お別れ
実家の愛犬が、この世を去りました。 私が14歳のときに生まれた子だったので、享年8歳と数ヶ月。 食い意地とわがままの多い子でした。
今年の春からずっと体調が悪く、やがて目が見えなくなって腎臓が弱って血尿が出て赤血球が少なくなって……病名はハッキリしないのですが、治らない血の病気だったようです。 父と母の意志で、安楽死という最期を迎えました。
私はそれを仕事場で、母の送ってきたメールで知りました。 夏までもたないだろうと確信にも似たものを感じ、GWに無理やり帰って後悔のないように可愛がって。連絡があるたびに覚悟も決めていたけれど。
あっという間に涙がこみ上げて。 それでも仕事場、同期の子達や上司の前で泣くのはイヤでお手洗いに駆け込んで。 洗面台にしがみついて声を殺して泣いて。 泣いて、泣いて、ひたすら泣いて。
昼休みに母に電話をし、最期の様子を聞きました。 苦しまずに逝けたこと、前の晩に病気になってから食べることを禁止されていた大好物をいっぱい食べていたことや、お墓も立派に作られたこと、昔一緒に遊んでいたお兄ちゃんわんこが眠っている隣に埋められたこと、いっぱいいっぱい話を聞きました。
……でも、病気と闘いながら最後まで生きるのがよかったのか、それともこの安楽死がよかったのかと、ずっと答えの出ない堂々巡りをしています。
私は、あの子は本当は最後まで生きたかったんじゃないか、と思います。 自分の体調が悪くなってから、ずっと病院に連れて行くたびに不安げに鳴いたらしいあの子。 最後の日まで、散歩を要求し続けたあの子。 あの子はきっと、また家に帰って、散歩に行って、ご飯を食べて、いつものように家の中ですやすや眠るつもりだったんじゃないか、と。 そう、思わずにはいられないのです。
私の中での最後のあの子は、ブラッシングを気持ちよさそうに受けている姿。 幾ばくか痩せた身体を、陽だまりの中で梳かしたのが最後の思い出。 優しくて温かな、陽だまり色の記憶。
天国で、お兄ちゃんわんこと会えたかな。 美味しいものいっぱい食べて、いっぱい遊んでるかな。
ねぇ、イール。生まれてきてくれてありがとう。 お前を抱いて家に連れて帰ったこと、庭を駆け回ったこと、膝に残るお前の温もり、忘れないよ。
私と出会ってくれてありがとう。 8年間、お疲れさま。そして……おやすみなさい。
2006年06月05日(月)
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