道標≪過去を見つめてあさっての方向へ≫


2005年08月21日(日) 去り行く夏



甥の寝相は半端ではなく、夜の間中、部屋のそこらを
ぐねぐねと這い回っている。
最近毎朝のように、廊下に伸びた足にけつまづく。
やわらかい。っていうか不気味だっつーの。

そんな甥も今日で山形を離れる。
姉の嫁ぎ先へ泊まりに行った後、そのまま東京に戻るらしい。
ちゃん、という発音ができず、私の名を「たん」付けで呼ぶ。

「こけもも(仮名)た」

何度も何度もそう呼んで、モネに愛想して、
にこにこと駆け寄ってくる。
行きの車で手を振る甥は、来た時より格段に大人びていて、
その成長ぶりにため息をついて見送った。

次に来るときまで、私のことを覚えていてくれるかしら。



金曜日に、会社の先輩が急死したという連絡が
支店に届いた。
彼とは私の新入社員時代に同じ支店で同じ課で働いた。
生意気な私はいつも張り合って、怒鳴られて、
叱られてばかりいた。
私と同様、彼も転勤のタイミングが重なり、
「オレもお前もこういうタイプなんだって。お互い苦労するよな」
とけらけらと笑っていたのを思い出す。

無遠慮で、時々短気で。

頭の中で声がする。

「かーねーだ(仮名)!」

と、私のミスを指摘する声だ。
この声がイヤで嫌いで。いつも叱られないかびくびくしていた。
なのに、なんでこんなに優しい声だけがどうして頭に残るのか。

呆れて微笑む彼の姿が脳裏にやきついて離れなくて、
給湯室で声を押し殺して泣いた。

好きじゃなかった。でも、嫌いにもなれなかった。

さよなら高橋さん。

また、いずれどこかで。

所要があって旧友に電話すると、
彼の飼い犬が死んだという知らせ。
八月の頭に息をひきとったらしい。
パソコンの中に当時の動画が残っていて、
私の指をペロペロと笑顔で(!)舐める彼女の姿が
愛おしくてかわいそうで、思わず目を伏せた。
臆病で優しい犬でした。
私と遊んでくれてありがとう。

お別れなんてなければいいのに。


金田こけもも |MAILHomePage