いまは9月だから。 - 2004年09月15日(水) もう3年前のことになるが、わたしは昔、携帯電話に「パオロン」の小さなマスコットをつけていたことがある。 「パオロン」が何なのか、わかるのは中日ドラゴンズが好きな人だろう。ごちゃごちゃ言わずにリンクを貼らせてもらおうと思う。これだ。 もちろんわたしが自分から進んでパオロンのマスコットをつけたわけではない。 誰からもらったものなのかは、言わなくてもいいと思う。 けれどそれは、彼がわたしに渡したもののなかで唯一の、対のものだったのだということは、書いておこう。 その見慣れたパオロンのマスコットが、身近にいる別の人の携帯電話からぶらさがっているところを見たのは、たしか先週の今日だったと思う。 わたしのつけていたマスコットと違ってストラップとしての役割をしっかり果たしそうなそれは、デザインこそ違っていたが、先にくっついたピンク色のマスコットそれ自体は、まったく同じものだった。 彼女がそれをつけている理由は、二つ考えられる。 でもこういうことは、自分にとって都合の悪いほうに捉えるのが普通だろう。 つまり彼は今回もまた、対になるものを持っていると。 さてわたしのパオロンはどうしたのかという話だ。 あれは簡単に外れるマスコットだった。ボールチェーンが緩かったのかもしれない。 何度となく外れては、すぐにわたしに拾い上げられた。 彼とうまくいっているときもいっていないときも、パオロンはわたしの携帯電話にくっついていて、何ヶ月も彼と会話もせず連絡も取らず、わたしが彼を着信拒否にしたときですら、それは携帯にくっついていた。 でもそんな状態が終わりになるのはわかりきったことで、わたしは決心したことを友人に話そうと思って、夕飯を兼ねて居酒屋で飲みながら話をした。それは冬の終わりだったと思う。 そのとき、それまでパオロンが外れたときと同じような感触があったのだけれど、わたしは気に留めなかった。 彼に関するいろいろなことが、そのとき本当に、どうでもよかったからだ。 その日、わたしのパオロンは本当にいなくなっていた。 昨日の朝、夢を見た。 件の彼女の携帯ストラップを見て、さらに彼のストラップが色違いなことを確認したのだろうと思う。 他にも何か言いがかりをつけたかもしれない。 彼女に向かって大きな声でなにやら言ったところで、自分の声で目が覚めた。 寝覚めが悪いとはこのことだ。 たぶん、話がえらく飛んでいるように感じられるだろうけれど。 院試はきつかった。 就活はきつくなかったけれど、院試はきつかった。 最初から隣に誰もいないのなら我慢できることだったけれど、隣にいるはずの人はどうしていないんだろうと、本気でそう思った。 それならいないものと思おうと考えた。初めからいないのだと。 そうでもしないとやっていけないと思った。 しばらく後からこれを知った彼は、なぜか怒った。 もうとうにわたしとやっていく気が失せていたはずなのに、それでなぜ怒ったのか、わたしには今でも理解できない。 もし仮に、院試に直面していたあの当時に、そばに居てほしいなどと口にしても、それはできないと返答したはずなのに。 今年、院試でずいぶんと疲労したように見える彼は、少しでも、あの当時のことを思い出しただろうか。 あのひともあのときは院試できつかったんだろうと、ほんの少しでも、思っただろうか。 子どもじみていることはわかっているけれど、今思っていることがある。 どこでもそうだろうけれど、サークルを卒業する人には、残る部員たちからメッセージが贈られる。 気の早い話だが、わたしに贈られるであろう分のメッセージ、彼にだけは書いて欲しくない。 我ながら自分の気性にはほとほと呆れかえる。 前から思っていたことではあるけれど、実際にそうしてもらうために誰かに何かを言うのは、もちろん容易なことではない。 卒業までにはまだあと半年ある。 ゆっくり考えてもいいだろう。 でもこの気持ちは、そうそう消えるものではないことも、よく知っている。 -
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