Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
4月に入りました
4月に入り、新しい学校、職場、部署に移られた方も多いのではないかと思います。 私は…昨日までに前年度の仕事を片づけるつもりが果たせず、まだ3月34日をやっています。あぁ冗談ではなくって、年度の終わりがM&Cの上映の終わりと同時になりそうですが、それでも先週は映画の日に何とか19:30の最終上映を見ることができました。
先週の日曜日には海洋小説ファンクラブの例会で、船の科学館のM&C展に行ってきました。 会場がランデブー地点を兼ねていたので、メンバーが揃うまでかれこれ2時間近くいたでしょうか? 時間だけはたっぷりあったので、ガラスケースに張り付いて、妻ソフィー宛のオーブリーの手紙をじっくり読んでみたり。でもオーブリー艦長、達筆すぎて字が読めない〜。二人がかりで、あーでもないこーでもないとか言いながら単語を推測して、何とか九割方解読したのですが、これがなかなか面白いものでした。
ソフィー宛のオーブリーの手紙というのは、原作にも多々登場しますが、いつも思うのはこのような手紙を受け取っているソフィーは聡明で分別のある女性で、オーブリーから絶対の信頼を寄せられているのだなぁということ。 作戦内容の詳細とか、任地の情勢とかについて詳しく書かれている手紙が多いのですが、例えば今どき単身赴任の夫がここまで詳しく自分の仕事内容を妻に語るかしら?と思うし、同時代の他の海洋小説に比べても、手紙の内容が濃いですよね。これに匹敵する手紙といえばホーンブロワーがバーバラ夫人に宛てたものとか、ラミジがサラー夫人やイタリアの女公爵ジアナに送った手紙ぐらいでは? ソフィーは基本的には慎ましやかであまり表には出ない性格だけに、内助の功の部分は相当にあるのだろうなぁと思います。
この手紙、映画ではネイグルとウォーリーがアケロンの模型を持って艦長室を訪れるところに出てきます。 ブラジルで補給した時に、「これは大事な郵便だから商船に託して英国に届けるように」と言いながら現地の役人に託されているものです。 オーブリーの手紙には、直前の戦闘のことや、重傷のジョー・プライスをマチュリンが開頭手術で救ったことなどが書かれていますが、ブレークニーの負傷と片腕の切断にも触れていて、「この便で、母である伯爵夫人も(ブレークニー本人からの手紙で)息子の怪我のことを知るだろう、いずれ帰国したら伯爵夫人には私から説明に伺うつもりだが、その前に君から伯爵夫人を訪問してほしい」という一文があります。 いやはや艦長夫人も大変ねぇ…と私たちも解読しながら話していました。
そうそう、原作設定ではボンデンの従兄に当たる設定のジョー・プライスですが、このオーブリーの手紙ではボンデンの伯父になっていました。確かに映画での二人の年齢差を考えると、従兄というのはちょっと苦しいですね。
閉館が迫りそろそろ引き上げかという頃に、会場に科学館の係の方が戻っていらっしゃいました。 私たちの一行の中には、どうしても海尉の軍服の背面を見たいと願っていた人たちがいたのですが、もう最後の最後だからと駄目もとでお願いしてみたところ、なんと見せていただけることになりました。 そしてびっくり。なんと海尉の軍服の後身頃は四枚はぎ…というのかしら?私、服飾用語にはあまり詳しくないのですが。背広やテーラードスーツの背中の部分はふつう二枚の後身頃から構成されていますよね? ところが女性用のシャネルスーツなどは後身頃が中央の二枚と脇の二枚の四枚から成っているでしょう? 海尉の航海用軍服も同じデザインなのです。オッシャレ〜!…というか、この方が体にぴったり合うから着心地は良いだろうし、副長役のジェームズ・ダーシーはスタイルがいいから、ウェストラインが綺麗に出ると思うけれども。 でも、いかつい軍服、それも礼装ではなくって通常の雨風や直射日光にさらされる航海用軍服に、当時はここまで手がかかっていたのかと思うと、ちょっとびっくりでした。
さて、水曜日に急遽「原作を間違えないで購入する方法」をupしましたが、そろそろ、原作は全て読み終わってしまった方もあるのではないでしょうか。次に翻訳が出るのはおそらく4巻でしょうが、夏頃という噂があるものの、確かではありません。 待ちきれない方は原書を読むという手もありますが、オブライアンは…というかマチュリン先生はちょっと手強いから、手を焼かれるかもしれません。つまり彼は常に、ひとひねりしたものの言い方をするじゃないですか、英語ネイティブの人には良いかもしれませんが、外国人は往々にして、このひねりについていけないのでございます。「マチュリン先生の皮肉がわからない〜」と泣きながら何度辞書をひいたことか。 13才のマックス・パーキス君も「オブライアンは大人になったらもう一度読み返すよ。ホーンブロワーやシャープはチャイルド・フレンドリーだから僕も好きなんだけど」と言ってますし。
もっとも「フォレスター(ホーンブロワーの作者)がチャイルド・フレンドリー(子供にも読みやすい)」というパーキス君の言い分も「!!」ではあるのですが。まぁ日本で言えば灘かラサールかという超有名私立校イートンの優等生の言うことですから、割り引いて考えないといけないかもしれません。 2年前、私が初めて原書3巻にチャレンジした時は、実は一人ではなかったのですよね。当時は3巻読書会用の掲示板があって、3〜4人で知恵を出し合いながら、感想など書き合いながら、少しずつ読んでいました。4巻についてもこういう企画、どなたか立ててくださったら面白いと思うのですが。
でも海洋小説の翻訳者は限られているので、オーブリー&マチュリンの続刊を急ぐと、他が遅れたりしないかしら? ボライソーの27巻とかキッドの3巻とか大丈夫かしら? 原語での読みやすさで言えば、やはり一番読みやすいのはやはりアレクサンダー・ケントのボライソー・シリーズだと思うのですが。人間関係で読ませるから会話でストーリーが進む部分が多いし、ほどよくドラマチックで、ストーリー半ばでも胸がキュンとなるようなエピソードがあって、中だるみしないような気がします。
「4月2日コペンハーゲン」のupはもう少し待ってくださいね。なんだか書き始めたら話題がとっ散らかってしまって、少しまとめないといけません。 主要館での上映は来週9日で終わりますので、現在手持ちの記事の中で映画に直接かかわる話題は明日までにupする予定ですが、米国のネットには今なお追加情報が上がってきていますし、今までご紹介できなかった周辺情報──映画公開にあわせて英国の新聞が特集を組んだ、ガラパゴス案内とか、オブライアンの小説の舞台を訪ねて…などといった特集──については、今後ぼちぼちご紹介していく予定です。 よろしければ今しばらくおつきあいくださいませ。
2004年04月03日(土)
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