Sail ho!
Tohko HAYAMA
ご連絡は下記へ
郵便船
|
|
Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ピーター・ウィアー監督「ウェイバック」
昨日(9月8日)から、東京、豊橋で先行公開のピーター・ウィアー監督「ウェイバック」を見に行ってきました。 第二次大戦中の1941年、シベリアの捕虜収容所から脱走したポーランド人の「脱出記」(スラヴォミール・ラウィッツ著、ヴィレッジブックス発行)をもとした、シベリアからインドに至る6500kmの脱出行を描いた人間ドラマです。 ピーター・ウィアー作品としては、おそらく「マスター・アンド・コマンダー」以来8年ぶりの日本公開作品となる筈です。
ウェイバック(公式HP+トレイラー) http://wayback.jp/
現在は、東京の銀座シネパトス、豊橋はユナイテッドシネマの2館上映ですが、大阪は10月6日〜、金沢10月13日〜など順次公開になるようですので、近くに公開館の無い方も上記HPをチェックしつつお待ちください。
海洋小説の面白さの一つに、「大自然の中に孤立した船という密室の人間ドラマ」があると思うのですが、この「ウェイバック」は、(物語の舞台が屋根も壁もない、シベリアの大森林やゴビ砂漠、祁連山脈、タクラマカン砂漠であるにもかかわらず)、海洋小説原作だった「マスター・アンド・コマンダー」より濃厚に、「密室の人間ドラマ」が描かれていると思います。
サプライズ号が航海した世界の果ての海(far side of the world)と同じく、収容所から脱走した6人の仲間にとっては、あまりにも苛酷な大自然の中、頼りになるのは自分たちの力のみ。 そしてサプライズ号と異なり、人間の敵(フランス軍)がいない分、より濃厚に「生きるための戦い」を描くことになっているのではないでしょうか。
そして主人公がポーランド人であることもあり、ポーランドを中心とした20世紀東欧史を知る映画にもなります。 ナチス・ドイツのポーランド侵攻、戦後の鉄のカーテン、ハンガリー動乱、プラハの春は私にも歴史だし白黒映像でなるほど…と思いますが、1980年代のポーランドの自由化(連帯のワレサ議長)とベルリンの壁の崩壊は、私もカラーのテレビニュースで見て覚えてますけど…これも白黒にするの?…それはもう25年前だから「歴史」の一部ってこと? まぁこれは、自分が生きている時代が「歴史」扱いされてしまってちょっとショックだった中年女性の独り言ってことで。
主人公のポーランド人兵士ヤヌシュにジム・スタージェス、アメリカ人の鉄道技師スミスにエド・ハリス、ロシア人犯罪者で収容所送りになったヴォルカにコリン・ファレル。ラトビア人牧師ヴォスにグスタフ・スカルスガルド、脱走グループのもう一人のポーランド人、ケーキ職人のトマシュにアレクサンドル・ポトチュアン、ユーゴ人の会計士のゾランにドラゴス・ブクル。途中で一行にかかわるポーランド人少女にシアーシャ・ローナン。 スカルスガルドと聞いてあら?と思われる方もあると思いますが、グスタフは、ステラン・スカルスガルド(ポール・ベタニーとジェニファー・コネリーの息子の名付け親で「パイレーツオブカリビアン」のウィル父役などでお馴染み)の次男です…のでスウェーデン人ですね。ポトチュアンとブクルはルーマニア人です。
あと収容所仲間の印象的な役で、マーク・ストロングが出てきます…えぇと私、今年になって洋画は3本しか見に行っていないんだけれども(「第九軍団のワシ」「裏切りのサーカス」そして「ウェイバック」)、全部マーク・ストロングに会ってしまうんですけど、これっていったいどういうコトなんでしょうか?ちなみに映画パンフのストロングの紹介文によれば来年公開の英国映画「Blood」はポール・ベタニーとの共演だそうですよ、これ日本公開になったら見に行ってしまいますよね…うーん、一時期ポールやヨアンの映画を見るとやたらベネディクト・カンバーバッチに会ってしまったものでしたが、今は私的にはマーク・ストロングがこの状況に。こういうめぐりあわせって…あるんですかねぇ。
映画の中では主人公たちに立ちはだかるものとしてシベリア、モンゴル、中国西域、ヒマラヤの自然が描かれますが、撮影:ラッセル・ボイド、編集:リー・スミスの「マスター・アンド・コマンダー」と同じコンビが、ウィアー監督の下に撮った大自然は一瞬声を失います。 荘厳な景色を目にした時に鳥肌が立つ経験ってありませんか?…長野県側から北アルプスを登って稜線に立って岐阜県側の光景が目の前に開けた瞬間とか、 私はこの映画を見ていて、3回、大自然の映像で鳥肌が立ちました。…バイカル湖と、祁連山脈と、その峠から見下ろしたチベット高原と彼方のヒマラヤ山脈。 この映画ナショナル・ジオグラフィック・エンタテイメントの配給なので、そのあたりは本当にぬかりなく、見応えたっぷり。
主人公達の人間関係のドラマについては、敢えてここでは書きません。それは…あの過酷な大自然の中でひとつひとつ明らかになっていくものだから、映画館でご自分の目でご覧になってください。 ピーター・ウィアー監督ですから、ドラマも見応えたっぷりなことは言うまでもありませんし、この俳優陣ですから期待は裏切りません。
名匠ピーター・ウィアーが「ウェイバック」への思いを明かす http://eiga.com/news/20120907/14/
2012年09月09日(日)
|
|