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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
Sharpe's Challenge

英国在住の友人から「Sharpe's Challenge」の録画VTRが届きました。
ひさびさの再会に感慨ひとしお。

いやまさか、あのサー・ヘンリー・シマーソンを目にして、まったくもって相変わらずのあの性格を目のあたりにして、「あぁもうこのお方ったら変わらないんだから…」と懐かしさにうるうるする日が来るとは…昔は夢にも思いませんでした。
きっと今だったらオーバーダイア・ヘイクスウェルさえ大歓迎できるに違いない。

ここしばらく(ボロミア以来)ヒアリング出来るようになっていたショーン・ビーンの英語も、また聴き取れなくなってしまいましたが、あの独特の訛も耳になつかしいですね。
相変わらず精悍な「現場の人」です。
カーネルと呼ばれてましたから「大佐」ですか? それなりの貫禄はもちろんありますが、でもやっぱり土埃にまみれてサーベル振り回すのが似合っている。
ITVのインタビューに「昔の衣装は入りますか?」っていう意地悪なのがありましたが(「ブーツは入るよ」と答えてました)、第一回の頃のガリガリのハングリーさは無いものの、とんでもなく型破りな現在のシャープ大佐も魅力的。
いやほら、昔から知ってるから何やってもあまり驚きませんけど、いきなりこんな大佐が出てきたら、はっきり言って「ホーンブロワー」のフォスター艦長の比じゃありませんって。

ハーパーにもすっかり貫禄がついてしまいましたが、ターバン…似合いますね。
時代が違うけど、アラビアのロレンスの時代とか第二次大戦のアフリカ戦線とかで、ベドウィンに潜入したら似合いなんじゃないかと。
ことハーパーに関する限り、前編のラストはとんでもないところで終わります。このまんま1日、後編まで待たされたイギリスの視聴者はお気の毒。
(ねたばれ回避のためこれ以上は申しません)

全編のほとんどがインド・ロケです。
藩王の宮殿なども現地に今なお残る館で撮影したものでしょう。
本物のもつ迫力…日差しや乾燥や土埃や、暑さも含めて…にはかないません。

ロケは週休1日で約2ヶ月60日間に及んだそうです。
インタビューでは「インドで食事は大丈夫だったのか?」と聞かれて、「カレーが美味かった。朝から3食カレーはごめんだが、昼夜カレーはかまわない」とのこと。

イギリス統治下のインドは、「インドへの道」や「ガンジー」など19世紀末、20世紀のものは今までにも目にしているのですが、それらに比べるとここで描かれる19世紀初頭のインドは、英国(支配者)とインド(被支配者)の間に、産業革命以後ほどの文明差がなく、統治者イギリス人も絶対者としてお高く止まっていられないところが面白い。

でもそれは、インド独立後の現在に作っているドラマだから…という部分があるのかもしれません。
私はコーンウェル原作の、シャープのインド時代の話は読んでいないのですが、イベリア半島戦争時代もそうでしたけど、テレビドラマはお茶の間で放映されることもあり、やはりどうしても原作よりトーンダウンしています。
コーンウェル原作だともう少し、統治者のイギリス人は悪辣なのかな?と思ったり。

ドラマではシャープが、ヒンドゥーの習慣を無視して英国陸軍の慣習を無理矢理おしつけようとする軍曹から、インド兵を救ってやるエピソードがあります。
彼がそのような権威主義とか弱い者いじめが嫌いなのは良く知られていることですが、でもこれで上手くポイントかせいでるな…とうがった見方をしてしまったり。
英国に対して反乱を起こす藩王も、本人の意思というより、英国人顧問に上手くかつがれているようなところがあり、そのあたりも含めて植民地統治の是非うんぬんといった問題を上手く回避したつくりになっているとは思います。

今回数年ぶりにまた、シャープという役に戻ったことについて、ITVのインタビューでショーン・ビーンは、
この役は自分のキャリアに大きな影響を与えた役であり、常に自分とともにあるものであったこと。ワーテルローが終わった後もシャープにはまだ多くの可能性があるとずっと考えいたこと。
ある人物を数年間に渡って演じた経験があれば、その人物に戻っていくには数日あれば十分なこと…などを語っています。
また殺陣については、ロード・オブ・ザ・リングが、馬もトロイでは乗っていたからその点でブランクはない。ただし最大でも速歩どまりだったから、本格的に馬に乗るのは久しぶりだ、とのこと。
これを読んで「あれ?」と思ったのですが(LOTRと言えば馬が疾走…というイメージがあったので)、考えてみればボロミアが馬に乗っていたのは最初の裂け谷に来るところだけだったんですね。馬が駆け回るのは「二つの塔」以降でした。

馬と言えば私は今回登場するインド人の槍騎兵隊隊長(Captain of Lancer)にほれてしまいました。
英国人が嫌いだと言いながらシャープに手を貸し、何故と問われて、藩王は仇だから敵の敵は味方だと答える人です。
それを聞いてアイルランド人のハーパーがにやっと笑うのですが。

ブレイクニー君を彷彿とさせる、けなげな候補生君も登場しますし、まぁ物語は相変わらずのパターンなんですが、ここまで本格的に当時を味わせていただいたら満足かしらと思います。
英国にDVDをオーダーされた方のところにもそろそろ到着している頃と思います。
どうぞお楽しみくださいませ。…英語のヒアリングたいへんですけど。


2006年05月07日(日)