Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?|それまで|これから
2001年11月15日(木) |
極めて真実で、限りなく暗い話 |
この日記を書くのも1ヶ月ぶりだ。いや、取り立てて書きたい話があるわけじゃあないんだけどなにせ1ヶ月も更新していないといつの間にかこのサイトが消滅してしまいそうなので・・・・う〜んなにについて書こうかなあ ○ 以前読んで大変衝撃を受けた本に藤子不二雄の「異色短編集」というものがある。藤子不二雄といえば「ドラえもん」に代表されるように明るくて、前向きで、ほのぼのとした作風を得意とする漫画家だと認識していた。ところがこの本を読んだとき私が藤子不二雄氏に対して抱いていたイメージは酷く変わってしまった。氏の本質は「暗」であり「果てしない絶望」である、という事実に私はただただ驚いていたのをを覚えている。
例えば「箱舟はいっぱい」という作品。極限状態に陥ったときの人間の弱さ、脆さ。自責の念に駆られながらも結局「箱舟」へと赴く人々。ラスト、主人公たち一行が言う「風が強くなってきましたなあ」のセリフは本当に恐い。これから起こる運命も知らずに・・・救いようのない怖さ。
あるいは「ノスタル爺」。過去の悔いを正しに、あるいは清算しようとする主人公。しかしその行動はどこか屈折している、いや完全に屈折している。それで、それで本当にいいのか主人公よ。
そして私が読んでもっとも救われない気持ちになった「どことなくなんとなく」。もし自分が生きている世界が自分の妄想でしかなかったとしたら?そしてその事に気付いてしまったら?最後にその事に気づいた主人公は幸せなのか?所詮この世は知らぬが仏なのか・・・背筋は凍り、肝が冷える話だ。一読しただけではこの話の意味が解らないかもしれないが、いったん「解ってしまった」あとの恐怖感はホラー映画の比ではない。人間が根本的に抱いている不安、恐怖に対する思いを真っ向から描いた作品といえるだろう。これぞダークファンタジーの極致。
繰り返し述べるがこれらの作品群に共通して流れる主旋律は人間の弱さ、脆さ、あやうさである。どうしようもない絶望感、はかなさがとうとうと語られる。目を背けたくなるような内容だが本当のことを包み隠さず話している点で単なる恐怖感を煽るだけの「世にも奇妙な物語」とは一線を画している。「ウルトラQ」と双璧を成すエスプリ・ストーリーと私は認識している。極めて真実で限りなく暗い話である。
とは言え、この本を読んだからといって無闇に絶望感に陥る必要はない。一連のこの話はあくまで一元的であって全てではない。藤子不二雄本人だってそう考えてはいないだろう。だからこそ「ドラえもん」のような朗らかで性善説的な話を作る事ができるのだ(私はドラえもんが大好きである)。大事なのはそういった人間のマイナス部分があることを認めてその上でプラスもマイナスも内包しつつ生きていくべきという事ではないだろうか。 そして私はと言うと、基本的にはネガティブ思考でありながらおおざっぱでいい加減なところもあるので割合バランスを保てている方である(笑)。
橋本繁久
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