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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ローズ(サプライズ)号船長のシアトル講演会

M&Cの映画で、サプライズ号役を演じたローズ号の船長をつとめたAndy Reay-Ellers船長の講演会が、先週日曜に米国シアトルで開かれたそうで、その記事がシアトル・タイムズ紙に掲載されていました。

シアトル・タイムズ紙 2007.04.09
http://archives.seattletimes.nwsource.com/cgi-bin/texis.cgi/web/vortex/display?slug=shipcaptain09&date=20070409&query=Sailor%27s+sea+stories+include+Hollywood

シアトルのレイク・ユニオン・パークでは「海を舞台にした芸術・冒険・ロマンス」と題した講演会が毎月1回ひらかれているそうで、今月のゲスト講演者がReay-Ellers船長だったというわけ。
なんだか面白そうですね、この講演会。海の向こうですから気軽には行けませんが、シアトル近郊在住の方がいらっしゃいましたら、おすすめかもしれません。

船乗りになって25年、貨物船、客船から帆船まで様々な経験を持つReay-Ellers船長も、映画製作にかかわるのは初めて。
映像には「実写」と「コンピュータ・グラフィク映像」の2種類しかない、と思いこんでいた船長と、帆船の帆は「総展帆」と「縮帆」しか無いと思っていた映画製作者は互いに似たり寄ったりで、結局彼らはお互いの溝を埋め、最高の映像を作り出すべく互いの領域に分け入って協力していくことになります。

Reay-Ellers船長は海上航海時にサプライズ(ローズ)号の船長を勤めるだけではなく、メキシコのセットでの撮影、果てはニュージーランド・ウェリントンでの模型制作や撮影にまで船長として立ち会い、サプライズ号が当時の実在の帆船らしく見えるように細かい指示をしていたとのことです。

実際に映画製作に立ち会ってみなければわからないことだが、スクリーンに写っているのは本当に上の部分だけだ。
実際にその下には信じられないほどの量の細かい裏方仕事がある、と船長は語ります。
ラッセル・クロウは寛大で親しみやすい男だよ、マスコミで定説となっている「暴れん坊」とはまるで違う、とも。

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やっと年度末が終わった時には、見たかった映画は全て終わってしまっていました(泣)。
今週水曜にやっと時間ができたのですが、仕事帰りで(精神的に)疲れてもいたので、ウガンダの大統領はパスさせていただいて、かる〜く動物ほんわか映画に行ってしまいました。

「ユアン少年と小さな英雄」
スコットランドの忠犬ハチ公物語というか、19世紀半ばのエジンバラを舞台に、警官であるご主人が亡くなった後その墓を14年間守り続けたテリア犬の物語を、警官に可愛がられていたユアンという貧乏だけどけなげな少年を主人公に描きます。

ストーリーは定番ですし、予想通りの教訓くさいハッピーエンドで、日本だったら間違いなく「文部省特選の春休み映画」間違いなし。
なんだか懐かしのカルピス→ハウス食品提供「世界名作劇場」を見たような…フランダースの犬よりはあらいぐまラスカル?
テリア犬が好きで、19世紀のスコットランドに興味があって、マニアなホーンブロワー・ファンの方にはおすすめかも。

第3部「二つの祖国」のアンドレ・コタール少佐役のグレッグ・ワイズと、第2部「侯爵夫人と悪魔」のドン・マサレード司令官役ロナルド・ピカップが出ています。
ワイズは善良なる牧師さん役、ピカップは救貧院の偽善院長。

あーしかし、余所からエジンバラに赴任してきた牧師さんの英語はわかるんですけど、エジンバラ住民たちの言ってることが最初ぜんぜんわからなくって…これが噂に聞くスコットランド訛りって奴なのねぇと実感を持って悟りました。


明日あさってと外出のため、明日の更新はありません。
明日日曜の夜の洋画劇場は「ブラックホーク・ダウン」ですね。冒頭にはヨアン・グリフィスがちらっと出てきます。
ヨアンの演じる役が体調を崩したので、巡りめぐって事務職の筈のユアン・マクレガーが現場に行くことになってしまって、戦闘に巻き込まれるという話なので、ヨアンはさっさと具合を悪くし戦場の本編には出てきません。

ジョシュ・ハートネットはもちろん、オーランド・ブルーム、エリック・バナ、ヒュー・ダンシーなど今現在ハリウッドで活躍している若手の出世作ではありますが、渋い脇役たちも印象的でした。
現場指揮官のジェイソン・アイザックス、デルタのニコライ・コスター・ワルドウ、司令官のサム・シェパード。
ただし、シビアな物語ですし、戦争映画なので惨いシーンもあります(夜9時からの放映なのでカットされてるかもしれませんが)。あまりお茶の間向きではないと思います。

この映画、公開時に米軍アフガン侵攻が重なって、いろいろ議論を呼んだ映画でした。
途上国では反発が強く、上映館が襲撃されるとか、逆に米兵を追い込むゲリラ戦のシーンが実際に反政府勢力のテキストに使われたり、
原作はマーク・ホウデンのノンフィクション小説、ハヤカワ文庫から出ています。
米軍の問題点を鋭くついた原作には、この時代に検討すべき価値があると思うのですが、娯楽色をも加えなければならないハリウッド映画化という過程で、その一部は薄められてしまっていて、その点では残念だと思います。
機会がありましたら、ハヤカワNF文庫の原作を一読されることをお勧めします。


2007年04月14日(土)