もしも あなたを愛さなければ
こんなに痛むこともなかった
もしも あなたを愛さなければ
幸福の涙も知らずに生きてた
もしも あなたと出逢わなければ
季節はこんなに 綺麗じゃなかった
人生はこんなに 鮮烈じゃなかった
わたしはわたしじゃなかった
あなたの電話が来ない夜 時計を見るのが こわくて 膝の毛布 引っ張り上げる なんどもおなじ行 進まない本
寒さがきょうに限って この部屋いっぱいに 満ちてるように 感じて泣けるのは さみしさが肩ににじむせい
こんなときには ぽってりと まるいカップにミルクをわかして ひとさじのはちみつ 太陽のように そそぎましょう
あなたはいつも誰にも やさしいひとだから 放っておけないひとだから あなたがとても好きだけど
こんな夜には そのやさしさが あなたをわたしから 遠ざけるようで 今頃なにをしているんだろう その瞳が声が 恋しい
こんなときにはあったかい ミルクでカップ満たして 両手のひらでつつみましょう ひとさじの太陽と一緒に
こんなときにはほのあまい ミルクをひとくち こくりと飲んで こころのなかも てのひらも 太陽があたためてくれる
いちばんだいじなことは そう あなたがとてもすきよ
夜明け前にあの星へ着く 最終のバスに乗る
最後までためらった 荷物の上に座り込んで
胸の何処かで知ってた あの星まで何時間 それが僕をためらわせた だけど
このバスに乗ると決めた だから僕は行くよ 「後悔するかもよ」 誰かがささやいても
バスに乗り遅れるのが こわいからじゃなくて なにかに せきたてられたからじゃなくて
僕が素直にチケットを 差し出せるときが来た きっとそういうこと 星の遠さを知っていても
バスは黙々と走り続ける ためらいがちな旅人を乗せて 遠い星へ 遠い世界へ 遠い時間へ
遠い心へ
鏡の前で化粧を拭う 笑顔も一緒にぐいと拭う 一日自分についてきた嘘を 剥がすように拭う 痛みでそれと気づく 頬を伝う 涙。
目覚ましを手荒く止めて 髪を洗い顔を洗う 鏡を覗き込んで くまを隠ししみを消し 薄紅い嘘 唇にのせて
今日もまた 同じ一日。
この横顔を この微笑を この声を この指先を この唇を この肌を この心を この魂を
このすべてを捧げ物とし その腕のなかで壊れたい
狂おしい 衝動。
ふたりですこしだけ お酒を飲んだ ふたりはすこしだけ うきうきしてた 3年ぶりに会ったあなたは あの頃より 素敵になってた
あたしはあなたを ずっと恋してた あなたはあたしを 友だちと呼んでいた 好きという思いに違いはなくても
好きという意味の違いにあたしは泣いた 好きという意味の違いがあなたを苦しめた
時間があなたを忘れさせることを あたしは恐れ そして望んだ 愛するあなたにできることが それしかないと知っていたから
そして4度目の夏が来て あたしたちはやっと友だちになれた 酔ったあなたの 危なっかしいスキップ おなか抱えて笑った
夜道のスキップ ひとつの季節の終わりが ふたりをどこかへ 連れてゆく
髪の毛のひとすじまで 気にしていた朝も ハイヒール鳴らす音も 今はもう失くして
部屋の中うろうろと 救いを探し 挙句 疲れきって倒れこんでも ベッドは貴方の匂い
こころにそっと隠した 病が愛を壊した 神様はこんなにも意地悪 眠らせてもくれない
誰かに手をとられて 初めて気づく 銀の指輪のつめたさ 左手から外せない
救いを求めて 彷徨うこころから なお愛が消えて 長い旅が始まる
もしも枕の下から 貴方の手紙を 抜き去れる日が来たら 眠れるのだろうか
こころに隠した病を そっと抱きしめながら 貴方の匂いも忘れて 時間さえすべて 忘れて
書きかけのメール 減らないシャンプー 外した眼鏡
無数の写真 伸ばした髪 左手の指輪
薄い口紅 消せない留守電 煙草の匂い
キスの記憶 笑顔の残像 最後の雨
こころの破片
いつもはかれなくて いつも火傷する いつも凍りつく いつも墜落する
ふたりの距離感 気持ちだけじゃ補えない 好きだけじゃ歩けない
君を愛し続けるために 君の全てを見つめるために 渇望する
ふたりのDistance
過剰な慕情がすべてを壊す コントロール不能 回路を切って 電源を落として ねえお願いだから
(ソンナコトオモッテモイナイクセニ)
過剰な同情があたしを壊す コントロール不能 壊れるまで 叫びつづける愛 ねえおかしいでしょ
過剰な慕情がふたりを 世界から引き離す
コントロール無用
アパートの階段に さくらの花びらが ぱらりほろりと おちていた。
あたりを見回しても 工場が黒くたたずむだけ 風にのってやってきた 春のなごり雪
踏むにしのびず 拾うにしのびず そっとよけて 階段をおりた
もういちど風に乗って 還れる場所まで飛んでゆけ 春のかけら 明日は どこにいるのかな
遠くから聞こえていたんだ ずっと気づいてたんだ 少しずつだけど君と僕の 伸ばす枝がきしみはじめて
無理にたわめれば自分が 素直に生きれば君が 傷つかずにはいられない うまく距離がとれないんだ
僕らは同じ木に宿り 一緒に太陽をめざし 伸びてゆくんだと信じてた あの頃がせつない
かみなりが近づいてくる ゆっくり秒読みしてる 大きな音を立てて 一瞬でふたりは終わる
雷鳴がふたりにとって 敵だとしても僕には 君を守る力はないし 君にもないと知ってたけど
離れることができなくて やがて終わりを待つことに 疲れきって ふと見ると 僕らはかみなりを待ってた
鋭いひかりが僕らの 接点を根元から切り裂く 痛みにことばを失ったまま 僕らはもう戻れない
かみなりが去った後の 澄み切った空を見てると 君がどこかで太陽を 見てる気がして 泣けてくる
いつかどこかでもう一度 僕らはであえるかな ばらばらに歩くからこそ そばにいられるふたり
思いはいつも隣にある 時間は戻らなくても
僕はもうかみなりを待たない 君も そうだろう?
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