日常些細事
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午前10時。出勤してきた事務のM女史に部屋を検分してもらう。 Mさんは少し前に首のヘルニヤを患い、手術をしたばかり。そのため部屋の点検はほったらかしで、もっぱら自分の病気のことに話題がいってしまう。 昨日、半日かけて掃除をしまくった私はがっかりである。 「首から背中まで一直線に切ったんよ。ほらね」 と言って後ろ向きになると、上着を捲り上げて手術の痕を見せてくれた。 首のヘルニアは下手をすると半身不随になってしまう怖い病気なので、手術がうまくいって本当によかった。 ただ手術は成功したものの、もう重いものは持てないという。持ち上げると頭にズキーンと痛みが走るのだそうだ。 「だから社員寮の管理をするのが大変で。床に落ちてるゴミを拾うのもつらいの」 私が初めてここにきたとき、玄関前には雑草がぼうぼうと茂っていた。ゴミも散乱しているし、 「なんだか荒れたところだなあ」 と暗澹たる気持ちになったものだが、こんな理由があったわけである。 Mさんに部屋の鍵を返却する。 「体に気をつけてやってくださいねー」 最後にそう言うと、私より10歳ほど年上のMさんは、少し顔を歪めながらうなずいた。
夜、倉敷に帰る。
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