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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
英女王のダブリン訪問

海の話題からははずれますが、オーブリー&マチュリン・シリーズの読者としては、
今週の話題は「エリザベス女王の歴史的なアイルランド訪問」でしょう。

日本の新聞でも国際面のニュースでは大きくとりあげられていましたが、イギリス国家元首のアイルランド訪問は1921年の独立以来初めてのこと、
ダブリンでの女王のスピーチはゲール語で始まり、次のように続きます。
We can never forget those who have died or been injured, and their families. To all those who have suffered as a consequence of our troubled past, I extend my sincere thoughts and deep sympathy.
亡くなられた方、怪我をされた方、そしてそのご家族のことを決して忘れることなく、過去の紛争の歴史に苦難の時をすごされた全ての方に対して、
「I extend my sincere thoughts and deep sympathy.」は、「心からお悔やみを申し上げます」と訳されることが多いのですが、イギリスとアイルランドの800年にわたる血塗られた歴史と、女王自身もIRAのテロで従兄弟のマウントバッテン卿を失っていることを考えると、第三者的な一歩引いた立場から「お悔やみ」を申し上げる、という日本語訳では意味を伝えきれないような気がします。

この話題について、米パトリック・オブライアン・フォーラム(掲示板)では、
「Perhaps another step in ending this nightmare」
というコメントがなされていました。
「ことによると、この悪夢を終わらせる一歩前進かもしれない」
maybe(たぶん)ではなく、perhaps(ことによると)なのね、と思いながら掲示板のやりとりを見ていました。
もっとも現地在住の友人(日本人)いわく「イギリス人もアイルランド人も素直なコメントはしないから」ということで、それは…たしかにそうかもしれない。

イギリスとアイルランドの問題はとても複雑で、第三者である私たち日本人にはコメントできない問題ではあるけれども、
マチュリンのことや、それから私はジャック・ヒギンズの小説のファンでもあるので、この25年ほどの間、いろいろな小説を読んできて、この二国の不幸な歴史を全くの他人事とも考えられないでいます。こんなことを他国人が言うのはおこがましいかもしれませんけどね。
それでもやはり、二国間の800年間の悪夢が終わるように、この前進の歴史が逆戻りすることがないように祈りたいと思うところです。


2011年05月22日(日)