2005年04月02日(土) |
読書感想文、「蛇にピアス」と読んで |
昨日の時点で野球の試合がキャンセルになったこと を知り、先週に続きまたまた2連休。そんな日は勉強 だけでなく少し余計なことをしてみたくなる。
とりあえずジムに行って身体を動かす。恐らくここ に来て初めてrawing(ボートを漕ぐ感じ)の運動を してみた。予想以上に疲れる運動だった。
家に帰ると読書。こっちに来て何度もお世話になって いる方から読み終わった文藝春秋をいただいていて 今までちらちら読んでいたのだが、ようやくまとまっ た時間が出来たので小説を読んでみた。2004年度芥川 賞受賞作品の「蛇にピアス」。
自分の部屋ではいただいた本がとりとめなく置いて あるので、必ずしも古い順から読むわけではない。 この小説の場合、先に数々の批判や賞賛を読んでから 自分で初めて読むことになり、いわばかなりの先入観 があったのは否めない。
まず自分は文学少年(おぢさん?)でないし、所謂 文系の才があるとは思えない。それを承知で感想を 書くと、まず難しい漢字がなく楽に読めた。文体は よく言えば簡潔、悪く言えば稚屈で、それが作者の 狙いなのかはわからない。内容が内容だけに自分、 もしくは友人にこれに似た経験があるのかなと思った。
ただ題材そのものにはそれほどびっくりしなかった。 こっちに来て舌にピアスをしてる女の子は腐るほど見 たし、刺青だっていわずもがなだ。気になる男の子と 同じことしたい気持ちもわかるし、それほど異常な 行動でもないと思う。また主人公が生きる世界も 実際に存在するだろう。ただこれに今の若者が共感 するのなら、余りにも暗すぎる。むしろこれが昔か ら続く純愛小説における設定たる所以と思いたい。 (太宰治しかり、谷崎潤一郎しかり、内容は常に陰湿 で結末は死と不幸。)
少しはいいこと書くと、ここでは主人公のピアスの穴 の大きさが読者に時の経過を知らせるものとなってい ると感じた。最初はのんびりと、そして話が進むにつ れ読者を引き込むように急展開する。以前読んだ夏目 漱石の「それから」の展開に似てるなと思った。
設定からはこれまた昔読んだ馳星周の「不夜城」を 思い出した。多くの読者が接することのない非現実 な世界に読者を引き込むことによって生理的な怖さ を覚えさせると同時に、怖いもの見たさを引き出し て離れることを許さない。この辺は巧みだと思う。
ただピアスの描写しかり、刺青の描写しかり、また アマが誰かに追われる描写しかり、ほとんどと言っ て読者の想像に任せて何も書いていない。短編小説 だからかこうしたのかもしれないが、これだけ読者 の想像に任せてしまうと、本来作者が意図するもの とかなりかけ離れた解釈になるのではと危惧した。 これも作者の意図するところなのかも知れないが。
最後に、これが芥川賞受賞作品にふさわしいかどう かわからない。まぁ少なくとも将来学校の教科書に 採用され、文脈を読み取るような題材にはならない ことは確かだろう。自分としても何か縁がない限り とりたて彼女の作品を進んで読もうとは思わない だろう。
以上、久しぶりに日本語で読んだ小説の読書感想文 でした。
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