マニキュアとヘミングウェイ - 2004年08月13日(金) 「もういい加減したら?」 はじまった。 「私はあんたのために言ってるの。 幸せになってほしいのよ。 まさか、本気で愛されてるなんて、 思ってるんじゃないでよね? 子ども? じゃあ、 あんたに子どもができたらどうすんのよ? 自分だけは違うってみんなそう言うわよ。 ねぇ、聞いてる? まったく。」 まったく。 暗い部屋に帰ってくると着替えもしないで ソファにどかっと寝転んだ。 化粧を落とさないで寝ると肌が荒れるな、 と思ったが起き上がるのが面倒だった。 アルコールの匂いが、蒸し暑い部屋に充満する。 手を伸ばして窓をやっとの思いで窓を開けた。 伸ばした手のマニキュアが剥がれていた。 ふと、さっきの彼女の手を思い出す 爪が短く切り揃えられ、関節が目立つ、 家事でボロボロになった手。 とっさに起き上がりバスルームに向う。 2時間かけて体中をピカピカに磨きあげた。 マニキュアが乾く間「海流の中の島々」を読む。 汗がひいて体が軽くなっていく。 氷を入れたグラスにジンとソーダ水を注ぎレモンを絞る。 一口飲むと、舌にピリッと痺れた。 椰子汁とライムの香りはしなかったけれど満足だった。 さぁ、ベッドルームにアロマを焚いたら、 朝までぐっすり眠ろう。 ...
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