「静かな大地」を遠く離れて
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2002年01月18日(金) |
日本再建シル・ヴ・プレ |
題:214話 函館から来た娘4 画:金平糖 話:蝦夷地を独立の共和国にしようと考えて朝廷に楯突いたお方だと
日本の近代に深く関わった国といえばアメリカあるいは英国ということになる。 ペリー提督からマッカーサーまで、日本を開かせてきたのはアメリカであるし、 明治という国家はつまるところパックス・ブリタニカの優等生をめざしていた。 北の国境を接するロシアもまた政治的にも文化的にも大きな影響を与えた国だ。 江戸期からのつきあいのオランダ、というか阿蘭陀(和蘭)も大事な存在だし、 医学を筆頭とした学問の影響や第二次大戦時の経緯を考えるとドイツも大きい。
時に、フランスはどうだろう?英国と覇を競った帝国主義の雄、今なお政治的、 文化的な影響力の行使に熱心でアメリカ型グローバリズムに抗する国の急先鋒。 現代思想からファッションまで、世界が一目をおかざるをえない文化の発信源。 にもかかわらず、どうも日本とフランスの関係というとおぼろげな印象がして フランス贔屓の文化人というとイッセイ尾形氏がカリカチュアしたアナクロな ベレー帽男かシャンソン歌手が頭に浮かんできてしまう。これは何故なのか?
渋谷あたりで最近よくある“カフェ”に行くと何故か似たような音源らしき 気怠いフレンチ・ポップスがエンドレスでかかっているのも関係あるような ないような。デパートの最上階に入ってる蕎麦屋で有線の琴のチャンネルが かかっているようなもんなのか…?フランスを巡る疑問はとめどなく広がる。 「幻の東京シャンゼリゼ通り計画」という文章を書いたこともあるくらいだ。 http://gwho.bird.to/009/002.htm
で、少し考察してみた。まず、いま日本人に身近なフランス人を思い浮かべる。 ビジネスマンならカルロス・ゴーン、一般人ならフィリップ・トルシエあたり。 なんだかんだ言って、いまのところ二人ともそれなりの成果をあげている。 ふむ、日本とフランスの正しいつきあい方のキーワードは「再建」だったのか! いっそのことダイエーもフランスから経営者を連れてくるとか、…なんていう ネタに走りたくなる展開(笑)
そう思えば、日仏関係のはじまりにしてからが、「再建」絡みなのだ。 何度かここで言及している、鈴木明『追跡 一枚の幕末写真』(集英社)は、 著者が函館図書館で見た一枚の幕末写真から事が始まる快作ノンフィクション。 その写真というのが、日本とフランスの軍人が仲良くフレームに収まっている 箱館戦争の頃の写真なのだ。何故フランス士官が五稜郭にいたのか、それを 幕末の歴史的経緯にまで遡って、つまびらかに説明できる人は少ないだろう。
もちろん箱館にラ・マルセイエーズの声を響かせた佐々木譲さんの『武揚伝』 を読めば、五稜郭にフランス軍人がいたことの経緯はわかるが、さらに遡って 幕府とフランスとの抜き差しならない関係を興味深く描いた歴史小説がある。
■綱淵謙錠『乱』(中公文庫) (裏表紙より) 風雲の幕末、幕府に加担したフランス公使ロッシュと、薩摩・長州連合に 与したイギリス公使パークスの外交戦は熾烈を極めた。ナポレオン三世は 徳川幕府からの要請を受け、軍事顧問団の派遣を決定。来日した団員の中 には侠血の砲兵中尉ブリュネの姿があった…。激動の幕末維新を新たなる 視点から描いた、綱淵歴史文学の最終巨編! (引用終わり)
抜群に面白い本だが、『武揚伝』のように一気に読めるエンターテイメント ではない。小説とは銘打っているが、史料の引用も多く、歴史の本である。 これを読むと最期の将軍・徳川慶喜の「改革」とは“フランスと組むこと” と言っても過言ではなく、その線で結構巧みに立ち回って成功しかけても いたのだ、というあたりがとてもリアルに体感できる。榎本武揚公の前に、 徳川慶喜がもう少し違う振る舞いをしていたら、歴史はどう動いていたか、 その延長上にありえた日本近代とは一体どのようなものになっただろうか。
そして「負け組」となった旧幕臣をはじめとする人々にとって明治以降の 時代とは、どのような歳月であったのか。最近の山口昌男氏の仕事は執拗 なまでに、そのあたりを追っている。近代日本の徹底した相対化、見直し。 それを「周縁」としての北海道と絡めると実に見通しが良い歴史が見える。 「負け組」「周縁」「再建」…、北海道とフランスを繋いでみるとどんな 地図が見えてくるだろう?徳川昭武を元首に戴いたフランス風の共和国か?
…なんてことを気怠いフレンチ・ポップスがエンドレスでかかる“カフェ” でボンヤリと妄想したりしながら日々を過ごすというのも、なかなか軟弱で 悪くない。休日には横浜へ出かけて山手のフランス山あたりを歩いたり。 一度も真面目に勉強したことがないだけにかえって楽しめるフランス語講座 には井川遙嬢がレギュラー出演していたりする。思えば世代的には映画と いえばカラックス、ベネックス、ベッソンが御三家だったし、さらに言えば はじめて好きになったタレントは、ソフィー・マルソーだったりもする(爆)
自ら積極的に勘違いして“フレンチに生きる”というのも有効な逃げ道かも♪
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