「宙の私生児」

帰る途中で振り返ると、月に見つかった。
真正面で月はわたしをじっと見据えていて、
いつもより大きくて仄朱い、それはまるで、少し血の滲んだ母胎のように見えた。
今宵、だれがあの月をやさしいなどと思うだろう。
引潮で間引いた死者の魂を詰め込んで、来たる夜の幕間に浮かんでいる。



おかしいなぁ。今度はうまく逃げ切れると思ったのにな。
特別な月がまたぼくらを見張っているよ。


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