秀樹と二人で卓球を習いに行っていた。小学4年か、5年かな。中学生にはなっていなかったと思う。
家からバス停まで子供の足で歩いて10分。そこからバスに乗り、市の中心部にある体育館。今思えば、あれは何だったのか。学校の卓球部ではもちろんない。卓球教室のようなもの?と言っても何度通っても細かな指導があるわけではなかった。放置に近い。あれはないよなと今でも思う。お金払っていたんだろうし。いたのかな。
ある日、理由は忘れたが、体育館を出る時間が遅くなった。理由は忘れたが。覚えているのは、周りの人間、大人も含め、僕と秀樹に何のケアもなかったこと。外が暗くなっていくことに、周りも、自分たちも何も対処しなかった。
経緯は忘れたが、とにかく帰宅のバスに乗る。バス停を降りると真っ暗だ。バス停から家までの10分間。民家はあるにはあるが、灯りはわずか。田んぼの黒ばかりが目に映る。真っ暗。
僕と秀樹は話をするわけでなく、手をつなぐわけでもなく、ただ二人で家路を急ぐ。
どちらかが口を開けばあっと言う間に泣き出す。それはもうあまりにも明白で、そのことはお互い手に取るようにわかる。ひたすら歩く。
もう少しで家だ。家がある集落の近く。その集落の暗闇から誰か歩いてくる人影が見える。人影はどんどん大きくなり、懐かしさもどんどん募る。母が僕と秀樹を心配してバス停に向かうところだ。
僕と秀樹はあっと言う間に泣き出す。泣きわめいて、走り出す。二人同時に走り出す。二人同時に手を広げた母の腰に突進する。
母の腰に二人でしがみついて泣きじゃくった。
母は笑っていたような記憶がある。
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