「一つの言葉」

何も聴かないようにした。何も見ないようにした。何も受け入れないようにした。先へ往く為にわざと塞いだ過去。戻れなくするように道や縁を叩き壊してきた自分の不器用さに笑える。

約束も一言で翻される。絆は消えなくても何時か忘れる。全て、記憶の彼方へ消えてゆく。けれど何時かまた思い出す。この先で立ち止まった時に、自ら止めた時間の狭間で止まった言葉を。

それはきっと蹲った自分に手を差し伸べてくれる。言い忘れた一つの言葉を浮き彫りにして。その時、何ひとつ無駄ではなかったと思えるはず。


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