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2006年04月30日(日) |
「父帰る/屋上の狂人」 最後の公演 |
客席の空気がピーンと張り詰めている気がした。 演出の河原さんはあのTシャツを着て、客席中央で見ていた。
<父帰る> 突然帰ってきた父に対して怒りをぶつける場面では、 いままでで一番力が入っていたように感じた。
賢一郎の声だけが会場内に響き、空気がビリビリ鳴っているようだった。 その声で心の奥底が揺さぶられたように感じた。 見ているこっちまで気持ちがピシッとした。
まるで今までの一ヶ月間の思いをすべてぶつけているような迫力だった。
賢一郎の顔からは汗がボタボタと落ちてきて、 鼻水も糸を引いているのが見えた。 賢一郎は右手で鼻をつまむようにして一度拭っていた。
周りの役者さんたちもいつになく熱が入っているように感じた。
最後に二人で父を探しに走り出そうとする場面では、 賢一郎の顔がみるみるうちに歪んできて、 走り出す直前にはぐしゃぐしゃになっていたようだった。 まるでこの20年間の父に対する色々な感情のすべてが その顔に表れてきたかのようだった。
客席からこんなにたくさんのすすり泣きが聞こえたのは初めて。
<屋上の狂人> わたしは吉治が好き。 回を重ねるごとに愛しくなった。 義太郎を見る優しい目がいい。 笑顔や驚いた顔もかわいい。
屋根の上の義太郎はものすごく楽しそうだった。
ライトがついてすぐ何かを声に出して言っていた。 はっきりと聞き取れたのに、その後興奮して忘れてしまった。 前に見たときは「穴があいている」と言っていたけれど、 今回はまた違った言葉だった。
屋根の上を歩いたとき、べったん、べったんと 足が瓦に張り付いているような音がしていた。 足の裏が汗で湿っているのかなと思った。
両腕を左右に動かす動作はとても元気がいいように感じた。 相撲をとるような格好の時の声もいつもより大きく感じた。 でも左側の屋根で片足立ちになるところは いつもよりは高くあがっていないように感じた。 バランスをとるために左足の指で瓦をぎゅっと掴んでいた。 その指がきれい。そしてかわいい。
屋根で吉治と追いかけっこをする場面でハプニングが起きた。 義太郎が左側の屋根に飛び移ったとき、 いつもなら屋根の一番高いところに立ち止まるはずなのに、 そこに乗ったあとで、勢いあまった感じで その向こう側まで左、右(だったかな)と足が出てしまったのだ。 (大きな一歩ではなく、ほんの一足分ちょこっとだけだったと思う)
でも慌てる様子もなくまた左、右(だったかな)と 後ろ向きのまま足を動かして屋根の天辺に上り いつもどおりにお芝居は続いていた。
最初に飛び移ったと思われる着地点の屋根瓦は少し欠けていた。 どうやら発泡スチロールのような素材でできているみたいで、 欠けたところは白色だった。 次からそこを通るときは欠けた部分を避けていたように感じた。
屋根の上にいたときは、とてもよく客席を見ていた気がした。 いままでは視線がかなり上のほうに感じたけれど、 今日はけっこう下をよく見るなと思った。
巫女さんが来てからも、元気いっぱいだった。 燻されているときの表情はかわいいし、 逆に吉治を燻すときも、吉治我慢せいと言って 楽しそうに頭を押さえていた。 末次郎が焚き火を踏み消す場面でも、 今までで一番声が大きく、楽しそうに地面を踏んづけていた。
最後にまた屋根に登り末と二人きりになるシーンでは ジーンときて泣きそうになった。 笛の音の話をしたあと、また一人口を動かして歌っているみたいだった。
あの屋根の上からは何が見えたのだろう。 何を思いながら上を下を眺めていたのだろう。
<カーテンコール(興奮していて記憶が曖昧)> 1回目はいつもどおりで、全員はけていった。 客席の拍手が鳴り止まず、すぐにまた全員が舞台に出てきてくれた。 するとステージ上の照明装置付近から 銀色のテープ(ドームオーラスの時のようなものだけど銀色一色)が 出演者の頭上に降ってきた。 出演者の方々はそれを知らなかったらしく、 おっ!と驚いた表情をしていた。 ほとんどのお客さんが立ち上がって拍手していた。
剛くんが頭を下げるきっかけでみなさんが頭を深深と下げた。 帰り際に剛くんは隣の沢さん(だったと思う)と何かお話していた。 たしか2回目も最後に剛くんだけが振り向いて お辞儀をしてくれたと思うけれど、興奮していて記憶が曖昧。
まだ客席の拍手は鳴り止まず、3回目は剛くんだけが出てきた。 剛くんは両側にほかの出演者がいると思ったらしく、 両手を広げて出演者の方を紹介(?)するようなしぐさをした。 でも誰もいなかったから、あれっと驚き、そして照れ笑いをしていた。 するとほかの出演者の方々が出てきて一列に並びお辞儀をしてくれた。
出演者の方々はいままでには見たことがないような とってもいい笑顔をしていた。
みんなが裏に戻る中、剛くんだけがまた客席に向かって戻ってきて、 いつもの挨拶をする舞台の真ん中に立った。 すると、客席全体を隅から隅までずーっと見渡してくれた。 もう感激して泣きそうだった。 とにかく精一杯、一生懸命に心をこめて拍手をした。
そして最後に剛くんは深深とお辞儀をしてくれた。 まだ頭を上げないのかなと感じたくらい、ずっと頭を下げていた。 帰り際のお手振りはなく、いつもどおりに後ろを向いて歩いてはけていった。
カーテンコールの時の剛くんの表情が忘れられない。
今までに見たことがない、ものすごくいい顔だった。 やり遂げた達成感で自信に満ち溢れているようにも感じたし、 ほっとしたような表情にも見えたし、 嬉しそうにも見えた。 満面の笑みという感じでもないようだし、 かといってそれほど寂しそうにも感じられなかった。
きっと剛くん本人も、色々な気持ちが交じり合っていて、 その感情を言葉に表すことはできないんじゃないかな。
この時間を剛くんと共有できて、とっても嬉しかった。 この剛くんの顔を見ることができて、よかった。
お客さんは名前を叫ぶ人もほとんどいなかったし (何か叫んでいる人もいたけれど拍手にかき消されたように感じた)、 プレゼントを渡す人もいなくて、 ただただ一生懸命に気持ちをこめて拍手をしている感じだった。
<全体の感想> 初日と比べると、お芝居全体がしっかりと固まってきたなと思った。 静かな場面と激しい場面の差が大きくなったように感じた。 父帰るでは方言の抑揚がすこし押さえられているように感じた。 屋上の狂人では、剛くんはちょっと声が枯れているのかなと思った。 いままではもっと声が高くて、澄んでいてよくとおると感じたけれど、 今日はよくとおる感じでもなく、ちょっと低くてかすれ気味だった。 屋上からの視線がいままでよりも下のほうになったみたいで、 何度か目が合っている気がして心臓がとまりそうになった。
剛くんはこの舞台をやり終えてどんなことを思ったのだろうか。 一ヶ月間、毎日どんなことを考えながら過ごしていたのだろうか。 今日はおいしいお酒を飲めたのかな。 舞台をはじめる前とやり終えた後で、お芝居に対する考え方や取り組み方に 何か違いはでたのかな。
剛くんの口から、剛くんの声で今回の舞台のことを聞いてみたい。
改めて役者としての剛くんのすごさを感じることができた舞台だった。 この先どう進化していくのか、とっても楽しみ。
剛くん、お疲れさまでした。 ゆっくり休んでください。 今回の舞台を糧にして、またどこかで新しい一面を見せて欲しいです。
今回、改めてお友達の大切さを痛感しました。 チケットをどうするか一緒に考えたり、誘っていただいたり、 一緒に舞台の感想を話したりと、とても充実した数ヶ月でした。 自分ひとりではこんなに楽しい思いはできませんでした。 みなさん、ほんとうにありがとうございました。 またこの一ヶ月間たくさんの方にお会いすることができました。 すてきな出会いを作ってくれた剛くんに感謝します。 正直言うと、あまりにたくさんの方にお会いしたので、 自分が今どなたとお話しているのか、どなたにどんな話をしたのか よくわかっていないときもありました。ごめんなさい。 そして、自分が思っている以上に、 私のことを知っている、サイトを見ていると言ってくださる方が多いことに驚きました。 またどこかで皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。 でも恥ずかしがりやなので、あまり大きな声で名前を呼ばないでくださいね。
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