Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
情報日照りですが、海洋小説にこじつけて更新
海外情報は、ちょっとここのところ日照り状態、ドルドラムのまっただ中で裏帆をうっております。
米国のオブライアン・フォーラムはきっちりチェックしてますが、最近のフォーラムの書き込みで面白かったのは、オブライアンではなくジョン・ル・カレのこの記事。
John le Carre: 'I was a secret even to myself' http://www.guardian.co.uk/books/2013/apr/12/john-le-carre-spy-anniversary
あのフォーラムのオブライアン・ファンにはル・カレ・ファンが多いので、話題としては盛り上がったのですが、海洋小説とはかなりはずれる話で、 ル・カレがどうして最初の小説「寒い国から帰ってきたスパイ」を書いたか?について、作家生活50周年となるル・カレ御本人が書かれた記事です。 さっくりまとめてしまえば、小説を書くのはストレス解消だった…と。 当時ル・カレは西ドイツの大使館勤務の外交官…じつは情報部の職員でもあるがそのことは外務省の他の同僚には秘密…というストレス状態の中にあって、それであの小説が生まれたのだとか。
…あまり海洋小説には関係ありませんね。 でもちょっとこのままお付き合いくださいね。最後に話はオブライアンに戻って来ますから。
ちょうど1年前のこの時期に、ル・カレのティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイこと「裏切りのサーカス」という映画が公開されて、これが原作付きとしてはとても良く出来た映画だったので、感嘆したのですが、地味すぎて日本で手に入る映画雑誌では主役2人(ゲイリー・オールドマンとコリン・ファース)のインタビューしか読めませんでした。 ところが最近、「裏切り…」でオールドマン演じる主人公の部下を演じたベネディクト・カンバーバッチが突然ブレイクして、なんとFLIX誌が増刊を出し、「裏切りのサーカス」についてのベネディクトのインタビューを掲載してくれました。 これが実にポイントを突いていて面白かったのですが、
え〜と、5行でまとめますから「裏切り…」にちょこっとだけ脱線していいですか? このインタビューでベネディクトは、この映画は「孤独と犠牲」の物語だと答えるのですが、確かにそれって仰る通りなんですよ。この映画の登場人物は全員、情報部の仕事のために何らかの犠牲を払っていて、同僚関係にありながら全員が孤立無援なんです。 その観点で最初にURLでご紹介した記事のル・カレ自身のストレスを考えると、すとんと腑に落ちるものがありました。 ベネディクトいわく「この作品は何より男性の孤独と非常に悲惨な職場を描き出した作品」なのですって。 情報部が悲惨な職場ねぇ、SISならそうかもしれませんね。CIA映画でそう言う俳優さんはいないかもしれないけれどもね。
このFLIX増刊ではもちろん、今大人気の「シャーロック」※についても触れられています。 たとえば、ベイカー街のフラットのマントルピースの上に乗っている頭蓋骨の名前は「ビリー」と言うんだとか(頭蓋骨ですから、考えてみれば名前があるのは当たり前なんですが)。 ※注)BBC製作の現代版シャーロック・ホームズのドラマで日本ではNHKBSで本放送、今年1月にはNHK地上波で再放送がありました。
それで私が「えぇぇっ!」と思ったのは。制作陣が語っている御存じホームズの相棒ワトソンの立ち位置のこと。 「艦長のようなシャーロックに対して、兵士では足らず、艦長が2人になるのもよくないので、艦長はただ1人だが彼に意見することのできる船医のような存在を製作陣はもとめた」 これが、ジョン・ワトソン役にマーティン・フリーマンを起用した決め手だったらしい。
はぁぁ?なにそれ?…と思いませんか? この「シャーロック」というドラマ、良く出来ていて、私はNHKBSでの本放送は吹替えで再放送は原語で合計2回みてしまいましたが、実に英国らしいウィットに溢れたドラマで楽しめました(セリフにはかなりの言葉遊びがあるのですが、日本語に訳しきれないので2回目は原語で聴いてみるのがおすすめです)。
でも、シャーロックとジョンをその様な観点で見たことがなかったので、大層おどろいたのでした。 いや確かに、ジョン・ワトソンは陸軍の軍医(surgeon)だけど。 頭蓋骨をコレクションしているのはシャーロックなので※、私はシャーロックにマチュリンを重ねてもその逆というのは考えたこともなかった。 うーん、そういう視点でもう一度見直してみたらこのドラマ面白いかも。 ※注)原作のマチュリンは食器戸棚の中に頭蓋骨を入れていて、大家の夫人からは「シャーロック」のミセス・ハドソン同様、頭蓋骨を何とかしてほしいと思われている。
それにしても、ワトソンの立ち位置ねぇ。 昔むかし、グラナダTV製作、ジェレミー・ブレットのホームズのシリーズ1を見ていた時に、ワトソン役はデイビット・バークというブラウンの髪に青い瞳が印象的な俳優さんだったのだけれども、事件が解決できず煮詰まるホームズを心配するワトソンを見て、ふと、アレクサンダー・ケントのボライソー・シリーズのボライソーの副長ヘリックをキャスティングするならデイビット・バークかもしれない…と思ったことを思い出してしまいましたよ。
あぁそうだ、グラナダ版のホームズは、阿片をやるのよね。 阿片をやるのはマチュリンだから、やっぱりホームズはマチュリンよね。
というわけで話はちゃんと海洋小説に戻りました。 今日は日曜ですから、私はこれから「八重の桜」を見ようと思います。 先日、蛤御門の変の時の鉄砲隊はナポレオン戦争時代よりひどい、と書きましたが、ドラマの上では5年がたって、洋式調練の結果、長州藩の鉄砲隊はかなり時代に追いついた動きをするようになってきました。 これから戊辰戦争です。この官軍を相手にしなければならない会津藩はかなり気の毒です。 史実が史実ですから、他に描きようがないのですが、これから1ヶ月ちょっとは大河ドラマも大変ですね。 私としては、榎本釜次郎の再登場を楽しみに待とうと思っています。
2013年05月12日(日)
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