カウントシープ
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夢を見る人と見ない人がいる、という話を先生としているときに、思い出したことがあって、
ボクは子供の頃、怖い夢が怖くて眠れなかった。怖い夢はたいてい恐ろしいものに追いかけられる夢や、どこかから落ちる夢や、虫が這いずっているような夢で、夢から醒めると、また夢に戻るのが嫌で眠れず、眠らないと今度は夜の闇が怖くて、どちらにしてもじっと横になってはいられなかった時、父親がいるならば、迷わず父のところにいって安心を貰いにいった。
だが、父は夜も仕事で不在が多く、そういう時は母親のところにいくしかない。母親は子供と一緒に寝ることがきらいで、普段は別の部屋で1人眠っているのだが、父親が不在の時(その頃はボクも妹もまだ1人で眠るには幼かった)は子供と一緒に眠る。その母親に、怖い夢を見たと訴えると母親は凄く不機嫌になるのだ。
眠っているところを起こされるのだから、不機嫌にもなるだろうけれど、父親だって、起こせばひとこと「それは夢だから大丈夫だよ」と言うだけで、子供はみんな安心して布団に戻っていける。
怖い夢を見たと起こすと母親は、自分は不眠症で(睡眠薬まで飲むくらい)眠れなくて困っているのに、夢でも見れる分だけましだろう、と言うのだ。やっと眠れたところで子供の夢ごときで起こされて、すっかり不機嫌になってしまった母親の、ボクに向けられた背中をただじっと見つめて、そうして長い夜を何度も過ごした。
今はもう夢が怖くない。 夢には真実そのものが映し出されるし、知ってはならない真実を知るだけの心が、今のボクには広がっているから。
ロビン
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