「死への速さのように」
送別会だった。今年から格下げされ、大分から帰って来た前々支店長の。 かつて部下だった、自分より幾年も若い今の支店長に怒鳴られている様子をわたしたちは見ないように聴こえないようにしているしかなかった。やさしいひとだけど、いい加減で物事を甘く見過ぎる傾向あり。何時しか誰しもなく呟いた「自業自得」。でも確かに痛かったよ。そんなあなたの姿を見るのは。 今の支店長は機械のような人。替わりなど幾らでも居ると言う。時代が選んだような人だ。実力主義。弱肉強食。今更の事。でもみんながみんなそんなに強くはない。けれど世代は変わる。時代は着実に変わってきている。まるで死へ加速するように。 やさしさだけでは生きていけない世の中が完成しつつある。個々、生き延びる事への大義。みんな自分の家族を守る事で精一杯。掃き棄てられたやさしさの残骸。意味も成さず甘さという言葉にすり替えられて。 それならその歪は何処へゆくのか。後戻り出来ない道に佇んで、痛みすら感じなくなって。強く在るというのはそういう事なんだろうか?今、無性にあなたの答えを訊きたい。 その世界を棄てるか、その世界に生きるか。棄てたくてもわたしは既にその選択肢を持っていない。道はもう一本しかない。のどは切り取られ、脱落者への鎮魂歌も忘れてしまった。だからわたしがそうなる時は、誰も歌ってくれなくていい。 お元気で。わたしを雇ってくれたひと。 |