Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
「Sea Warriors」――資料DVD紹介
せっかくのゴールデンウィークに、なぜ更新をお休みしていたかというと、米国アマゾンから、本とDVDの箱が届いたからなのでした。
一気買いした本(洋書)…は徳間文庫から出ているデューイ・ラムディンのアラン・シリーズ。実はアメリカは今、ちょっとした海洋小説ブームで、ダドリ・ポープのラミジなんて品切れが出始めているようです。そこでアランも品切れが出ないうちに、未訳のものだけは抑えておこうと思いまして。 本の装丁にはこだわらず、在庫のあるもので集めた結果、3社のペーパーバックが混在する結果になってしまったのですが、もし1社の装丁にこだわられるのであれば、McBook Press社のものがおすすめ。オリジナルのカバー絵で装丁も綺麗。装丁デザインだけで言えばThomas Dume Booksも綺麗なんですが、このカバー絵はオリジナルではなくて当時の有名な海洋画を使用しています。でも私はやはり美術ファンではなく小説ファンなので、カバー絵はアランの指揮する艦がいいわ…と思ってしまって。 Fawcett Crest社の廉価版ペーパーバックは一番お安いし、通勤電車の中で読むには便利な小型サイズですが、その分ちょっとカバー絵が犠牲になっている感があります(インクの発色もちょっとおかしいような)。
DVDは2本。1本はもちろん「M&C」のUS版コレクターズエディションですが、もう1本は「Sea Warriors」というドキュメンタリーです。 米国アマゾンでUS版を購入された方は、この「Sea Warriors」、おすすめDVDでもれなく画面に出てくるものなので、カバーパッケージをご覧になると(ここをクリック)、「あ…見たことがある」と思われるかもしれません。
「Sea Warriors」の副題は、「ネルソン時代の海洋小説背景案内」、ドリンクウォーター・シリーズの作者リチャード・ウッドマンが案内役となり、英国内に残る当時の史跡や博物館を訪ね歩きながら、19世紀初頭の英国海軍の世界を紹介します。 各所に登場する解説者も豪華です。英国国立海事博物館やチャタム海軍工廠博物館の研究員、ロンドン大学の歴史学教授、そして海洋小説ファンとして嬉しいのは、ウッドマンだけではなく、ボライソー・シリーズの作者アレクサンダー・ケントと、キッド・シリーズのジュリアン・ストックウィンが登場して、自作を語ってくれること。挿絵画家のGeoffrey Hubandも登場します。
ドキュメンタリーに登場する史跡は、旧海軍省・海軍委員会会議室、H.M.S.ビクトリー(戦列艦)、H.M.S.トリンコマリー(フリゲート艦)、H.M.B.エンデバー(復元船)、チャタム海軍工廠博物館など。 内容は以下の通り。
1)海洋小説の歴史(フレデリック・マリアットからC.S.フォレスター、現代の作家たちへ) 2)当時の艦船について、フリゲート艦について(H.M.S.トリンコマリー艦上から) 3)旧海軍省と当時の組織(旧海軍省、本省と各軍港を結ぶ腕木信号機の現物紹介) 4)当時の艦船の活動(対仏封鎖の実態について) 5)艦船の建造(チャタム旧海軍工廠)、手動のロープ編み機に感動します。 6)艦船の貯蔵品と主計長の仕事 7)艦内の調理場と火気の管理、当時の食事について(10匹はコクゾウムシ(weevil)のたかるパン) 8)水兵の仕事(強制徴募と日常業務) 9)現代に当時を体験する(H.M.B.エンデバーの体験航海紹介) 10)船の生活(時鐘、ハンモック、舵輪と舵の構造、ハンドログなど) 11)艦長の職責 12)海兵隊について 13)戦時条例と鞭打ち刑 14)艦載砲と火薬庫 15)マスケット銃、白兵戦用の武器(剣、槍、斧など) 16)軍医の仕事 17)海洋画の魅力について(Geoffrey Hubandが語る) 18)海洋小説の系譜について 19)海洋小説作家たち、自作を語る(ウッドマン、ケント、ストックウィン)
当時の紹介に一部、ITVのTVドラマ「ホーンブロワー」の映像を使っています。一部TVで使わなかった没映像もあるような気がします(違うかしら? 違っていたらごめんなさい)。 いやでも、最初に「ホーンブロワー」を見た時は凄いと思ったけれど、「M&C」を見たあとで見ると、やはりTVドラマの限界というか、予算の限界で再現しきれなかった部分はあるんだなぁと思ってしまいます。
でも一つ、TVドラマの方凄いと思ったこと…第1シリーズの最終シーン=ホーンブロワーとケネディと水兵たちがマストの上に上がっているシーンなんですけど、これをよく見ると、船(インディファティガブル号ことグランド・ターク)が結構揺れているんですよ。 「M&C」でオーブリーがマストに上がるシーンでは、彼は片足をヤード(帆桁)にかけているだけなので、艦が前方に沈みこんでマストが傾いても、片足を踏ん張ればバランスを取りやすいんですけど、「ホーンブロワー」の場合は完全にヤードの上に立っているので、艦が前方に沈みこむ時はマストを掴んでいる片手だけを支えにバランスを取らなければならない筈で、これは相当に大変だと思います。
「M&C」のDVDについては、さらに長くなりそうなので日をあらためて。
2004年05月05日(水)
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