2004年09月14日(火) |
大西巨人『神聖喜劇 第二巻』(光文社文庫)読了 |
大西巨人『神聖喜劇 第二巻』(光文社文庫)をやっと読んだ。 第三部 運命の章 第一 神神の罠 第二 十一月の夜の媾曳 第三 「匹夫モ志ヲ奪フ可カラズ」 第四部 伝承の章 第一 暗影 第二 道 第三 縮図 第四 対馬風流滑稽譚 解説 阿部和重
第一巻の第一部、第二部が重厚さで売ったに対して、この巻は意外にも軽い。 作中の大前田軍曹の言葉ではないが、軍隊と女の関係はないとは言わせないぞ、とばかりにそちら方面の話題満載である。
読み終えるまで一ヶ月以上かかり遅々として進まずというあせりも多少はあったが、主人公の東堂以外の人物の不可思議な人間的魅力のおかげもあり、挫折せずに読むことができた。
第一巻の冒頭の文章を初めて読んだときにはとうていうまくつきあえそうもないと中断・挫折を予感していたのに、著者の文章・表現力の充実と多彩さに脱帽した。
『本の雑誌』今月号(2004年10月号)に津野海太郎が「サブカルチャー創世記ー本と演劇の20年」という連載の中で今回は「新日本文学会にはいる」の見出しで4頁の回想録を書いている。その4頁目(P73上段)に大西巨人と『神聖喜劇』について次のような言及がある。 「『神聖喜劇』連載はやっと三十回をこえたあたり。したがって、もう三年近くつづいている勘定になるが、一回の枚数が極端にすくなく、しかもあいだに休載がはさまるので、なかなか先にすすまない。」
この「なかなか先にすすまない。」というのは大西巨人の執筆姿勢につながるだけでなく、読み手の姿勢や意欲、感性にも強く関わる重要な特色である。
阿部和重の解説は簡にして要を得た紹介文でうまい。
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