中1のアキラくんは、髪を切る度に失敗している。
ことの始まりは小5の頃だった。 夏休み中、海や山で真っ黒に日焼けした彼が久しぶりに通塾したところ、なんとも言いがたいレトロな麦藁帽子をかぶってきたのだった。 そう、昔田んぼでカカシがかぶっていたような麦藁帽子。 今では農作業のおばさんもなかなかかぶらないような麦藁帽子。 教室に入っても帽子を取らないので注意をしながら帽子を無理矢理取らせてみると、アキラくんの髪の毛は虎刈りになっていたのだ。 この前まではサラサラの男の子にしてはちょっと長めの髪の毛で、顔立ちだけは良い(性格は悪い)アキラくんにとても似合っていたのに。 その上その虎刈りは、床屋さんで故意にやってもらったワケではなく、言うことをきかないアキラくんが、お母さんとお父さんに羽交い絞めにされて刈られた失敗作だったのだ。
それからと言うもの、言うことをきかないと頭を刈られていた小学生時代のアキラくんは、その度に先生達から「失敗作」と言われていた。
そんなアキラくんが中学生になり部活動に入ると、坊主頭を余儀なくされた為こまめに頭を刈るようになり、その度にワタシに羽交い絞めにされ愛されているワケなのだが、今度は床屋さんで刈って貰っているのにどうにもこうにも坊主頭がおかしい。 後ろ毛が少しだけ残っていたり、中途半端な長さの坊主だったり、もっと潔く青くなるまで刈って貰えば良いものの、無駄に抵抗しているのか、それとも根本的に頭の形が可愛くないのが要因なのか、なんとも言いがたい坊主なのだ。 そして、その度に今度は部活の先輩である2年生や3年生から「失敗作」と言われているのだ。
そんなアキラくんに、「キル田さん、それ間違いなく失敗作だべ、オイラの帽子貸そうか?」と言われたワタシの切り立ての髪は、今激しく凄いことになっている。
麦藁帽子を被って静かに生きていたい、、、、。
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