小学館コミックカセットブック「エリア88」 ▼内容 昭和62年12月20日発行。 原作初期の話をいくつか使い、ナレーションと効果音を加え、1時間程度の長さにまとめたもの。 話の中心は神崎対真。サキやミッキーの出番は少ない。使われたエピソードは以下の通り。 ・第1話の下衆のボウマン ・これにサインしろ!! ・涼子との遊園地での思い出 ・死神ボリス ・並河機長にイビられる神崎 ・2万ドルあせって50万ドルの出費 ・涼子さんと軍事評論家 ・神崎とシンのニアミス ・不死鳥チャーリー ・今夜だけ私の妻になりなさい ・ふふふ、生き残ったぜ 生きて日本に帰ってやる!<完> ▼感想 古臭い。音源がカセットということもあるけど、昭和62年という年代が与える以上に古臭い印象を受ける。 その古さも、レトロとかクラシックとかトラッドとかスタンダードいう古さではなく、流行遅れというか田舎臭いというか垢抜けないというか、そちらの古さである。 これは意図的にその時代を再現しようとわざと昔風に演出しているのではなく、単純に作っている人の技術とセンスが単古かっただけのような気がする。 62年ってそんなに古臭さかったけ?もっとダサくてオサレだったような気がするんだけど。みんなもっとオサレに張り切っていた時代だったような記憶があるのが、それは私の気のせいか? 流行の最先端を走っているものは、時が経つと、古臭くて気恥ずかしいものだけれど、さらに時が進むと逆に新しくなってしまうのは世の常で、これは、そんな流行から外れたっぽさが漂うカセットである。 何がそんなに古臭いんだろ?ナレーションのせい? 阪脩のナレーションが、むかーしのNHKの少年ドラマやラジオドラマみたいなしゃべりで、音源がカセットなのも手伝って、なんだかとっても昔風。音響も感性もどうも感覚が時代遅れで、思わず笑いがこみあげてくる。もしかしたらこれ、発売当時聞いても古かったんじゃないだろうか。だってパリの飛行学校の教官が、ハーイ、カンザキとカザマ、トッテモユウシュウネ、モウオシエルコト、アリマッセーンという思いっきりカタコトしゃべりガイジンなんだもん。そんなやつ新谷漫画にいねーよ。新谷漫画は多国籍で、有色人種もあたりまえのように普通に登場しているってのにさ。 ま、ナレーションが新谷節や新谷ポエムとは無縁なので、制作者側で、新谷美学を再現しようという意識はもともとなかったんでしょうな。ドラマ部分は原作の台詞をそのままもってきているんだけど、音声のみという媒体上、状況説明を加えなきゃならないところは、ナレーションの解説がそれに加わっているのだが、これが、新谷の台詞回しとは全然異なる台本のト書きみたいななんで、ちぐはぐでしっくりこないことこの上ない。なまじドラマ部分が漫画そのままなので、ナレーションが登場するたびに、雰囲気ぶち壊しで、流れをぶった切ってくれて、笑わせてくれた。 雰囲気重視で、作っている側が自分に自分で酔っ払っているオナニードラマも恥ずかしいけど、垢抜けなくて、オサレ心を理解してくれないドラマも、ちょっと恥ずかしいかもネ。生徒が色気づいてお洒落にいきたいのだけれど、先生が古い感性のまんまで授業を押し進めている感じで、なんか62年当時の自分ことを思いだして、おかしく笑ってしまった。 あと、空戦は音だけで表現するのはやっぱ難しいんだなと思った。状況を説明するために、台詞が説明口調になってしまって、場のリズムが崩れてしまっている。視覚から得る情報の重要性をあらためて再認識した。 ▼昭和62年 昭和62年といっても、すぐにピンとこないので、当時の少年誌の連載漫画を調べてみた。こんな時代だったということを思い出す手がかりにでもしてみてつかあさい。 ◇週刊少年ジャンプ新年1・2合併号 ジョジョの奇妙な冒険(荒木飛呂彦) ドラゴンボール(鳥山明) 北斗の拳(原作:武論尊/漫画:原哲夫) キャプテン翼(高橋陽一) 聖闘士星矢(車田正美) キン肉マン(ゆでたまご) こちら葛飾区亀有公園前派出所(秋本治) ハイスクール!奇面組(新沢基栄) シティ・ハンター(北条司) ついでにとんちんかん(えんどコイチ) ◇週刊少年マガジン 第1・2号(1月1・4日号) 名探偵Mr.カタギリ(宇野比呂士) ミスター味っ子(寺沢大介) あした天気になあれ(ちばてつや) バリバリ伝説(しげの秀一) コータローまかりとおる!(蛭田達也) くらくらのパラダイス(中西やすひろ) ゲゲゲの鬼太郎(水木しげる) あいつとララバイ(楠みちはる) ぱろぱろプロ野球ニュース(おおのたいじ) バツ&テリー(大島やすいち) ◇週刊少年サンデー1・2号(1月1・4日号) 'mナム(細野不二彦) B・B(石渡治) はっぴぃ直前(克・亜樹) うる星やつら(高橋留美子) 闘翔ボーイ(竜崎遼児) ちょっとヨロシク!(吉田聡) スプリンター(小山ゆう) TO-Y(上條淳士) 究極超人あ〜る(ゆうきまさみ) 陸軍中野予備校(安永航一郎) 天地無用(原作:やまさき十三/漫画:岡村賢二) ジャスト・ミート(原秀則) ▼塩沢兼人/シン あるサイトさんで塩沢キャラの人気投票をやっていて、全部で50000票以上投票されて、200人ぐらいのキャラの名前があがっている中で、風間真が、9番目にランキングされていて、こういっちゃあなんだけど、意外に意外で驚いた。風間真って塩沢キャラの中でそんなにメジャーだとは思っていなかったので。思いほか知られていてオドロキ。別にテレビシリーズというわけでもないし、長々とシリーズ化された長編アニメでもないし、にもかかわらず、支持する人が多くて、なんか意外。でもちょっと嬉しいかも。 このカセットも唯一塩沢さんだけが、OVAと同じキャストなんだけど、世間的には、塩沢兼人=シンのイメージなんだろうか。たまに塩沢さんはシンよりサキほうがいいんじゃないかという意見を聞くけど、私もそっちかな。塩沢兼人=風間真のイメージそんなにないや。やはり塩沢さんは変態臭い役、ヘンな人の役ををやってもらいたいと思うので。エリ8だったらエラーですかね。え? でも、このカセットは耳が塩沢シンに慣れたせいか、すんなり楽しめた。それに、OVAより若干、若干だけど、明るいかな。OVAほど陰惨な感じはしない。快活として受け答えているし、ハキハキしているし、怒鳴るときはキィキィ声をあげて叫んでいる。OVAと同じ台詞もたくさん出てくるが、こちらのほうが、声に潤いがあってなんかイイ。張りがあるというか、感度がいいというか、キレがいいというか。OVAはちと暗すぎだもんね。OVAはシンの苦悩がメインになった作りなので、それを前面に押し出して、暗くならざるをえないんだろうけど、私はこのぐらいほうがいいな。打てば響く反応のよさがシン・カザマっぽいし、透明感があるところもいい。私はこっちのほうが好み。 (OVAは最初に見たとき、暗くて驚いた。) まあ、OVAはOVAで、3本目あたりから謙虚になってくる低くささやくような「心も乾くエリア88・・・」(←塩沢声で読め)という台詞に代表されるあの独特の物憂げなしゃべり方も、いかにも塩沢兼人らしくて、好きではありますが。あのOVA、3本目に入ると、塩沢さん、1本目や2本目としゃべり方変わってきていますね。3本目に入るとご自分のキャラとしてつかんだようで、塩沢カラーに染まった塩沢シンになってきていておもしろいです。1本目はまだ、塩沢キャラに染まっていなくて、普通に普通のキャラクターなんですが、3本目に入ると、カン所を心得たのか塩沢兼人のエキスが滲み出た人物に変形していって、塩沢キャラ化して、しまうところがおもしろい。 3本目の物憂げで苦渋に満ちた塩沢シンは、あれはあれで私も好き。あのヤバ気で不敵な微笑みがたまらん。ちょっと正常から離れてきた人物を演じるのは、声優・塩沢兼人の十八番といった感じで、やはり巧いですね。妖しい変態美形をやらせたら日本一ではないかと。3本目のOVA『燃える蜃気楼』は絵も綺麗だし、ストーリーもまとまっているし、私も3本目はお気に入りです。 私はラジオドラマとか、カセットブックの類が好きなので、できはさておき、聞いていて楽しいカセットではあったよ。
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