「静かな大地」を遠く離れて
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題:40話 最初の夏10 画:唐草 話:おまえたちは静内のことをどれほど覚えているか?
自分が経験したことのない、遠い過去の出来事の追体験。 それと自分が体験した近過去の記憶。 それらが綯い交ぜになって、一個の小宇宙を成している、 個々人が流れていく時間の中で、一つの肉体を持って 生きていることの不思議、そして重み…。
折悪しく前日1時間ほどの睡眠で、本業の修羅場を抜け出して 「なんで三鷹やね〜ん?」と言いながら観劇に駆けつけました。
原作・脚本・演出・主演 今井雅之、 『The Winds of God ー零のかなたへー』 (三鷹市芸術文化センター星のホール)
どうしても、どうしてもこの舞台は観ておきたかったのです。 僕にとって特別に思い入れのある、知り尽くしたお芝居。 これほど台詞の間まで身体の中に入っている舞台作品は他にない。 NODA MAPの『キル』や、キャラメルの代表作も生やビデオで 何度も見ていますが、この「ウィンズ〜」ほどではないのです。
僕がよく知っているのは昨年上演された2000年ヴァージョン。 今回はほとんどメンバーも一緒なのですが、細かいところで ずいぶん変わっていました。 その日の役者さんのコンディションや、観客のノリで日々変化する のが舞台演劇の面白さであり、怖いところでもあります。 僕は1時間睡眠の頭で、冷静にディティールを見ていたつもりでしたが、 片時も眠くならないどころか、とてもエキサイティングな経験が 出来ました。知り抜いた作品と1年余りの時間を経て再会する、 その距離感の隔たり具合と、圧倒的な懐かしさ、愛おしさ。
はっきり言って睡眠不足で感情の琴線も緩んでいたのでしょう、 泣きのツボの遙か前のアニキとキンタが初めて空を飛ぶシーンの 今井さんの表情に一発でやられて、グズグズに泣けました(^^; あとはもう怒濤のような展開、どっぷり浸かることができました。
ひどく客観的に冷静に観てる立場なのに、いつのまにか感情の潮の うねりの直中にいる、この極端な両者の間の往還は僕の特徴かも。 シニカルで老獪でさえある中年男と、感傷的な女の子みたいな感覚の 両方が、一個の人間の中に同居している、と形容されたこともある。
…なんか幸福になりにくいタイプ、かも知れない(笑)
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