雑 記
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2006年10月17日(火) SSです。見たくない方はスルー(笑)

無題…といいますかタイトル思いつかない〜


「あの…あの……あの」
頬をほんのりと染めて、ハリアがもごもごと言った。
やはり照れるのだなと俺は思った。
俺にとっては単なるスキンシップに過ぎないことを、そのひとつひとつに反応しては照れる。
初心で世間慣れしていないこのエルフは、19歳という年齢を忘れるほどに子供じみたところがある。
ちょっとした朝の挨拶をしただけなのだが、慌てさせるには充分だったらしい。


出先から帰って自室に戻る途中のことだ。
視界の先に所在なげにハリアが立っていた。
俺に気付いてこちらを見た時の仕草がひどく無防備であどけない。
今日の用事が全くつまらないものだったので些か気分の悪かった俺は、無意識のうちに気分転換を試みようとしたのかもしれない。

焦点の合ってないような瞳が寝起きのように見えた。
だいたいが朝は遅いらしい。
起き出して来るのは何時も陽がいい加減高くなってからだ。
「おはよう、ハリアさん」
そう言って、だらりと下げていた彼の手をとってその甲に恭しく口付けてみせた。
口説いている訳では勿論なく、悪戯心から出た行為だ。
果たしてハリアは言葉に詰まってしまった。
俺は次の単語が出てくるまで辛抱強く待った。

「これって」
「これって?」
俺は優しく問い返す。

「一般的な朝の挨拶なのです……?」
予想外の問いに面食らいながらそれでも俺は微笑みを忘れなかった。
ナンパ師の性なのかもしれない。

「貴方がそうさせたんですよ」
俺はちょっと微妙だな、と思いながら答えた。
まるで口説いているかのように聞こえる。

「…私、何かしたのでしょうか?」
ハリアは俺の言葉を額面通りにしか受け取らなかった。
いらぬ心配だったと俺は可笑しくなって首を振った。
「いえ、何も。自覚がないから貴方は可愛いのですねえ」
「え」
「さて、せっかくこの時間に会ったのですから昼食を一緒に如何ですか」
ハリアは納得のいかない表情で言葉を探しているらしかったが、俺は強引に話題を逸らした。
ハリアはエルフであるから、外見はそれなりに美形といえるだろう。
可愛いのは性格なのだが、本人が気付いていないものを教えてやる気はなかった。

「あ、はい」
「朝食を摂ってないそうですね。
昼食も夕食も少ししか食べないと言って料理人が嘆いてましたよ」
俺の言葉にハリアは申し訳なさそうに返した。
「あまり食べられなくて…作ってくれる人には悪いと思うのですけど。
一人で暮らしていた頃は御飯を作るのも食べるのも面倒だったから」
「では、今日は俺が見張っていましょう。
一人で食べられないなら食べさせてあげましょうか」
「えー」
軽口を叩きながら、俺はハリアを伴って歩き出す。
「食事の支度ができるまで俺の部屋で待っていて下さい。
また迷子になるといけませんからね」
「氷柳様意地悪…」

そんなやりとりを楽しみながら俺は不愉快な気分が消失していることに気が付いた。
…悪くない。
俺は呟いてハリアに笑いを投げた。


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