Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?|それまで|これから
2004年12月29日(水) |
年忘れ特別企画・私家版コメディアン採点表 |
随分前から、コメディアンの魅力をデジタル的に数値化して、その面白さを解析したいと考えていた。そんなことをして何の得になるんだ、と訝しがる向きも多いとは思うが、これは結局自分語りの一種なのである。自分が興味のある芸人について思索することは、ひいては自分を知ることにもつながるからだ。ただ、この作業は非常に疲労する上に、全コメディアンの全ての芸能活動を追えない以上、どうしても主観的にならざるを得ず、個人的なお遊びならまだしも、公の場にその実際を明かすことは、はなはだ無理があり、愚行と言っても良いだろう。そう思いながらも今回あえて書きあげてしまったのは、日記存続のため、そして”茹だるような”最近のお笑いブームに対して私なりのささやかな抵抗を試みたいと思う気持ちがあるからだ。この現象は大衆が望んでいるものだから文句を言っても仕方がないのだが、ひとつだけ注意してほしいのは、”才能もない芸人を持ち上げることは、その芸人に対して失礼である”ということだ。一過性のブームでは、その芸人の人生設計が崩れてしまうからである。どうか、自らのファッションとして芸人を好きになることは止めてほしい。本当に、心からそう思う。
閑話休題。採点の具体について記す。 まずは項目の意味合いを順に説明しておこう。
【体技】どれだけ気持ちよく動くことができるか、ということ【表現力】喜怒哀楽などを的確に表現できるかどうか。主に俳優活動などに必要。【コミカル性】パッと見ただけで理屈抜きに笑える存在であるか【喋り】トークの技術【創造力】独自の発想や革新性を持っているか【スター性】テレビを通して見る存在として妥当かどうか【伸びしろ】将来性【政治力】芸能界を渡っていく上でどれだけ地盤が固まっているか【人気を含む実績】その芸人がそれまでにやってきたこと【即興性】アドリブが効くのか 一項目につき、それぞれ10点満点で採点する。合計点を算出することも考えたが、そんなことには全く意味がないのでやめた。この採点表は相対評価ではなく、絶対評価なのである。従ってA氏とB氏の合計点数が同じでも、その意味合いが変わってくることは大いに有り得る。筆者としてはこの採点表で芸人同士を比較することではなく、むしろ、各芸人の中での点数の差のつけ方に注目してほしいと思う。この企画を通して、読者の皆さんがお笑い界の曖昧模糊たる風景の中に一本の道筋を見つける手助けとなれば幸いである。
岡村隆史 体技9 表現力9 コミカル性10 喋り6 創造力4 スター性10 伸びしろ7 政治力6 人気を含む実績9 即興性6 寸評:メリハリの利いた体技をベースに、エノケンとは別ベクトルの”動きの面白さ”を追求。153cmという身長は、大きなものでも小さく写すテレビの特性に対して最も効率の良い武器と言える。戦略次第で、まだまだ伸びる可能性もある。
松本人志 体技6 表現力6 コミカル性6 喋り9 創造力10 スター性6 伸びしろ6 政治力6 人気を含む実績10 即興性10 寸評:良い意味・悪い意味を含めて、現在のお笑い界の基盤を作った人。「笑いの求道者」と評されがちだが、実際はもっと自由な発想の持ち主ではないかと思う。本質的にテレビ向きではなく、その才能は、専ら漫才で発揮された感がある。
石橋貴明 体技7 表現力8 コミカル性7 喋り8 創造力7 スター性10 伸びしろ4 政治力8 人気を含む実績10 即興性9 寸評:80年代までにつくられたお笑い界を破壊するために出てきた男。いわゆる”テレビっ子芸人”の第一号であるが、雰囲気があり、芝居も上手いので、色々なところで潰しが効いた。バブル時代の芸人の代表選手と言えよう。
木梨 憲武 体技9 表現力9 コミカル性9 喋り5 創造力7 スター性10 伸びしろ5 政治力6 人気を含む実績10 即興性6 寸評:同じく”テレビっ子芸人”の元祖。とんねるずの”いい人”を担当して、石橋とのバランスを保っている。アドリブはあまり利かないが、コントの表現力は抜群。先日の「相田みつを」のように、苦味の効いた芝居もできるようになってきた。
渥美清 体技8 表現力10 コミカル性8 喋り10 創造力8 スター性9 伸びしろ― 政治力7 人気を含む実績10 即興性9 寸評:喋りの流暢さたるや、比肩する者が他にいないほどの素晴らしさで、たまに見せるドタバタも秀逸を極める。近代的な垢抜けた雰囲気と、田舎めいた土くさい香りが混在するところが魅力の、いわば「日本人」の象徴が彼なのである。
萩本欽一 体技10 表現力8 コミカル性7 喋り8 創造力9 スター性8 伸びしろ2 政治力8 人気を含む実績10 即興性9 寸評:驚異的な動きの面白さと、独自の発想方法を併せ持つ稀有なコメディアン。若い時はコント55号として、また中堅に入ってからは欽ちゃん劇団をまとめあげて、芸能界に君臨した。ディレクター的才能を持っており、審美眼にも優れた。
植木等 体技8 表現力9 コミカル性8 喋り7 創造力7 スター性10 伸びしろ1 政治力6 人気を含む実績10 即興性8 寸評:スーッと抜けるような洒落た体技が持ち味で、こけ方までカッコ良い。無責任男と呼ばれる所以は、その肩の力を抜いた魅力から来るものだろう。彼が所属したクレージーキャッツは戦後のコミックバンドの最高峰である。
加藤茶 体技7 表現力9 コミカル性9 喋り2 創造力5 スター性9 伸びしろ2 政治力5 人気を含む実績10 即興性6 寸評:ひとつひとつの動作が、全てコント役者としての可笑しさに溢れている。中々の甘いマスクで愛嬌があり、持ち歌でもセンターを担当、志村けんが入るまではドリフの実質上のエースだったと言えるだろう。
志村けん 体技7 表現力8 コミカル性8 喋り6 創造力7 スター性9 伸びしろ4 政治力6 人気を含む実績10 即興性7 寸評:ある意味でドリフを変えた男。楽器が不得手で、歌もあまり上手くない。だが、無理やりにでも笑わせるテクニックは一級品で、いかりやと対立しながらも独自の笑いの方法論を作り上げた。加藤茶よりややマニアックな性質の持ち主。
青島幸男 体技4 表現力8 コミカル性6 喋り8 創造力10 スター性10 伸びしろ2 政治力9 人気を含む実績10 即興性8 寸評:「青島だぁ」から東京都知事までの大躍進を一代で成し得た才人。喜劇の演者としても「意地悪ばあさん」のように当たり役を持つ。この人は生き方そのものがケレン味に溢れていると言えるだろう。
今田耕司 体技6 表現力7 コミカル性6 喋り9 創造力7 スター性7 伸びしろ6 政治力6 人気を含む実績8 即興性9 寸評:誰とでも、またどんな時でも、広く水準以上の実力を出せる器用さは貴重。世代的にも丁度すき間を縫うような位置に存在し、先輩と後輩との潤滑油を務めることが多い。スター性はないが、マニアックな面白さがある。
東野幸治 体技6 表現力6 コミカル性6 喋り9 創造力7 スター性7 伸びしろ8 政治力7 人気を含む実績7 即興性8 寸評:今田と同じく、基本的に誰とでも仕事ができる。一見オールラウンダ―のようだが、真の魅力は追いつめられた時に最大限に発揮される暴発である。そういう意味では鶴瓶タイプの芸人だと言えるだろう。
明石家さんま 体技5 表現力7 コミカル性6 喋り7 創造力5 スター性9 伸びしろ5 政治力8 人気を含む実績10 即興性8 寸評:とにかくさんまは元気である。あの喋りの勢いなど、まもなく50歳を迎えるというのに、20代のころとまるで変わらない体力と精神力で仕事をし続けている。これは驚異的なことだが、だからどうしたと私は思うのである。
所ジョージ 体技4 表現力6 コミカル性6 喋り8 創造力7 スター性8 伸びしろ4 政治力7 人気を含む実績8 即興性8 寸評:現在の姿からは想像し難いが、デビュー当時は”マシンガンのような”早口トークを売りにした、ラジオの名パーソナリティであった。総じて頭の回転が速く、クイズ番組の名回答者としても人気を博す。風貌にも、ある種サマになる部分があったのでできれば俳優路線に進んでほしかった。
ビートたけし 体技6 表現力8 コミカル性6 喋り10 創造力10 スター性9 伸びしろ4 政治力8 人気を含む実績10 即興性9 寸評:”狂気”と評される彼の鋭くキレた魅力はやはり既存の芸人とは一線を画す。お笑い芸人としてトウがたってからは映画監督に鮮やかに転身して、常に話題の中心に存在するのは周知の通りである。漫才を、売れるための手段として使った芸人第一号としても、歴史に名を残すことになるだろう。
タモリ 体技3 表現力6 コミカル性5 喋り8 創造力6 スター性8 伸びしろ4 政治力8 人気を含む実績8 即興性10 寸評:そのイカサマ師のような存在は他のコメディアンの追随を許さぬものがあり、常に下のもの、低いものを目指す、アングラ的志向を持った芸人である。「笑っていいとも」や「ミュージックステーション」に出ながら、「タモリ倶楽部」で本質を見せるという、高度な自虐ネタを披露している。
島田紳助 体技4 表現力7 コミカル性5 喋り10 創造力8 スター性9 伸びしろ3 政治力10 人気を含む実績9 即興性10 寸評:喋りの巧さではたけしに匹敵する。創造的な才能もあるので、本気になれば関西の芸能界を牛耳るぐらいの勢力を作ることができるだろう。現在謹慎中だが、やっと復帰のめどがたった。本当に喜ばしいことである。
太田光 体技7 表現力7 コミカル性7 喋り9 創造力9 スター性7 伸びしろ6 政治力4 人気を含む実績7 即興性8 寸評:”賑やかし”や”盛り上げ屋”ばかりになってしまった芸能界に颯爽と登場した本格派芸人。基本的なことが全て出来るし、何よりあの風貌が良い。同時に言葉のセンスに優れていて、自由自在にヴァーバル・ギャグを繰り出すことが出来る。
橋本繁久
|