武ニュースDiary


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目次前の記事新しい日記


2007年01月17日(水) South China Morning Post紙の記事(香港)

South China Morning Postという香港の英字紙に、
クリスマスの頃、金城武の記事があったと、
レインボーママさんに教えていただき、
サイトで記事をいくつか読むことができました。
レインボーママさんが教えてくださった長めの記事が、
香港映画と武という視点が入っていて面白かったので、
訳してみました。
写真も素敵です(レインボーママさんから拝借)。


   

King of pain

酒に溺れる探偵という悲劇の役が、
金城武から力強い演技を引き出した


多くの人は、これは悪くない問題だと思うだろうが、
最新作の撮影現場で酒を飲んでいいと言われたとき、
金城武はちょっと心配になったという。

「セットに行ったらすぐ、飲み始める――メイクもしないうちに」
と、「傷城」でのことを、彼はこう話す。
禁酒主義者では全然ない(と、この俳優は認める)けれど、
それでも限度を超えていたようだ。
監督のアンドリュー・ラウとアラン・マックから、
ほめられたり、もっと飲むように促されたりしながら、
いくつかのシーンを酔っ払って演技したことを彼は思い出す。

「あの人たちはいつもぼくに飲めるかどうかと聞いていました」
33歳の男は言う。
「そしてこう言うんです、『大丈夫なら、もっと飲んで』。
ぼくが飲めないことをすごく心配していました」

これは金城の仕事中の話である。
彼は、恋人の死を受け入れようともがき、酒に溺れる私立探偵を演じている。
この悲しい出来事のせいで、この男は
将来を約束された警官の仕事を棒に振るのである。

「酒を飲むことは、この役の最大のチャレンジでした」
と、台北生まれの日中ハーフの俳優は語る。
「酔っぱらいを説得力を持って演じるのは大変です
――それがいつも酒びたりの人間となると、もっと難しい。
他の映画だったら、もっと嘘っぽくなったでしょうが、この映画は違いました。
深い悲しみと喪失を描くものだったからです。
理解してもらえるような演技ができるかどうか、不安でしたね」

金城が気に病む必要はなかった――
一風変わった人間役は、明らかに彼の得手だからだ。
ひょっとして、彼のピンナップボーイとしてのルックス、
あるいはなまりの強い広東語のためなのだろうか、
監督達は金城を、衝動的で純真で混沌とした人間として描きたがる。
ウォン・カーウァイなら、そのわけを十分答えてくれるだろう。
金城を「恋する惑星」でも「天使の涙」でも、期限切れのパイナップル缶を食べたり、
アイスクリーム販売車を乗っ取るシーンが印象的な、
変わり者役に使っているのだから。

かつて、金城は、(少なくとも香港では)ぼうっとした変人を当たり役とし、
一風変わった、どうしようもなくロマンティックな役を生き生きと演じて
ヒットを飛ばすスターだった。
その情熱をセンティメンタルな空想小説に紡ぎ出す、
「アンナ・マデリーナ」のシャイな、眼鏡をかけたピアノ調律師。
あるいはまた、靴をコレクションしながら地上で暮らす、「ラベンダー」の堕天使。

酔っ払うことはさておいて、「傷城」での金城の役は、
彼がここ数年、香港以外で演じてきた役に近い。
香港以外の監督と仕事をするときは、夢見がちな青年役に縛られない。
日本では、エイズになった恋人の面倒をみる気難しいミュージシャン役
(連続テレビドラマ「神様、もう少しだけ」)や、
銃を使いこなす超クールな殺し屋(2000年の「リターナー」)役の方が有名だ。
そして、もちろん、「LOVERS」の剣の達人がある。

香港では、この地で仕事するようになった当初から、
あるジャンルに固定されてしまっていることを、金城はよく承知している。
「役選びのはっきりした基準はないんです」
と彼は言う。
「やってみたいジャンルはいろいろあります――例えばコメディーとか。
アクション映画は……それもいいと思うけれど、そのジャンルのことをよく知らない。
恋愛ドラマもそう。
もし、役選びでぼくが気をつけるところがあるとすれば、
その役がきちんと作られているかどうか、
あるいは物語の背景にメッセージがあるかどうかです」

おそらくそれが、なぜここ数年、
香港映画への出演が減っていたかの説明になるだろう。
東京に長期滞在し、家族のいる台北にちょくちょく帰りながら、
金城は2000年以降、香港の監督とは4作品しか仕事をしていない。
1990年代には16本もの映画に出ていたのにだ。

「そう変えたのはぼくじゃなくて」と彼は言う。
「環境が変えたんだと思います。
香港の映画産業がどん底になり、製作本数が激減したのが1997年頃。
その結果、良質の作品の製作本数も減りました。
オファーはあったけど、いい脚本は少なかった」

だが、金城の香港における運勢は、今、再び上向きになりつつある
――そしてもっと多様な仕事をしたいという彼の願いは、
少しずつ実を結び始めている。

「傷城」のプレミアのため香港に現れた金城の姿は印象的だった。
黒ずくめの服に、もじゃもじゃのヒゲが目立っていた。
張徹のマーシャルアーツの名作「ブラッド・ブラザーズ」を
ピーター・チャンがリメイクする「刺馬」の、粗野な山賊役のためである。

オリジナル版と同様、「刺馬」も、
金城と劇中の兄弟役ジェット・リー、アンディ・ラウの間の、
目を引くアクションシーンを中心に展開する。
この3人が仇敵同士になるからだ。

金城は「LOVERS」よりさらに上手にアクションをこなすことを期待されており、
それは彼にとっても楽しみな挑戦である。
「いつも言われてましたよ、
こういうアクション映画はうまくやれないだろうってことを、
こんなふうに……『ああ、君は恋愛物がすごくあっている』ってね」
と彼は言った。
「だから、これができたらすごく気持ちがいいでしょうね。
うまくやれるかどうか心配もあったけれど
――でも、それは期待が交じった不安です。
できると証明できればそれも素晴らしいし、
またぼくのキャリアを新しい方向へ進めてくれると思う」

スクリーンから離れた彼は、「刺馬」の役とは全然違う。
ショウビジネスの世界に入る前、ファッション誌の清純なポスターモデルの彼は、
テレビコマーシャルの常連だったとき、
エージェントが十代のアイドルにするため、学校をやめることになった。

近年、彼が移動するときは、相当数の側近達
――マネジャー&アシスタント軍団と我々はよく言う――
に付き添われているが、東京での生活はもっとシンプルだ。

東京では制限が少なくてすむと、彼は言う。
今年、香港に「傷城」撮影のため滞在していた金城は、
出演者からもスタッフからも、町をうろつかないよう忠告を受けていた。

「東京はもっと暮らしやすい。
多分、パパラッチが大勢うろうろしていないからだと思います。
東京で売られてるタブロイド紙はせいぜい1、2紙だけど、
台湾や香港では町中にあふれています」

しかし、彼は香港のゴシップ雑誌からも、何とかうまく身をかわしてきた。
そして彼が公にしてもいいと言った個人情報は、
家族の背景のことがちょっぴり――父親はアメリカに、
母親は台北に住んでいるということだけだった。
プライバシーを守り通すことには、2つの影響がある。
恋愛や日常生活のゴシップが少ないため、
オフではなく、スクリーンで何をしたかによって判断してもらえることが1つ。
反面、このような露出度の低さは、
移り気な観客から忘れられる危険を冒すことでもある。

金城はあまり心配していない。
どっちみち、と彼は言う、賞を獲るような俳優になろうと始めたのではないのだ。
「本当に最初の頃は、職業だとも思っていませんでした」
テレビCMに出ていた、そしてポップスターだった時代を思い起こしながら、
彼は話す。
「勤めに行くという気持ちでしたね。
自分のすることについて深く考えたりしなかった。
CDを出すたびに、どうしてあんなに大勢の人が
自分に熱中するのかなんてことは、特に」

自分がやれることについて、彼の見方を変えたのはウォンだった。
「彼は映画を作る面白さと、映画が芸術作品でもあることを教えてくれた」
と金城は振り返る。

「彼が与えてくれる空間はとてつもなく大きいんです。
現場に行ったら脚本がなかったりとか、
ある日やったことが、次の日には全然違ってしまっている、というように」

「恋する惑星」と「天使の涙」で金城は開眼し、
それが後の、ケリー・チャンとコンビのシティロマンス・コメディーから、
「LOVERS」や「傷城」のような大ヒット作品まで、
映画のどんな厳しい要求に直面しても、彼を支え続けた。

人生と、そこから得るものについて質問されたとき、
幅を持たせた表現をするのは、きっとウォンがお手本に違いない。

はっきりした目標があるかどうか、達成できたのは何かという質問に、
彼は言葉をぼかす。
「この道を歩んできて、失ったものは何ひとつありません。
歩んできたことがそのまま経験に、
運命が決めた何かになっていると思います」

トライリンガルであることが、中国人俳優にとって夢でしかない国際進出を
人に先駆けて実現させたのだろうかと尋ねられても
――金城は英語を話し、アメリカのインディペンデント映画で
ミラ・ソルヴィーノ、ジェフリー・ライトと共演している――
答えはやはりひどくあいまいだ。
「少しだけ有利だった、多分」
と、彼は広東語で答える。

「言葉はどれも完璧じゃない」
と、北京語で彼は言う。

映画の仕事が終わるたび、彼がさっと姿を消すところを見ると、
さすらい者であることには、いいことがあるのかも知れないと思う。
(Clarence Tusai文/South China Morning Post 2006.12.24)


活動の地域によって、俳優としてのイメージが違うということは、
「リターナー」の頃、「キネマ旬報」に松岡環が書いていたのですが、
それと共通するものが香港の記事で読めたのがとても
面白かったです。

あ、ところで、今日、「傷城」の大陸版DVDが届きました。
怖いところを手で隠しながら、全部見てしまい、
トニーのところでも、武のところでも、それぞれ涙がにじみました。
そして、香港映画は広東語の方がいいのはもちろんだけど、
北京語を話してくれると字幕も読みやすく、
はるかにわかりいい、逆に言うと、台北の広東語版は
しんどかったなあと今更ながら……(^^;



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