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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
キャラミー君のその後

映画「マスター&コマンダー」でキャラミー候補生を演じたMax Benitz君を覚えていらっしゃるでしょうか?
Acting-lieutenantに昇進するのだけれど、最後の戦闘で倒れる、ブルネットの最年長の候補生です。
撮影当時18才だった彼ももう27才、今はジャーナリストになっています。
昨年末に彼の初めてのルポルタージュ本「Six Months without Sunday」が出版されました。

Six Months without Sunday(アマゾン・ジャパン)
http://www.amazon.co.jp/Six-Months-without-Sundays-Afghanistan/dp/1843410524

上記アドレスのSundayの最後にAfghanistanとついていますが、これはアフガニスタンの英国軍の同行取材ルポルタージュです。
彼はアフガニスタン駐留英国近衛連隊スコッツガーズに6ヶ月同行取材をして、この本にまとめました。

アマゾンUKの著者紹介(下記)によると、彼はあの映画の後、エジンバラ大学に進学して現代史を専攻、さらに南アジア史を詳しく学ぶためにインドのカルカッタ大学に留学しました。
インドからは、ヒンドゥスタン〜パキスタン北部、コーカサス経由で帰国しましたが、ジャーナリストとしての仕事はアフガニスタンのカブールから始まりました。
と、アマゾンUKの著者紹介にあります。ここには「著者近影」も。
すっかり精悍な青年に成長しています。

著者紹介(英語:Amazon.UK)
http://www.amazon.co.uk/Max-Benitz/e/B004P9UO94/ref=ntt_athr_dp_pel_1

Max Benitzで検索すると、本人が書いた記事を読むことができます。
下記は、アフガン駐留英国軍についての記事。
スコッツガーズに同行取材できたのは、彼のお父さんがスコッツガーズに所属していたからなのだとか。

Afghanistan ― a heavy legacy for Generation Xbox
http://www.newstatesman.com/asia/2011/05/british-afghanistan-flank

上記の記事や、そのほかにも彼の書いた記事を検索して読んでいくとつくづく思うのですが、英国の伝統というのは、200年前から基本は変わらないのだな、と。

兵士という職業が家の伝統として受け継がれていくこと。
父の縁でこの連隊に同行取材したBenitz家だけではなく、スコッツガーズの若い兵士の多くが身内に兵士の伝統をもっていることや、それゆえに連隊が一つの家族意識で結ばれていること。
ダグラス・リーマンにブラックウッド家のそれぞれの代の当主を主人公にビクトリア時代から第二次大戦までを描いた海兵隊シリーズがありますが、あそこに描かれている「海兵隊はひとつの一家」に近いものが現代の陸軍近衛連隊スコッツガーズにもあることが、よくわかります。

若者がフットワーク軽く、途上国へ経験を積みに行く(南インド史なら現地とカルカッタ大学に留学し、陸路を帰国しようとする)ところも、昔からのイギリスの伝統で、
このフットワークの軽さがある若者は、日本では一部に限られてしまう。最近は若い人たちが内向きになって海外に出なくなってきていますが(猿岩石の時代はいろいろあったのにね)英国では相変わらずなのが、なんだか嬉しくて。
これは大英帝国の良き遺産(悪い遺産の方が多いけど)のひとつだと思います。


2012年03月10日(土)