☆☆.5 映像・演出☆☆☆☆ 俳優☆☆☆.5 総合評 ☆☆☆.5
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日本の文化や習慣がほぼきちんと設定再現されているため、設定上のツッコミどころもさほど気にならない(でも廃刀派からの刺客が忍者とか武士なのはなぜだ…)。映画としてきちんと成立していれば、許せる程度のものが多い。製作側の熱意というか、きちんとやろうという気持ちが画面の端々に現れていたような気がする。そういう気持ちって、演じる側やスタッフにも通じると思うし、そういう映画はえてして特別な雰囲気を持つことが多い。

話自体、非常にわかりやすくなっていて、映像も自然も美しいし、ストイックな精神性を持つ武士道がよく伝わってくる。ロマンスもほのかに香るくらいの上品さで、とても良かったと思う。
子役だとかも上手く見えるし、日本の俳優さんたちも、日本の映画やドラマで見るより数倍良く感じられる。これがハリウッドの底力…というか、品格・風格を感じさせるところがさすがという感じ。渡辺謙さんが助演男優にノミネートされるというのは素晴らしいことだし、受賞もされたら凄いと思う(ただ氏のハリウッドのキャリアやオスカーの傾向、他作品の顔ぶれを考えるとノミネートはあっても受賞はちょっと難しいと思う)。

現代人でそして女(母親予備軍)でもある私には、国や思想のために命を投げ打つ姿勢には殿方ほど酔うことはできないけれど、作中の人々には充分感情移入はできたし、きちんとした映画としても楽しめた。

ちなみに某映画誌にもあったように、私もD.D.ルイスの「ラスト・オブ・モヒカン」を思い出してしまいました。滅びゆく、美しい少数部族たち…。
あと最後に腐女子系のネタ?で申し訳ないんだけど、当時の武士道&仏道には必須の男色にはさすがに触れられなかったっすよね(汗)、いやあの、真田さんの役がね…勝元にとってのなんなのかと…トムを執拗にいたぶるもんだから…ああ書き捨て御免なすって!



■ マニアックな設定の代償「マトリクス・レヴォリューションズ」 2003年12月25日(木)
センティネルズがザイオンに向かって突き進む中、ネオとトリニティーは人類がいまだかつて挑んだことのない領域まで入ることを決意。ホバークラフト艦隊の乗員、ベインに憑依したエージェント・スミスとの対決は? 預言者オラクルの導きの言葉とは? 戦いは今夜終わる。ネオの運命と、マシンと人類、二つの文明の未来はどうなるのか…。
監督-----アンディ&ラリー・ウォシャウスキー 出演----キアヌ・リーヴズ キャリー=アン・モス ヒューゴ・ウィービング
音楽☆☆☆.5 ストーリー☆☆☆☆ 映像・演出☆☆☆☆ 俳優☆☆☆☆ 総合評 ☆☆☆☆
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※ネタバレしています。未鑑賞の方はお気をつけて。

様々なメタファー…、というかあらゆるシーン、台詞、装飾にまで意味がありそうな三部作の完結編。キリスト教的の多かった前半に比べ、本作はアジア的な思想が入ってきている。
・アーキテクト(マシン)サイド:キリスト教、白人配役(リローデッドの双子、有閑夫人パーセフォニーの白い肌やドレス等に象徴される白)。
・オラクル(ザイオン)サイド:アジア思想、多民族配役(だから当初アンダーソン=ネオの間をゆらぐ配役には各国の血を引くキアヌがぴったりくるのかも)。

…というように、見る人によっていろいろ面白い見方ができる隠し絵的な面白さが魅力でもある(もちろんこれは私の勝手な想像で、それが製作側の意図と合っていようが、なかろうが楽しめるという意味です)。個人的に、いい映画の条件は観た人それぞれに様々な感想や考えを抱けることだと思っています。

とはいうものの…ストーリーは把握できるんだけど、とにかく毎回、字幕+ヒアリングでは限界のある台詞の意味を考えながら画面についていくのが大変で(とくにオラクル周辺…英語ってダブル・ミーニングばかりだし)深い意味はやはり本などで補足するしかないのだろうと半分あきらめてますが(笑)
だから、殿方には血沸き肉踊ったであろう壮大なメカ戦闘シーンが、私には休憩時間となったわけです。あの場面だけは往年のハリウッドアクションの王道展開を踏んでいたからね。レボリューションズで覚醒したネオがもはや「記号」となってしまった今、他に人間的感情を呼び起こす方々が必要なわけですね。少年兵とベテラン将との邂逅、夫の帰りを待ちながら闘い続ける妻、もうお泣きなさいと言わんばかりのカタルシスてんこ盛りです。これがマニアックな設定における代償か。しかも長い。もうちょっと短くてもよかったと思うんだけど、やっぱり監督はここに力入れてたんでしょうねー。

とはいえ、後半ネオとベイン=スミスの死闘(こちらの方が雨のシーンより緊迫感があった。慣れって怖い)やマシン・シティーへの潜入、トリニティーの死(このへんもメロウギリギリだけど)からラストにはやはり大きな流れとパワーがあり、引き込まれた(とくにネオの失明がツボ直撃!)。実は私、ネオとスミス相打ちに加えてザイオン全滅という非常に暗いラストを予想していたのですが、やはりそれだと救いようがなかったでしょうか(汗)

ラストのアーキテクトとオラクルの会話、一見同じ展開が永遠に繰り返されるようにも思える…となると”レボリューションズ”の意味は? 私はザイオンとマシンシティの戦争が終結した世界が始まるのだと解釈しました(幼女と天使=セラフが手を繋いで蘇る)。
これまでと変わらないように思える日常…何度も戦争を繰り返し、いつまた危機が訪れるかもしれないこの世界。うまく現実の世界を重ねた上手いラストだと思いました。

最後に、唯一笑えたのが狭間の列車ホームでネオが「え〜っと、ここに来れたんだから、自力でここから抜け出せるはず…」とかブツブツひとりで考えてるとこ。ちらっと「アンダーソン君」時代のさえなさが顔を出した、お気にのシーンでした。


■ 野望女と浮気男「恋は邪魔者」 2003年12月22日(月)
「心を奪われるような恋なんて、女性の人生には邪魔者。女性だって恋よりキャリアとサクセス!」――新進女流作家バーバラの書いた本『恋は邪魔者』が世界中の女性たちの間で大ブレイク。バーバラから名指しで非難を受け、モテなくなった超プレイボーイのジャーナリスト、キャッチャーはバーバラの主張が間違っていることを証明するため、彼女を絶対落としてみせる!と恋の罠を仕掛けることに…。インテリア、音楽、ファッションなどアメリカが最も輝いていた60年代初期の夢見るアイテムに彩られたラブ・ストーリー。
監督-----ペイトン・リード 出演----レニー・ゼルウィガー ユアン・マグレガー
音楽☆☆☆.5 ストーリー☆☆☆ 映像・演出☆☆☆ 俳優☆☆.5 総合評 ☆☆☆
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※ネタバレ気味です。未鑑賞の方はお気をつけて。

脚本は悪くないし、ちょっと極端だけど当時のセンスをとてもキュートに描いているロマンティック・ラブコメ。最後にはちょっとしたどんでん返しもあり…なのになぜか、見終わった後にイマイチ感が…?
ブリジット・ジョーンズの時は親近感いっぱいに好演したレニーだけれど、今回は野心に溢れ、全身を高級品で飾り立てた高慢女。それがプレイボーイの罠にかかり、まんまと鎧を脱ぎ捨てて男の望む素直な女に…??? なんだかちっとも共感が持てないのだ。あまりに最初の高慢女の印象が悪くて、最後のちょっとした種証しの後も疑問符が頭の周りをぐるぐる回る。ユアンも、素性を隠して真面目なインテリ青年を演じたり、コミカルな演技は楽しめるんだけど、やっぱり深みのない浮つき男のまま終わってしまった。

これ、かえってジュリア・ロバーツとブラッド・ピットとか、ヒュー・グラントとサンドラ・ブロックとかの配役だったら(既成作にあったように)もっとスタイリッシュな無反省ゴージャス・コメディとしてに楽しめたんじゃないかと思う。
レニーって身体はとてもキレイなのに、申し訳ないけど顔のお肉のつき方とかが垢抜けないんですね。サバサバしてるというよりはつねに「女、女」的かわいこぶりっ子演技で、革新的な意見を発表するやり手作家という設定にあまり合ってないような気がした(ま、本来のバーバラの目的にもけっこう仰け反るんですが…)。ユアンもどちらかというと、年上お姉さまタイプに可愛がられる仔犬のよーないじらしさが魅力だし(だからラスト、バーバラに自分から本気でアタックするシーンのナイーブな演技がやっぱり一番素敵だった)。

最初のタイトルやら、当時の音楽やファッション、インテリアなどは本当に素敵で、うきうきします。楽しみながらもあれこれ思いを巡らせられるような面白いテーマだっただけに、ちょっともったいないという気も。


■ 初の劇場鑑賞アジア映画「インファナル・アフェア」 2003年12月20日(土)
警察学校で優秀だったがために、警視からマフィアに潜入することを命令されたヤン。一方、マフィアのボスの指令を受け警察官となったラウ。相反する世界に潜入させられた18歳の二人は偽りの生活を10年続けていた。ある日、麻薬捜査の失敗から警察とマフィアそれぞれの内部に潜入者がいることが発覚。裏切り者を探し出すことを命じられた二人の運命が、ついに交錯する…。
監督-----アラン・マック 出演----アンディ・ラウ トニー・レオン ケリー・チャン
音楽☆☆.5 ストーリー☆☆☆.5 映像・演出☆☆☆☆ 俳優☆☆☆☆ 総合評 ☆☆☆☆
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私はアジアの映画は俳優さんにはほとんど詳しくありません。理由はいろいろあるけれど、顔・名前が覚えられないのと、欧米系の俳優・女優へのミーハーな嗜好が得られない、が大きな理由だと思います(すみません、偏ってて)。よって初めて劇場で見たアジア映画がコレでした。なんたってストーリーがもろに好み…!!! 噂を聞いたときはう〜んアジア系か〜大丈夫かな〜と自分の嗜好と違うので尻込みしそうになったのですが、本作を観たお友達Hさんの感想に突き動かされ、劇場に足を運んだのでした。

観始めてしばらく、顔を覚えるのに必死。十代編から大人編に切り替わってしばらく、また主演二人がどっちがどっちだかわからなくて途惑う。とりあえず勝手なイメージで「極楽とんぼ加藤」「海東健」と命名(ファンの方、本当にすみません)でもほのかにダークがかった画像がとても美しい。

追う者・追われる者のサスペンスを巧みに描く映画的手法と、本来の使命と現実の状況にアイデンティティを失っていく二人の心理がうまく絡み合い(ヤンと上司ウォンのやりとりが秀逸)、次第に引き込まれていく。このあたりのやるせなさは、またハリウッドものとは違った味わい。何度もひやりとする場面と意外な展開があり、ラストは中国語題「無間地獄」の意味がじわりと浮き上がる形となる。

主演の二人も良かったけれど、彼らの上にいるオヤジ二人もすごく良かった。とくにウォン役、かっこよすぎ、美味しすぎ! 惚れた…! ただすぐれたサスペンス場面に対して女性絡み、恋愛関係についての場面がなぜか急にメロドラマになってしまい(音楽も酷い)、作品トータルのバランスをちょっと悪くしてるように思った。もっとさらりと描いて、彼らの人間的な側面や悲しみを逆に引き立てることもできたんじゃないかな。

でもこういう終わり方って、今の日本やハリウッドではできないと思うので、見て本当に良かったと思いました。ハリウッドリメイク版では絶対に出せない味わいのある映画でした。

■ 近況と更新の予告 2003年12月15日(月)
またまたご無沙汰しております。
12月も半ば、そろそろ更新をしなければ、という感じです…。
予定では先月見たインファナル・アフェア、恋は邪魔者、今月に見たマトリクス・レヴォリューションズ、ラスト・サムライなど、月末までには更新する予定です。
壮大な戦闘シーンのある作品が続いたせいか、ちょっとその手のモノにはお腹いっぱいという感じの今日この頃…。

年末は年忘れルパン三世祭り(1stシーズンDVDとカリオストロの城)、年明けは「24」がレンタルできれば連続でチャレンジ予定のバカ夫婦です…。






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Written by S.A. 
映画好きへの100の質問



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