どうしてあんなに泣いてばかりいたんだろう。
誰かに少しキビシイことを言われればもう涙ぐんでる。 ひとの前で話しはじめると声はどんどん掠れていく。
暗闇がこわくて泣く。 仲間はずれにされたと思って泣く。 ころんで泣く。 昼寝から目覚めて不快で泣く。
あんなに簡単に泣いていて、いじめられてしまうのも、当然。 本当に簡単だもの。 本当にあっというまに泣いてしまうのだから。
泣き玉、は、喉から突然せりあがってくる。 止めることなんて、できやしない。
泣くのは、いやだった。恥ずかしかった。
幼稚園、小学校、中学校。泣き癖はまるで治らなかったな。 ずっとこのままなんだと思ってたな。
でも不思議だ、泣いて当然の場面で、なんでか、 泣かなかった記憶が、いくつか、ある。
捨ててあるガラスを踏んでおおきな破片がはだしの足裏に 突き刺さったとき。
泣かずに血まみれの破片を引き抜いた。
車に跳ねられ自転車ごと一回転、頭を割って視界が血に 染まったとき。
病院に運ばれながら、だいじょうぶです、と答えていた。
生まれたときからずっと一緒だった相棒がいなくなったとき。
「泣き虫のしげっくん」はどこに消えたのかな。
消えてなんかなーいね。
今でも、喉をぐっとつまらせてしゃくりあげているのが よく見えるよ。
もう、あまり、恥ずかしくなんか、ないな。
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