Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
今頃やっとダ・ヴィンチ
今さらですが、やっと行きました。ダ・ヴィンチ・コード。 もう空いているかと思ったのですが、予想は大はずれ。日比谷スカラ座が満員で入れず上映時間が1時間半後だった品川プリンスシネマにまわる羽目に。 まぁレディスデーだったということもありますが、皆さん>海賊映画やMI3に流れてないの?まだダ・ヴィンチなの?びっくり。
いろいろ評判が耳に入っていたのですが、個人的には「さすがロン・ハワード。アキバ・ゴールドマンの脚色ってわかりやすい。それでいて決して派手さや過激さでアピールしようとしないし、この二人ではなかったら、もっととんでもないダ・ヴィンチになっていたのではないの?」と納得して帰ってきました。満足です。 私は原作を読んでから行きましたから、一から理解する必要がなかったことはありますが、謎ときのテンポも良く、リー・ティービングの書斎での解説もグラフィックを使ってわかりやすくなっていて、すんなりついていけました。 ドラマチック・ストーリーではなく、ドキュメンタリー・タッチに仕上げてあるところが、さすがロン・ハワード監督ですよね。 BGMが終始おさえ気味で、物語が淡々と進んでいく、クライマックスのソフィーが自分が何者であるかを知るところも、静かな画面であるからこそ事実がすとんと落ちてくるというか、それでもカンヌの試写会では失笑した人がいたそうだけど、あそこで盛り上げられたらそれこそ失笑では済まないだろうと思うので。
ヨーロッパの名所旧跡も魅力的に撮影されていたので楽しめました。 と言っても私が実際に行ったことがあるのはルーブル美術館だけですが、綺麗に撮ってあったので感心。 ピラミッドのシーンといい、照明が効果的ですよね。 ラングドンとソフィーがルーブルの館内を、ニケの像(だと思うんだけどヴィーナスだったかな?)の階段を駆け下りて逃げいくところ。あそこって本来は平凡な照明で、あんなに綺麗なところではないんですが、撮影用照明の立体感で建物全体が見事にライトアップされて、もとは宮殿だったというルーブルの魅力を再認識しました。 というか、見学に行った時にはあそこが宮殿だったという認識が無かったのですが、今回つくづく「あぁルーブル宮って宮殿なのよね〜」と感心。 いやいや、良いものを見せていただきました。
セリフが原語なのも臨場感があって良いですね。 シラスとアリンガローサの会話は何語なのでしょうか?イタリア語? 何言ってるのかさっぱりわからないところが不気味。でも久々に聴くポールの声はやっぱり好きだわ(こらこら)。 もちろん、ここにマチュリンを重ねてはいけないことはわかっていますが、冒頭の館長殺害部分(銃で格子の間から狙いをつけるところ)で一瞬。 「スティーブンの射撃ぶりには、どこか爬虫類を思わせる、愉快でない感じがあった」 という一文がぱっと頭に浮かんで。 「足下を固め、ピストルを持ち上げ、淡い瞳が銃身の先を見つめた」 シラスは瞳の色が薄いのです。あぁジャックが2巻で言っていたのってこういうことなのね、と。 はい、わかってます。映画が違います。
最後に、上映前後に世界各国で問題となった「この映画におけるキリスト教の描き方」について。 私はクリスチャンではありませんし第三者の立場から見た意見になりますが、 「大人の判断力を持ち、真摯に宗教を信仰する人であれば、この映画を見てキリスト教やカトリックを誤解することはありえない」と断言できると思います。 その意味では、上映禁止運動に対してこの映画を成人指定にしたフィリピン政府の判断が一番理にかなっているのではないかしら。 その判断力を持たない人が、映画の一面だけを見て、過剰に反応しているだけではないかと思います。 それらの方たちは、一見すると熱心な信仰者のように見えるかもしれませんが、歴史書で言う中世の異端審問摘発のようなもので、本当の信仰とは言えないのではないか?とクリスチャンではない第三者の立場からは思えるのですが…だってイエス・キリストは「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」とおっしゃった方だと私は聞いてますけど。
キリスト教の信仰についてはともかく、信仰全般について言えば、最後にラングドンがソフィーに語ることは真実だと、いちおう仏教徒の私でも納得します。 井戸に落ちてすぐに助けが来なくて、絶望にとらわれそうになった時に必死に祈った、そうしたら誰かが側にいて守ってくれるような気がした…とラングドンは言うのですが、これはあらゆる宗教の真実ではないかと思います。
2006年08月10日(木)
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