Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
やっと「長州ファイブ」行けました
やっと見に行けました「長州ファイブ」。 もう六本木のシネマートで11:00〜13:10の1回のみの上映になってるんですが、春分の日のお休みにやっと。 これは良い映画です。 幕末・明治のあの時代がお好きな方は是非ぜひ! それから、途上国との技術提携とか技術移転とか、留学生とかと様々な形で関わっていらっしゃる方にも是非ご覧いただきたいと思います。
物語の冒頭は、1862年の生麦事件から始まります。 現横浜市の生麦で、居留地から遠乗りに来ていた英国人男女4人が薩摩藩島津家の大名行列を下馬もせずに横切ってしまい、無礼だとして、うち一人が斬り殺されたという事件、 引き続き、長州藩士による英国公館焼き討ち事件が描かれます。 高杉晋作率いる長州藩攘夷派の中に、後に英国に留学する長州ファイブ…5人の姿も見られます。
けれども本当に攘夷でいいのか?という疑問が彼らの中に芽生える…「敵を知り己を知らば百戦百勝」と佐久間象山に言われたこともきっかけとなって、彼ら5人は夷敵を知るべく英国に密航留学することを決意します。
このあたりの周囲の歴史上の人物たち…寺島進の高杉晋作、泉谷しげるの佐久間象山、原田大二郎の村田蔵六(大村益次郎)が、いい味を出しているんですよね、 高杉は自らを「狂」と称していた人ですが、寺島=高杉にはそのアクが十分にあるような気がします。
ちょっと話が逸れました。 話をSail hoに戻します。そう、船出です。ハウステンボスの汽走帆船「観光丸」が英国商船として登場です(きちんと赤の商船旗が翻ってました)。 帆船ファンとしてはやはり、岬の影から観光丸が出てくるだけで「おぉぉ〜っ」という感じ。 出航時はガフセイルのみ、途中、横帆のフルセイル・シーンや、汽走シーンもあり堪能させていただきました。 途中、英国船員たちが陽気に海の唄を歌うシーンがあるのですが、あれは何の唄なのかなぁ。たぶん有名なシーシャンティだと思うんですけど。 観光丸は、実際のところ幕府海軍伝習所の練習船を復元しているから、商船ではないのかもしれませんが、19世紀半ばということで時代的には間違いはないのでしょう。 あ、そうだわ。あの時代にはもう「ヘッド」って無いのかしらん? おなかをこわした伊藤俊輔がたいへん苦労して用を足していらっしゃいましたが。
そしてトレイラーにもあるロンドン入港シーン。 CGでも当時のロンドンを見ると感激します。テムズ川に帆船があふれているんですよ(感涙)。
鎖国状態;人力と手工業の日本から、産業革命をほぼ終えた英国にやってきた5人には何もかもが驚異の世界、 それはカルチャーショックなどというものではなかったでしょう。 文化のみならず時代の差をも経験しなければならなかったのですから。 映画は、彼らの試行錯誤を丁寧に描いていきます。
後半、物語は5人のうちの一人、グラスゴーに造船技術を学びに赴く山尾庸三にフォーカスします。 海洋ファンにはこれはありがたいです。 どこまで正確に再現されているのかはわかりませんが、当時のグラスゴーの造船所などが登場するのです。 映画はこの山尾が、5年間の留学を終え、グラスゴー大学の教授と造船所の技師たちに見送られて英国を去るところで終わります。
私がこの映画を見たいと思ったきっかけは、歴史的興味だったのですが、今回考えさせられたのは、150年前の歴史ではなく現代のことでした。 山尾は英国人たちに「日本には工業が無い」と断言します。 今の日本は世界一のランクに属する先進工業国ですよね。150年前には全く無かったところから始めて、ここまで来て、そして今は途上国から技術研修生を受け入れていたりする。 技術力というのは、当たり前のようにあるもので、その意味を考えたりすることもないのだけれど、 グラスゴー大学の教授が山尾に送る言葉に「エンジニアは革命家だ」というものがあります。 長州ファイブの5人の留学生のうち、誰でも名前を知っているのは後に政治家になった伊藤博文と井上馨。技術者であった残り3人(山尾、遠藤、井上勝)の名前は歴史の教科書には載っていません。 でも今の日本が何で持っているのかと言えば、工業力と技術力。そのあたりの大切さを今、技術力が軽んじられつつある時代にもう一度、見直した方が良いのではないかしら? などととまぁちょっとまじめに考えてしまった次第です。
まだご覧になっていらっしゃらない方がありましたら是非、おすすめの映画です。
2007年03月21日(水)
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