● ひよこの妄想覚書帳

| ←BACK | | INDEX | | NEXT→ |

2004年09月29日(水)  空は海を求め、海は空を求める

例えるならば、日が昇る前の夜の色。

果ての無い空のように、どこまでも何にも捕らわれずに思うがままに飛び続け、しかし同時に、宿り木を失った迷子のように、ただ飛び続けるしかない。
白き衣をまとう時は、夜の闇とモノクルにその色を隠してしまう。

例えるならば、深い海の色。

どこまでも見透かすようなその色は、時に穏やかな凪のように、時に嵐の如く牙を剥くように、母なる海の壮絶さに恐れを抱く。
どこまでも輝きを失わず、全てのものを惹きつける。


--------------------------------------------------

ふと思い浮かんだ瞳の形容。
新一はコーンフラワーブルーのサファイア、蒼、海、と形容され。
快斗は藍色、夜の色、空、と形容されますが。
特に快斗は夜明け前の色なのではないかと。
全てが沈み隠れ癒される夜から、それでも新しい朝へ進みだせる強さ。
そんな色かと。
夕焼けは青空又は紺色とオレンジのイメージの方が強いのでなんだかあわないな、と。
外の景色がうっすら見える程度の夜の色が好きです。

2004年09月20日(月)  補足一切無しの書きかけ

「あーもうムカツク!!」
「チェロ荒れてるねー」
「今日の仕事で派手にミスしたみたいよ」
「アレ?今日の仕事って…」
「怪盗キッドよ。」




「むー腹立つ!この次は私が直接とっ捕まえてやる!」
「それで、何かいい案があるの?大神官様?」
「う…」
「予告状は既に来ているぞ?たった今、警備部に依頼が来た。」
「兵団を統括する役職としてはここらでしっかりと見せておかないとねぇ。」
「むぅー…ヘタに対峙しても、変な技使われて逃げられてもなぁ…」
「チェロ、マジック…手品よ。」
「だって、法術(魔法)使う人が多いせいであんな法力も魔力も使わないのなん
て予測できないよ!」
「確に、術なら何かしら力の流れを感じるんだけどねぇ…」
「どうしよう…」
「チェロ。何でも一人で突っ走るなよ。」
「そうよ。餅は餅屋。必要なモノはその専門に、ネ?」
「チェロなら誰かに頼りっぱなしって事はないからヒントも楽だな。」
「変な友達はハーメルの次に多く持ってるしね。」
「変な友達…フルートこそ多いだろーが。」
「あはははっ。それもそうねー一番変なのは旦那だもんねー」
「む…」
「あーはいはい。そこのバカップル。ケンカしないの。」


「シンイチ。いい本はあったのか?」
「あ。館長…ありがとうございます。こんな貴重な本ばかりの書庫を見せて頂い
て…」
「気にする必要はない。どうせ今の王が趣味で集めて放置している本ばかりだ。
読み手がいる方が本も喜ぶだろう。」
「…王様は希少本のコレクションが趣味なのですか?」
だとしたらなんて贅沢なんだろう。税金を使ってこんな無駄な…
「いいや。収集より読む方だな。一度読んだら覚えてしまうために用無しになっ
てしまうんだよ。」
「は…?」
「まぁ、どっちにしろ無駄か。」
「ここも国立図書館だからね。この本達も申請があれば貸し出しているんだよ。
もっとも、希少本ばかりでヘタに一般書庫には置けないし、専門書ばかりだから
滅多に人は借りていかないがな。」
「あぁ、確に…」
「だから、滅多に入ってまで読もうとする人がいないんだ。王族関係者以外では
シンイチぐらいなモノかな?」
「そうなんですか…だからこんなに壁一面にびっしり並んでいるのに、脚立がホ
コリを被って使われた形跡がないままなんですね。」
「は?」
「え?だってそうでしょう?」
「あぁ、悪い。確かに脚立は使ってなかったな。使う必要があるモノがここの所
なかったし。」
「?」
「基本的に私に頼んでか自分で飛んで取りに行くモノ達ばかりだったからな。」

バサリ

と広がったのは、髪と同じ艶やかな漆黒の一対の翼。


「なっ…」

「この国の王族は魔族の血が強いからな。」
「まぞく…」


-------------------------------------------------
新幹線の中で書いていた40万ヒット記念小説の一部。
まだセリフ部分のみなのでどれが誰のセリフなのかは私にしか分かりません。
コレに手を加えて、更に書き進めていかなくちゃならないんですが…
どうにも、仕上がる前に40万ヒットと誕生日が来てしまいそうな予感。
あ、でも。実家のパソコン結構動きが良くなってるから(そりゃ新しいからな…)暇を見つけてポチポチ打っていきたいと思います。

小説の内容は、オリハベースでその他ジャンル混同。
今回だけのでわかりますが、怪盗キッドがかなり絡んできて、かつ新一さんもしっかり出るようです。
ジューダスも出したいけど、どうやって関わらせようかなぁ…
リアラさんは簡単に乱入してくれるんですけどね。
なんたって彼女は同人聖…ごふっ(吐血)

2004年09月18日(土)  しょうが焼きを焼きつつ思いついた部分ネタ

「だって、お前はマジシャンじゃない。」

「快斗もキッドもマジシャン。そして、オレがホームズの次に尊敬する人(←盗一)もマジシャン。初恋の人(←幼き日の快斗)もマジシャンだ。」

「マジシャンでもないお前がどうやってオレの恋人になれるって?」


「――――――!」


打ちひしがれる白馬にもう興味もないとばかりに、新一は恋人の白い魔術師の首に腕を回した。



***



その後、必死になってマジックの練習をする白馬や服部の姿が目撃されたとか、マジックで気に入られれば名探偵とお付き合いできるとかなんとか噂が流れ、各地でマジックブームが起こったとかなんとかあったらしいが。

「ねぇ、新一。俺がマジックできなくなったら新一はオレを嫌いになっちゃうの?」

「んなわけないだろ。それを言ったら、お前はオレが名探偵じゃなくなったら用済みか?」

「そんなことないよ。新一が探偵だろうと怪盗だろうと小学生だろうと、俺はきっと新一に惚れていたからね。」

「だろ?オレも一緒だよ。マジックは快斗の持ってる沢山の魅力の中のひとつだ。マジシャンでなくなったら、専業主夫として一生オレのそばに居やがれ。」

「クスクス。熱烈なコクハクだねぇ。」


別にマジシャンでも怪盗でも名探偵でなくてもラブラブな二人には関係なかった。


---------------------------

突発に浮かんだ部分。
ラストでしょこれって…
多分、新一が快斗ともキッドともラブラブなのを見られて言及された時に、「快斗もキッドもオレの恋人だ!!」と二股宣言みたいなのでもかましたのかな?
機会があれば全部書いてどっかに載せるかもですにゃ。

っつーか、しょうが焼き関係ないよね?

2004年09月16日(木)  思いついた出だしをメモしてみる

「博士っ携帯用の隠しカメラ作ってくれ!!」

バターンっ

と、扉を壊す勢いで入ってきた人は開口一番大声でそんなことを叫んだ。


「…工藤君…せめて、相手を確認してから言ってちょうだい。」

扉の近くで掃除をしていたこの家の住人の小さい方が溜め息をこぼす。

「…あれ?灰原?博士は?」

闖入者はきょろきょろと見回して、ようやく目的の人物がいないことに気付いた。
つまり、それだけさっきの用件の事だけで頭がいっぱいになっていたということだ。

「ココに駆け込めば大抵の願いが叶うと思ったら大間違いよ?」

冷ややかな、それでいて突き刺さるような視線を感じて新一はびくっと体をこわばらせた。
彼女を怒らせるととんでもないことになる。
それは彼女に大切にされている(らしい)自分や博士でも立証済みだ。
思い出すだけで恐ろしい。

「あ…あの…灰原サン…博士はどこに行ったのかなーって…」

思わず口調すら変わってしまうのも仕方ないだろう。

「博士は今日は学者仲間に会って来るって言ってたわ。早くても夜まで帰ってこないわよ。」

哀の小さな手がさっきまで掃除に使っていたホウキの柄を向きを変えてしっかりと握りなおす。
どうやらすでに臨戦態勢のようだ。

「そ…そうか。それならまた帰ってきた頃にでも…」

だらだらと流れる冷や汗、がくがくと震えそうになる身体を必死に堪え、ポーカーフェイスを張りつけて誤魔化そうと思うが恐ろしくて合わせられない視線はウロウロと彷徨ったままで。

「あら?あなたがあんなに必死になって欲しがる隠しカメラなんて興味があるわ。何のために必要なのかとかみっちりと聞きたいものだわ。」

にっこりと可愛らしくも恐ろしい微笑を浮かべる哀からは、どう頑張っても逃げられないようだ。



*****


事の発端は園子だった。
自信がないと言っていた試験の合間に取り出した1枚の紙。
カンニングでもするつもりか?と思ったが、その様子を見ていた蘭は呆れるだけで。
何かと思えば、今は中国の山奥にいるとか言う噂の野生児…もとい、園子の彼氏である格闘家の写真だった。
「私に力を分けて真さんっvv園子頑張っちゃうvvv」などと奇声を上げながら写真に頬擦りする様は異常としか言いようがない。
しかし、馬鹿にした様子が伝わってしまったのか怒り出した園子によれば、

「好きな人に会えば嬉しくなれてどんなことでもできるような気分になれるのよ!会えないなら写真だけでもって思うのが恋心ってもんじゃない!?」

そう熱く力説され、しまいには蘭にまで

「駄目よ園子。新一ってば本当に恋愛音痴でそんな恋心なんてちっとも理解できないんだから。」

と言われてしまう。

そのまま説教モードに入りかけたところで運良くチャイムが鳴り、次のテストが始まったので何とか恋愛講義からは逃げ出せた。




しかし、なんとなく気になってついついテスト時間中なのに思考はソッチに流れていく。
まぁ、手は相変わらず動いて答えを書き込んでいっているから別にテスト中だろうがどうだっていいが。




自分ならどうだろうか?
『好きな人』とやらに会えればそれだけで頑張れるだろうか?

確かに、大切な人…蘭とかが危険な目にあっていれば、多少無茶をかましてでも守りたいと思い、またそれを実行してきた。
そのつど、助かった後に叱られてきたが、危険を承知でも突っ込んで行けるだけの必死さというものは与えられている。

他にも絶体絶命の時に、無信教徒の自分は神に祈ったりはしないが、実はシャーロックホームズに祈ったことはある。
どうしようもなくなった時にその思考力に縋るように、新たな突破口を手に入れられるように祈った。
まぁ、信仰の大元なんてだいたいこんな思考から生まれたものだから、すごく原始的な信仰として、大切な人に縋るというのはアリなのだろう。

だから園子にとって、こんな時に頼りになって安心できる存在なのが恋人なのだと推測する。
写真とは言えその姿を見て安心できるのはソコから派生する想いによって支えられるからだろう。

そんな恋愛論(蘭とかに語ったらまた馬鹿にされるだろうから永遠未発表だ)を繰り広げながら残りのテスト時間を過ごしていたが、ふと、風に広がった教室のカーテンに思考が埋め尽くされる。
吊るされっぱなしのカーテンはもはや妥協してもクリーム色といいがたい色をしているが、記憶の渦の中で瞬くのは、



翻る白。




そう。
自分が辛い時に静かに、気づき難いように手を差し伸べてくれた人。
夜の生き物のハズなのに、実は姿を変えて昼間でもその存在を感じれた。
組織を壊滅させる時でも、何も言っていないのに必要な情報を渡してくれて関わってきて、それでいて何も見返りを望まなかった。
あの極限状態の中で何故か無条件で信頼し、誰よりも頼りにしていた―――



(――怪盗キッド…)



思い出すのは、この姿を取り戻した報告と感謝のために訪れた中継地点で見せられた本当に嬉しそうな笑み――




---------------------------------------------

携帯事情と工藤の日と実は同じシリーズ。(もういいよ…)
恋人になる前ぐらいの時間ですにゃー
多分オチは見えてるかと。

2004年09月10日(金)  工藤の日〜間に合って〜

「ワイと工藤は親友やろ!?」

「勝手にそんな座におさまるな。オレにとってテメーは友人未満だ!」

友人未満。…以下ではなく未満。つまり、友人ではなく、知人程度だということだ。
実際心の中では”黒いの”とか”害虫”などと思ってるあたり、ヒト扱いするだけでも十分譲歩しているよな。うん。

「ねぇ、新一」

くいくいと後ろから袖を引かれ、振り向くと楽しそうな快斗の顔。


「俺は新一にとって、何?」




ポポポ

自分でも解るほどに顔が一気に熱くなる。


「か、かいとはぁ〜…」

「うん」

「かいとはな…」

「うん」


あーきっと今、リンゴみたいに顔を真っ赤にしているんだろうな。
こんな顔見せたくないけど、この答えはちゃんと快斗に言ってやりたい。

ついついもじもじと指遊びをしてしまったり、きょろきょろと視線を彷徨わせてしまうけど、やっぱり恥ずかしくて簡単には口にできない。

チクショー『日本警察の救世主』とまで呼ばれ、事件や推理に関することだったらどんなに恥ずかしい事も言いにくい事もすらすら言えるのにー
何だってこんな言いたい事が言えないのか…

ちゃんと待ってくれてる快斗に申し訳なくて、せめて少しでもこの気持ちを伝えたい。


「えっと…大切な人?」

「何で疑問形なのかな?新一君」


「そうよ。何を照れているの?この前散々『快斗は親友以上で恋人以上のとんでもないトコにいる大切なヤツなんだ』ってノロケまくってくれたじゃない」


快斗の影からふらりと現れ、とんでもない事をバラしだす小さな影。


「はっ灰原!!?////」

「嬉しいよ。新一v」

カァ―――――――っと全身が一気に真っ赤に染まる。
心臓は破裂しそうなほどバクバクいいだして、息すらもうまくつげない。
逃げる事もままならないうちに快斗にしっかりと抱きしめられてしまい、尚更身動きが取れなくなる。

恥ずかしい。非常に恥ずかしい。
予定外なところから本音がバラされてしまった。
しかも、その相手に捕まってしまって逃げられない。
だけど、身長差のおかげで顔は快斗の胸に押さえつけるように隠せるのでこのまま落ち着くまで目線も合わせないでいいように隠れてしまおう。

剥がされないようにしっかりとしがみつけば、隠れたい気持ちを察してくれたのか快斗が無理強いをするでもなく、そのまま頭を撫でてくれるので気分は何とか落ち着いていく。
やっぱり大好きな快斗の腕の中は一番気持ちよくて安心できる。






自分の口からはまだ言えないけど、特別に大切な人と一緒に入れる時間はとっても大切。






















「あらあら大変。服部君が倒れているわ(棒読み)」

「あ。本当だね」


のんびりとした灰原と快斗の声が聞こえて、ようやく黒いのがいたことを思い出す。
そう言えばそんなのもいたなぁ。


「黒羽君。うちに運んでくれるかしら?あなた達も蘭さん達もこの後出かけるのでしょう?私が看病しておくわ(やっぱり棒読み)」

「そう?蘭ちゃん達、いい?」

「え?あ、ええなら頼みたいわ。平治こんなんじゃ邪魔やし。工藤君にも迷惑かけそうやからな」

あぁ、そうだな。オレは今日は快斗と過ごすからソレは邪魔だな。

「うん、私たちこれから買い物に行くし…哀ちゃんごめんね?服部君をよろしくね」

「えぇ、まかせて(にやり)」

にっこりと微笑む灰原は可愛い。
例えその裏に「丈夫そうなモルモットが手に入ったわ」とか思ってることが解ってしまっても、その嬉しそうなキラキラした笑顔はやはり可愛い。
こんなに灰原が喜ぶんだから害虫も最期の最後で役に立って本望だろう。
うむ。一日一善。今日もイイコトをした気分だ。


「それじゃちょっと運んじゃうね」


ひょいっと黒くて無駄にでかいゴミを軽々と肩に担ぐ快斗。
白い鳥をやっているだけあって鍛え方がやはり違う。
自分だって何度も抱きしめられたり抱えられたりしているが、あの腕が片手とは言えあんなモノを抱えているのは何だかちょっと気に食わない。

「…」

とことこ

とりあえず快斗の後をついて行く。
さっさとあのゴミを投げ捨ててもらって、取り返さなくては。



「…新一可愛いわ…」

「アヒルの親子みたいや…」


後ろで何か声が聞こえたような気もするが前を歩く快斗の背中が気になって、脳がその声を理解する事はなかった。














「さて、黒いのも処分できたし、新一、今日はどうする?」

「…あの害虫邪魔…せっかく快斗が来る日だったのに」

ソファでぴったり密着するように並んで座り、快斗の肩に額を擦り付ける。
自分でも自覚している最近の拗ねモードだ。

「うん。でもすぐに片付いたからいつまでも気にしてちゃ駄目だよ」

くすくす笑いながら快斗が頭を撫でてくれる。
やっぱり気持ちいい。
ちょっとトゲトゲしていた気分が一気に霧散するみたいだ。
やっぱり快斗の手は好き。
あの黒いののみたいな乱暴な手じゃない。(←コナンの時によくやられた)

「うーうー」

ぐりぐりと更に擦りつけて腕もしっかり回して、今度は甘えモード。
そうだよな。せっかく快斗がここにいるのにいつまでも気にして台無しにする必要はないよな。うん。

「今日はお昼までこのままベタベタしていようか」

そう言って腰に腕を回し、ヒョイと自分を膝の上に乗せてしまう。
少し驚いたが、密着率が上がったのが嬉しい。

「じゃあ、べたべたしようか。」

嬉しくてそう返せば、快斗も嬉しそうに笑ってくれる。
そして宣言通りベタベタしようと、ちゅっちゅっと顔中にキスをくれて、自分も快斗にキスをいっぱい返した。




こうやって待ちに待った土曜日は過ぎていく。


(了)

-------------------------------------

…駄目?
コレは名探偵が怪盗さんにメロメロらぶらぶなシリーズ。
いや、しっかりちゃんと怪盗さんも名探偵を愛してるんですけどね。
天然系シリーズがヘタレ怪盗なので、こっちはオトコマエ怪盗。
そして実は以前書いた「名探偵の携帯事情」と同設定上の話です。
つまり、まだまだ機会があれば続くんですよ。このシリーズ。

2004年09月09日(木)  工藤の日なんだってね

-------------

 大切な時間

-------------


土曜日朝10時。

最近、この時間が大切。




ずっとずっと捕らえたかった白い鳥が、陽の光の中黒い鳥になってだけど、やってくる時間。

窓からではなく、チャイムを押して玄関から入ってくる鳥のために、ちゃんとこの日この時間は間に合うように起きて迎える準備をする。
隣の小さな主治医には「あなたもそんなことができたのね」なんてバカにされたが気にしないことにする。
だって、9時半にはすでに着替えも準備も終えてそわそわしてる自分がバカみたいだってわかってるから。


ピンポーン

「あれ?」

コーヒーと本を片手にソファに落ち着いたとたんに鳴ったチャイム。

時刻はまだ9時半。

「灰原かな?それとも…」

ドキドキと急に緊張して高鳴りだす心臓。
もしかしたら早く来てしまったのかもしれない。
期待を膨らませ逸る気持ちを抑えられず、慌てて玄関に向かってしまう。
ガチャン、と鍵を開け、そこにいたのは


「く――どおぉ〜〜〜♪」



関西の黒いのがいた。




バタンッ ガチャッ



「オレは何も見なかった。」


なかった事にしてみた。

しかしそんなに世の中甘くない。


『ごるぁ!くどぉ!!何で閉めんねん!!ここ開けぇや!!』

どんどんどんどん
ピポピポピポピポ

扉とチャイムの連打。
非常に近所迷惑な黒いナマモノである。
しかもまるでどこぞの借金取立人のようだ。
やはり奴はソッチの意味でも黒いのだろうか。

『ちょっ…平次やめぇや!近所迷惑やで!』
『新一ー?開けてくれないとどうしようもないみたいよー』

騒音に紛れて聞き取り難いが、2人分の女性の声。

「蘭に…遠山さんか?」

まだ鳴り響く2つの連打音。
服部単品なら隣に電話すればいいのだが、彼女たちがいるのなら仕方がない。


もう一度鍵を開ける。


ただし、ドアチェーンをしっかりかけて。



「くど…おぉ!?何やこれ!?何でちゃんと開けてくれへんのや?」

「黙れ!歩く騒音公害!!てめぇに用はない!」

扉の隙間からギロっと睨んでみるが、こいつのスポンジのような頭には意味が無いらしい。
余計に黒い顔をニヤニヤさせて気味が悪い。

「おはよう新一。珍しいわね、休日に朝から起きてるなんて。」

あぁ、珍しくて悪かったな。
それだけ大切な日で楽しみなんだよ。

「なんや〜?そないにオレに会うのが楽しみで待っててくれたんかいな?」

「連絡もなしに来るようなヤツを待ってなんかいねぇよ。」

ドアの隙間からゲシゲシ蹴ってみるが、やはりスポンジなのか、少し痛そうにしつつも「照れんでええがな」と嬉しそうに黒い顔をさらに黒くさせている。(←頬を赤らめているらしい。)

「オレはてめぇに用はねぇっつってんだろ!さっさと帰れ!」

扉を閉めさせまいと押えてくる黒い手と足をゲシゲシと蹴りつつ外させようとするが効果がない。
やはり黒い生き物は打たれ強いのか?
台所とかによくいるアレも殺虫剤ぐらいじゃ簡単に死なないしな。
そんな事をついつい考え込んでしまっているうちに黒の後ろが騒ぎ出す。

(あぁ、そう言えばいたんだ…)

「ちょっと平次!あんた工藤君に連絡せえへんかったん!?」

「ええやん!工藤んち、ぎょーさん部屋余っとるさかい別に困らんやろ!」

「何ゆーとんねん!事前に連絡して聞くんが常識やろ!?」

「ビックリさせた方が工藤も喜ぶやろが!」

…何勝手なこと言ってやがんだ…(怒)

「…蘭。あの二人は泊まりで来てるのか?」

「う…うん…数葉ちゃんはうちに泊まるんだけど、服部君、『工藤ん家泊まる!』って言ってたから、てっきりもう連絡してるのかと思ってたんだけど…」

「初耳だな。オレの用事も考えねぇで来やがって…」

あぁ、気分がどんどん低下していく。
今、すごい表情してるんだろうなぁー
蘭が怯えるように少し引いてやがる。
ククク。この黒いナマモノをどうしてやろうか。




ピンポーン



高く響くチャイムの音。


少し音程が違うこの音は、門の方のチャイムだ。
と言うことは。


「新一?出直してきた方がいい?」


門をくぐって来るのは、待っていた黒い鳥。

「快斗!」

服部の腹にキツイ一発を入れ、一度扉を閉める。
ああ、このチェーンがもどかしい。


ガチャン!ドゴン!!


開けた時何かがぶつかったが気にしない。

慌てて駆け出せば、ちょうど玄関と門の中ほどで向かい合えた。

「いらっしゃい、快斗。騒がしいけど気にしないでくれ。」

自分よりも頭1つ分背の高い快斗を見上げれば、そこには大好きな優しい笑み。
あぁ、ドキドキしてきてさっきまでの最下部を這っていた様な気分が一気に上がっていく。



「な!何や工藤!!誰やねんそいつ!!」

ピキッ

あーもう。生命力だけは強大な害虫はコレだから嫌なんだ。

「服部。テメーは一度、日本語の使い方と作法を学び直してこい。客も来たし、客じゃねぇテメーはジャマだからさっさとどっか逝け。」

おっと。思わず漢字の変換がヤバイモノになったが、まぁ本音なので別にいいか。
黒い害虫をギロリと睨むと一瞬怯んだようだが、まだ懲りずに食い下がってくる。

「何でそないなこと言われなあかんねん!ワイと工藤の仲やないか!」

「どんな仲だ。オレに迷惑しかかけないような仲はいらねぇ。」


(未完)

-----------------------------------------------
9月10日用を9月10日夜8時に書き出すバカ。
下書きはあるんですが、どうにかなるんでしょうか…?


My追加