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2001年05月07日(月) 『白い巨塔』

CSのフジテレビで『白い巨塔』を放映しているそうですね。
残念ながら私は見られませんが、往年の名作ドラマであり、
そして薬害エイズ裁判や医療ミスなどが問題となっている昨今、タイムリーな企画だと思います。
できれば地上波でもやってくれないかな〜。
このドラマ、リアルタイムの放映時には見られませんでしたが、再放送時にすっかりはまってしまい、
のちに山崎豊子の原作も読みました。
原作も素晴らしいのですが、やはり特筆すべきはこのドラマの撮影終了直後に謎の散弾銃自殺を遂げたという、
田宮二郎の演技でしょう。財前教授の知的でクールで、内に秘めた野望を表現できる役者は田宮しかいない
と言っても過言ではない気がします。
1970年代に田宮は「白い滑走路」「高原へいらっしゃい」などの連続ドラマに一貫して主演していますが、
エリート、それも屈折したエリートの役はまさに適任です。
そして共演の俳優陣がまた凄い。中村伸郎、小沢栄太郎、加藤嘉、佐分利信らの名優が教授役で勢ぞろいしています。
もうこれだけ重厚な配役は実現不可能でしょう。また、財前の義父役の曾我廼家明蝶も
豪快な浪速の男というイメージがよくでているし、里見助教授役の山本学も好演です。
端役に至るまでいちいち尤もと思わせるキャスティングです。うーん、昔はこんなドラマが製作可能だったのですね。
ストーリーに目を移すと、医学には全く素人でありながら、
これだけの作品を書き上げた原作の山崎豊子の筆力の凄さには圧倒されます。
ただ、誤診裁判の部分で若干強引な部分も感じられる気がします。これは、先般の薬害エイズ裁判などで
医療サイドの責任に同情的な判決がでた事例があるからでしょうか。
それはともかく、アカデミズムの内幕物には松本清張などの著作もありますが、
医学界にこれだけ鋭く”メス”をいれた作品はほかに例を見ないでしょう。
ドラマに話を戻すと、田宮二郎はそれ以前にも山本薩夫監督による映画版で財前を演じています。
でも、この時には田宮もまだ若すぎて、少壮の助教授としてもいささか貫禄不足でした。
それに、大阪が舞台という事を意識して、台詞が全部関西弁になってるのですね。
関西の方には失礼かもしれませんが、シリアスな大学病院の話としては、何となく間の抜けた印象でした。
テレビでは昔、佐藤慶主演でドラマ化された事があるそうですが、これは見た事がありません。
また、田宮版よりずっと後で、スペシャルドラマで村上弘明が演じていますが、
やはり田宮版の印象が強烈過ぎるため、かなり違和感がありました。
そう言えば同じ田宮主演の医者物である「白い影」が先般リメイクされましたが、
まさかそれに味をしめて次は「白い巨塔」も、なんて話はないんでしょうね。
現在のちゃちな演出で安易にドラマ化して欲しくないし、まして中居正広なんかでやられた日には、
原作も田宮の名演もぶち壊しです。絶対それだけはしないで欲しいと切に祈る今日この頃?です。
                            


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