「静かな大地」を遠く離れて
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2008年07月31日(木)

炎暑の京都で叡山電鉄に揺られて世界文学全集についての講演を聴きに行ったのが先週末。
世界に掛けられた呪縛を祓うための物語の花束、いわば「憑きもの落とし」としての全集。
そんなものものしい形容はされないけれども、古都で肉声のプロモーション=誘惑を拝聴
していると、日本の呪術王たる天皇が勅撰和歌集を編むことで言霊を以てクニを治めようと
したように、この息苦しい世界の魔を祓う力を「物語」に求める気分に感染してきた。

その気分の流れの中で、今日二つのすばらしい舞台を体験した。

■「夜と星と風の物語」
上演日程:7月26日(土)〜8月3日(日)
THEATRE1010  http://www.t1010.jp/

サンテグジュペリの『星の王子さま』をモチーフにした毬谷友子さん主演の音楽劇。
カーテンコールで毬谷さんが「今日7月31日はサンテグジュペリの命日」と言われた時、
客席から溜め息のような声にならない声が漏れた。知っていたはずなのに意識してなくて
虚を突かれた。嗚呼・・・!
 
■「人類館」(朗読劇)
 上演日程:7月31日(木)〜8月3日(日)
 青年座劇場 http://seinenza.com/

にぎやかなミュージカルから一転、こちらは津嘉山正種さん気迫のひとり語り。
ウチナーグチを交えていくつもの人格を行き来しながら、重い歴史の折り重なりを
体感させられる。圧倒されつつ、いつしか人間の歴史の総体にまで想いは飛ぶ。

闘いをあきらめない表現者たちの「生きて」いる時空間は、絵空事の世界ではない。
人の想いの収支決算は誤魔化しようもなく降り積もって後世へと引き継がれてゆく。
さらなる災禍や悲劇を生み出していく連鎖を、因果を、止められるのもまた人の
思念だけなのだろう。世界が錯誤の只中にあっても思考停止は許されないのだ。


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