武ニュースDiary


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2004年01月24日(土) 「不夜城」評もう1つ

もう1つ、「不夜城」に関する文章を。
1998年に出た香港の映画雑誌のレビューから。
「不夜城」は、私が初めて映画館で見た武映画。
この映画の造りこまれ方、熱が好きです。

「不夜城」の宣伝がバンバン流れていた頃、
彼を30歳ぐらいだと思ってました。
その少し前(1年前だったですが)の記憶の「Misty」の印象との
あまりの違いに、いつのまに年をとってしまったのだろう、
あの若い顔は一体何年前だったんだろう……と、ひどく混乱した記憶があります。
映画を見るときには、もう実年齢は知っていたわけですが、
全然違和感ありませんでしたね。
ほんのちょっとしたしぐさ、身のこなし、表情、物の言い方、
すべて自然で、若い二枚目の俳優が初めてこうした役をやるときの、
頑張っている感じが微塵もないのに驚嘆しました。
それと、哀しみや悔しさや、感情の動きを表すときの、
少しも「記号」になっていない、奥深い表情にも。

それ以来(ビデオでの「世界の涯てに」の役柄本人としか思えない演技もですが)
俳優・金城武に、私は深い尊敬を抱いていて、
「不夜城」での少し変な日本語のアクセントを
〝棒読み〟と表現した雑誌記事を読んだときは、本当にびっくりしたものです。

「不夜城」

香港映画は故国を追われて外国に生きる中国人ものを、ことのほか好んで扱う。
一種の執着にまで達していると言ってもいいくらいである。
リー・チーガイ監督の「不夜城」は、近年珍しい物悲しさを覚えさせる作品だ。

映画は、日本で抜き差しならぬ状況の中国人たちを――
中でも、台湾マフィア、北京マフィア、上海マフィアの3つが対抗して
東京の歌舞伎町で勢力争いを繰り広げる様を描き出し、
「中国人同士が闘う」皮肉な味わいに満ちている。
映画の初めに、金城武が警察の不審尋問を受け、
彼の身分が日本人でも中国人でもないという、
まさに作品中の象徴的人物である事実が語られる。

彼ら在日の中国人たちは、飲茶をし、祭日を祝い、
中国式の生活を、他になすべくなく送っているものの、
もはや中国に帰ろうという熱い思いも衝動もなく、
海外移民の内心の思いが表現される。

金城武と山本未来の役は、1つの対比をなしている。
前者は生きることに投げやりで、何事によらず、気まかせ、
少々愚鈍にさえ見え、敵味方も峻別しない。
後者は1つ1つ意図を持って行動し、
細心に計画しながら事を進め、仲間さえ裏切り、生命力が強く、
にもかかわらず最後は非業の死をとげる、
まさに「せいては事を仕損じる」タイプである。

他の「女が男をだます」映画と同じように、
金城武と山本未来の出会いは「偶然」だ。
映画では、彼が、もし好奇心を起こして彼女の部屋に入ったり、
トランクを開けたりさえしなければ、
それ以後のことは何も起こらなかったかもしれない、と
絶えずフラッシュバックする。
だが、実はすべては早くからしくまれていたのであり、
悪女は、どうやって男の同情と憐憫をとりつけるチャンスをつかむか、
よく承知していたし(もちろん、男の最大の弱点は好色だ)、
潔白を証明するためには、命さえ賭けようとした。
男が何をしようと、
彼女がいったんこうと決めた目的を変えさせることはできないのだ。

もちろん、この映画の重点は、巧妙なストーリー展開にあるのではない。
「不夜城」の中の人物関係が複雑すぎるとか、
プロットが「ああ、こういうことだったのか!」と
膝を打たせるようなものでないと批評することだって可能だ。
しかしながら、映画が我々に伝えてくる最大のものは、こういうことだ
――人はもって生まれた条件の元で、
たとえそれぞれどんなやり方で立ち向かおうとも
(金城武のように成り行き任せであろうと、
山本未来のごとく手段を選ばず、全力で闘おうと)、
結局は宿命を逃れられない――。

人生に生まれ備わった鬱積は、決して解くことができぬものなのだ。
劇中の登場人物たちは、いつも六合彩を買う話をしているが、
だが、これら、落ちぶれてどん底まで流れ着いた人々に
安住の場と幸福をつかませるものは、六合彩には決してなく、
でなければ(山本のように)金を略奪するしかない。

「在日中国人」映画、「不夜城」は、日本人の原作で、日本の資金を使い、
しかし香港と中国の監督・俳優・カメラマンたちを用いて製作された。
映画の製作状況が映画の内容に融け込んでいるのがえも言われない。
(1998 鐘怡泰・文)


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