+--- Cinema Memo ---+


■ まさに出血大サービス「キル・ビル」 2003年11月05日(水)
ひとりの女が長い眠りから目覚める。彼女の名は、ザ・ブライド。自分の結婚式の最中に、かつて所属していた暗殺団の襲撃を受け、夫やお腹の子を殺されたのだ。奇跡的に回復した彼女に残されたのは、暗殺団とそのボス・ビルへの復讐のニ文字。ザ・ブライドは伝説の刀鍛冶・服部半蔵を訪ね名刀を譲り受ける。暗殺団のメンバーは5名。その名を記したリストを手に、女刺客の復讐の旅が始まった。キル・ビル…ビルを殺せ!

監督-----クエンティン・タランティーノ 出演----ウマ・サーマン ルーシー・リュー 千葉真一

音楽☆☆☆☆.5 ストーリー☆☆☆ 映像・演出☆☆☆☆.5 俳優☆☆☆☆ 総合評 ☆☆☆☆.5

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映画というのは厄介なモノで、いくら展開や理屈が正しくてもいまいちノれない作品もあれば、荒削りでワケわからんのにも関わらず、勢いに引き込まれてガンガン楽しめてしまう作品もある。この話はまさにソレで、あんた(監督ね)好きなもの全部入れちゃって、もう勝手にやっちゃってくださいよー…という気にさせられてしまう。

ツッコミどころ&胡散臭さの多さと、楽しみの量&アドレナリン分泌とが比例する。突然かかって突然ブツ切れする場違いスレスレの音楽。鶴屋南北せんせーも真っ青(※江戸時代、せんせーは歌舞伎の怪談物で舞台はおろかお客の着物が汚れるくらいの血糊を大量に使った※)の血飛沫、飛び交う手足生首内臓(食傷されたり、眉を顰めるヒトも多かろうと思いますが、これは水スペ探検隊シリーズと同じで「そのスジのルールを了解した者だけが楽しめる」分別あっての娯楽です)。

でもなぜか、地獄鍋のようなそれらがドンピシャ、魂のどこかにガツンとフィットする瞬間の快楽が確かにここにはある。才能のある人がやりたいことをやりたいようにブチかました時、そこには誰にも止めようのないものすごいエネルギーの奔流が生まれる。まっとうな展開や理屈よりも、人はそのエネルギーの強い輝きに魅せられるから映画館に足を運ぶのだと思う。

ウマ・サーマンは私の大好きな女優で、その彼女がこれまた私の大好きなダリル"レプリカント"ハンナと対決するだなんて、聞いただけでゾクゾクしてしまう。ルーシー・リューも栗山千明も、闘う女達が文句なしに美しい。クレジットにも、知ってる日本人の名前並ぶ並ぶ。スペシャルサンクスでは意外な名前も…北村一輝さんも出てた(^^)
こんなのDVD、ましてやTV吹き替え放映なんかで観てもちぃ〜〜とも面白くないですよ。巨大なスクリーンで思う存分楽しまないと値打ち半減! 私はもうサントラ、へヴィローテーションですっ。

…ちなみにブライド一人いれば、エージェント・スミスが100人いても楽勝かも…。


■ オイしい仕事の落としアナ「ガール6」 2003年11月04日(火)
女優志望のジュディはオーディションでタランティーノ監督にセクハラされ、怒って役を降りてしまった。エージェントにも見放されてしまった彼女が選んだバイトがテレフォンセックスのオペレイター! 才能があったのか、たちまち売れっ子になる彼女”ガール6”は通話の世界だけの架空の恋人役に熱中し始めて…

監督-----スパイク・リー 出演----テレサ・ランドル イサイア・ワシントン

音楽☆☆☆☆ ストーリー☆☆☆.5 映像・演出☆☆☆☆ 俳優☆☆☆.5 総合評 ☆☆☆.5

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音楽はプリンスだし、冒頭のっけからあのQTことタラちゃんが、イヤ〜ンなありがちセクハラ監督を(嬉々として)演じているほか、上の階に住む友人ジミー役をスパイク・リー監督本人、同僚ガール75役にナオミ・キャンベル、ベテランのボス役にマドンナ、憧れの大女優役にハル・ベリーと、豪華な顔ぶれがそろう、ちょっとほろ苦のセクシャルコメディ。

タフだし自分なりの価値観も自信もしっかり抱いているジュディ。なのに、なぜかチャンスをつかめない。ナイスバディでオシャレな美人なのに、男は別れたチンピラの夫がしつこくつきまとうばかり。友人といえば、野球オタクで引きこもりの隣人だけ…(見てる方だって疑問に思う)。

そんな彼女が高収入につられて目に留めたテレフォンセックスのオペレイター。この仕事風景(研修もある!)がかなり面白い。きれいなオフィスでカラッと割り切った女性たちのそれぞれが、ユーモアを交えつつお仕事をさばく反面、電話で妄想爆裂(;´Д`)ハァハァ してるお客たちとの落差が笑える(なんかねー、このお客どもがまた、いかにもなキャスティングなのよ)。架空セックスという幻想をビジネスに仕立て上げたカラクリの現実、裏側を覗けます。

指名が相次ぎ売れっ子になった”ガール6”。自分では楽しんで仕事をコントロールしているつもりのジュディだけれど、ハマりすぎてどんどんやばい方面へと向かってしまう。苦い出来事があっても、いわばドラッグでハイになってるような刺激的な非日常の世界から抜けられなくなっていく。
ジュディのまともな部分もきちんと描かれているだけに、よけいその落差が見ていてハラハラ。しかしある事件を経て最後に彼女の出した結論は、ニューヨークの恋人(しつこいようですが)より全然納得いくもの。

ジュディが演じるキャラに合わせた映像的お色気コスプレが、スタイリッシュなカラフルさで楽しい。元夫とのくだりは、おまけかな。それより隣人ジミーとのやりとりに味がある。
エッチで笑えて、ちょっと怖くて、そして最後にスッキリの作品。女ひとり、または女同士でワイワイ観るのがいいんじゃないでしょうか。


■ 本当にそれでいいのかっ!?「ニューヨークの恋人」 2003年11月03日(月)
恋愛より仕事。王子様よりエグゼクティブの椅子――そんなケイトの前に現れた、ハンサムだが時代錯誤なファッションの男・レオポルド。礼儀正しいロマンティスト、全身全霊で女性を愛し守る彼は、まさに白馬に乗った王子様。「おとぎ話じゃ生きていけないわ」が口癖の現実主義者ケイトが、傷つくのが怖くて心にまとった鎧の下で、 ほんとはずっと待っていた“おとぎ話のような恋”。それは、ある日突然やってきた!

監督-----ジェームズ・マンゴールド 出演----メグ・ライアン ヒュー・ジャックマン

音楽☆☆☆ ストーリー☆☆.5 映像・演出☆☆☆.5 俳優☆☆☆ 総合評 ☆☆☆

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あらすじの通りの「おとぎ話」でございます。
ヒュー・グラントにおけるダメ独身モテ男のごとく、意地っ張りだけど本当は弱さを隠しているキャリアガールが当たり役のメグ・ライアン。私はこういう王道的キャラは嫌いじゃない。定番キャラも彼女の魅力と上手くマッチして、「やっぱりこういう役はメグじゃないと」と言わしめる好感度があります。

洗練された業界的職場、オシャレな衣装、住まい、面白い隣人や家族。ニューヨークの美しい街角の描写。そういったものが女子心をとっても気持ちよく刺激してくれる。しつこいようですが、嫌いじゃないです。ほんとです。難しいことはなんにも考えずに、ほんわかした気分になりたいときにはとってもいいリラクゼーションです。

しかし…しか〜し!!!「おとぎ話」にも業界仁義(?)ってモノが。せっかく面白い設定とキャストなのに、なぜここまで凡庸になってしまったのか!?!? ちょっとキャストの魅力と人気に寄りかかりすぎじゃないだろうか。
この手の話に真面目な考証などは要らないと思ってはいますが、隣人スチュアートの入院にまつわるドタバタもちょっとやりすぎ…「この状態を維持するため」「この展開にするため」のトラブルが見え見えなんだもの。

会話はそれなりに面白いし、仕事に関する絡みや、ケイトとレオポルドが惹かれあっていく流れもロマンティックで見ごたえはある。でも、やはり乙女チックすぎるというか…例えば「ユー・ガット・メール」のような、笑いの中にほんのり漂う人生の皮肉、苦味みたいな奥深さがない…(私はメグの恋愛モノではユー・ガット・メールが一番スキだ)

そしてなによりあのラストは…!? 結局(以下ねたばれ反転)ケイトは身一つでレオポルドのいる過去の世界へ向かい、お姫様になってしまうという古典的というにはあまりにのけぞる結末。男尊女卑バリバリの時代だぞ〜。レオポルドが貴族でなく平民だったとしても行ったのか、ケイトよ? 現代には戻れないのに、男ひとりのために放り出したものの多さよ…。
それが、仕事と人生を積み上げてきたはずのニューヨーカーの出した結果なのか!? それが純愛の印だとでもいうのか!? 観客も納得してしまうのか!? ハアハア(興奮してどーする)
もっと気の利いた、いかにもケイト=メグらしい恋愛、決着のつけ方を期待していたのですが…。いかに舞台を美しく彩ったとしても、かなり肩透かしの結末でした。




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Written by S.A. 
映画好きへの100の質問



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