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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
八重の桜

NHK大河ドラマ「八重の桜」は先週が「蛤御門の変」でした。

「日曜8時は大河ドラマ」が固定チャンネルだった家で育った私は、物心つく前から大河を見ており(子供の頃はなぜ何も悪くないのに、皆が「ごめん(御免)というのかサッパリわかりませんでした)、そこそこドラマがわかる年齢になってからでも幕末ものは5回くらい見ています。

でも最近の2作(「新撰組!」と「龍馬伝」)は浪士の幕末でしたから、どうしても個人にスポットがあたってしまい(一人で斬り込むカッコよすぎる高杉晋作@伊勢谷友介の長州征伐とか?)、藩の組織だった戦いを見たのは先週の蛤御門が、ずいぶんと久しぶりでした。

そして痛感したのは「うわ、これは駄目だわ。完全に時代遅れだわ」ということで。
いえ「蛤御門の変」の戦闘自体は、1990年放映の「翔ぶが如く」でも1977年の「花神」でも見ていたと思うのですが、今回初めて、「これはちょっと…」と思ってしまった。

その理由は、
私には1990年からこれまでの間に「シャープ」のテレビドラマを見る機会があり、19世紀初頭の英国陸軍の組織だった戦闘をビジュアルで目にしてしまっているからだと思うんですね。(それと最近の大河ドラマ2作が藩の組織だった戦闘を描かなかったからですが)

まだ子供で海洋小説すら知らなかった「花神」の時代はともかくとして、「翔ぶが如く」の時はもうホーンブロワー、ボライソー、ラミジと、ひょっとしたらダグラス・リーマンの海兵隊シリーズも読んでいたかもしれないのですが、活字で読むのと実際にビジュアルで見るのは雲泥の差!

そして、
あのずいぶんといろいろ問題のあるサウスエセックス連隊と比べても、1860年代の日本の藩兵って、はっきり言って時代に遅れすぎてるわ。
これで「攘夷!」がいかに無謀かって実感としてわかりましたですよ、今回。

「八重の桜」の面白いところは、一藩士の立場から幕末史を見ているところだと思います。
幕末史というと、新政府方も幕府方も個人英雄物語的なものが多くなる。
主要な志士は脱藩者でしたし、新撰組は幕府方のアウトローだった(このあたりは今回の「八重の桜」でも意図的に描かれていると思うんですが)。藩として組織だって動いていたのは薩摩くらいじゃないですか?

八重の兄の覚馬や佐久間象山のように、西洋の現状と日本の落差がわかっていても、藩という大組織に縛られて自由に動けないもどかしさがある…だから志士の多くは脱藩したわけだけれども。

藩と運命をともにしたからこそ歴史に埋もれた、しかし実は個々人としては国の将来を憂いながら精一杯生きた「敗者」もあるのだということ。
志士の英雄物語ではない幕末史を大切に見ていこうと思います。


2013年03月30日(土)