気まずい時間2 2005年02月12日(土)

中学生の頃、茶の間で父母と一緒に、シナトラが歌って有名になった曲をテーマにした『マイウェイ』という映画を観ていたときのこと。仕事と金儲けに邁進し、家庭を顧みない傲慢な父、そんな父に反発する息子たち、冷え切った夫婦、親子関係、そのばらばらになってしまった家族が、『マイウェイ』の曲をバックに、再び愛を取り戻していく感動ドラマという認識で、親子三人暢気に画面に見入っていた。すると、いよいよ長年のすれ違いやわだかまりが氷解するというその場面で、傷ついた妻が「あなたは私をもう愛していないのよ! だって、寝室を別々にしたじゃない!」と泣き叫び、突然開陳された露骨な夫婦の亀裂の原因に、親子で唖然としたものだが、さらにそれまでずっと他人に対していつも高圧的で俺様だった夫が「知られたくなかったんだ。実は、俺は……」と、自分がED(勃起不全)であることを涙ながらにうち明けるに至ると、それまでと、そして確かその後にもあった感動シーンの記憶を全て消し去るインパクトでもって、茶の間に流れた気まずさだけが、この映画の感想である。

モドル   目次   ススム
ふね屋
 My追加