日英双語育児日記
DiaryINDEXpastwill


2008年10月07日(火) 追悼 緒形拳

(緒形拳の突然の訃報を知って)


 十三、四年前の一時期、排他的に盲目的にどっぷりはまっていました。

 きっかけは、平日夕方の再放送で見た
二時間ドラマ「名無しの探偵シリーズ」のなかのひとつでした。
 
 うらぶれた事務所の探偵さんで、
とくにすごいストーリーでもなくて、
二時間サスペンス枠の佳作、というくらいなのだけれど。
表情から目が離せなくて、えー、このひと誰ーと思いました。

 もちろん、それ以前にも、大河ドラマ
(最初に見たのは「峠の群像」)や映画(「華の乱」など)
で、何度も目にしていて、
よーく顔は知っていたはずなのだけれど。

 緒形拳ファン多しといえども、あのどうみても
マイナーな「その他」作品としかいえないシリーズで
はまったひとはあまり多くないかも。

 そのあと『ぴあシネマクラブ 邦画編』をたよりに
過去の出演作をレンタルビデオで借りたり、中古ビデオを買ったりしながら
出演作つぶしていく、という感じで見ていました。
 特に好きだったのが「激突」。

 そのころの緒形拳は、ちょうど五十代後半から
六十歳前後というころで。映画でいうと「国会へ行こう」のあとくらい。
 
 三十代、四十代の鬼気迫る演技を
初めてみたときには、私の好きな緒形拳とは違うなあと
なんとなく思っていたのだけれど。
(なんといっても「名無しの探偵」から入っているので)

 六十代、七十代とだんだん、温厚な調和的な役が増えてきたわけで。
そうすると、ああ、「復讐するは我にあり」の頃の緒形拳は
もう見られないのだなあと思い、
ああ、同時代で見たかったなあと
あらためて思うようにもなりました。
 
 本当に、あのころの作品を同時代的に追っていたら
また違う緒形拳像を描いたことでしょう。

 DVDやビデオでさかのぼって堪能することはもちろんできるのだけれど、
でも、俳優本人の「今」と「これから」は、
そのときそのときにしか感じられないので。
 
 そういう意味で、私が出会った緒形拳の
「今」と「これから」は、
六十歳前後からのそれだったなあ、と思います。
 だからいいとか、悪いとかいうのでは決してなくて
そういうご縁だったのよねー、ということ。

-----

 舞台は1997年の「スカイライト」と、2004年の「子供騙し」を
最前列で見ました。
「ゴドーを待ちながら」や「信濃の一茶」が見たかった。

「白野」の公演が昨秋あったとき、なんとなく、既視感があるような
気がして行かなかったこととか。
映画「長い散歩」公開時に、舞台挨拶が近隣であったのに
行かなかったこととか。

 最近の不義理が、
 ああ、いまさらながら悔やまれます。

 だけど。
 こんなに、突然いなくなっちゃうと思ってなかったのですよ。

----

 このほかに特に好きだったのは
(選ぶのも難しいですが
今一番何を見たいかと考えてみたときにー)

「魚影の群れ」(1983)相米慎二監督
「翔ぶ男」(1998)NHKドラマ 池端俊策脚本


日英双語育児日記 |MAIL