『日々の映像』

2010年05月22日(土) 異様な国家の異様な行動である


韓国艦沈没 北朝鮮、周到準備か
毎日新聞 2010年5月21日
社説:北朝鮮魚雷 共同対応で制裁措置を
毎日新聞 2010年5月21
社説:韓国艦撃沈―北朝鮮に断固たる外交を
                  2010年5月21日  朝日新聞

 韓国の軍・民間と米英両国などが参加する合同調査団によって「北朝鮮の潜水艦艇から発射された北朝鮮製魚雷の爆発」と断定された。調査団は魚雷のスクリューなど残骸(ざんがい)を公表した。この問題はテレビニュースでも大きく報道されていた。

 どう理解すればよいのか見当がつかないので、報道と社説の引用に留めたい。
ともかく、異様な国家の異様な行動というしかない。


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韓国艦沈没 北朝鮮、周到準備か
毎日新聞 2010年5月21日
 韓国海軍の哨戒艦「天安(チョンアン)」の沈没原因が20日、韓国の軍・民間と米英両国などが参加する合同調査団によって「北朝鮮の潜水艦艇から発射された北朝鮮製魚雷の爆発」と断定された。現場は、韓国側が海上の南北境界線とする北方限界線(NLL)の南側水域だが、北朝鮮はNLL自体を認めていないという境界水域だ。最前線で活動する韓国艦を襲った悲劇は、どうやって起きたのか。攻撃を事前に察知して防止することはできなかったのだろうか−−。【ソウル西脇真一、外信部・隅俊之】

 ◇軍「防御難しい」 地形複雑、探知しづらく
 韓国国防省で行われた会見や報告書から事件を再現してみた。
 −−3月26日夜、天安は104人の乗組員を乗せ、通常の警戒活動のため韓国西方の黄海に浮かぶ白〓島(ペクリョンド)の南西を航行していた。
 その2〜3日前。北朝鮮の黄海沿岸にある海軍基地から潜水艇や支援母船が離岸し、ひそかに南下を始めた。同島の南側に到達すると、見つかりにくい夜間を狙って天安に接近、潜水艇が魚雷を発射した。
 使用されたのは、大型艦攻撃に使用される北朝鮮製の大型魚雷「CHT−02D」型。目標近くで爆発を起こす「感応魚雷」だ。
 26日午後9時22分。魚雷は、天安のガスタービン室の左舷から3メートル、水深6〜9メートルの水中で爆発。爆発で生じた強力な水流「バブルジェット」で船体が切断され、天安は沈没した。
 潜水艇は2〜3日後、静かに帰港した。輸出用の型として最近建造された排水量130トンの「ヨンオ(サケ)級」とみられる−−。
 現場の白〓島付近の海域は、地形が複雑に入り組んでおり、水中音波探査機(ソナー)による探知が難しいとされる。今回指摘された北朝鮮の通常型の小型潜水艇は、接近戦での待ち伏せ攻撃に適しており、軍事アナリストの小川和久氏は「地形を知り尽くした熟練の乗員が操縦し、モーターを止めてしまえば、探知されずに魚雷攻撃することは十分可能だ」と指摘する。
 北方限界線一帯は緊張の海だ。99年6月、02年6月、09年11月の計3回、周辺海域では南北艦艇の交戦があった。昨年の交戦では、侵犯した北朝鮮警備艇を、韓国側高速艇が銃撃。北朝鮮はこの時、かなり強いトーンで韓国を非難した。今回の魚雷攻撃は綿密に計画された報復だった可能性もある。合同調査団の黄源東(ファンウォンドン)情報本部長は会見で「北朝鮮が現場を偵察していた証拠はないが、北朝鮮側の海底で事前に訓練したであろうと判断している」と述べた。
 ◇警戒態勢に疑問も
 とはいえ、当時の天安の警戒態勢は十分だったのだろうか。
 現場海域は韓国軍が実効支配している。このため韓国内では「北朝鮮の攻撃だったとして、なぜ探知できなかったのか」と疑問視する声もある。報告書は北朝鮮の攻撃だったとの証拠は積み重ねたが、韓国軍側の警戒態勢の検証はしていない。
 元海上自衛隊護衛艦隊司令官の金田秀昭・岡崎研究所理事は「北朝鮮からの攻撃を想定した対潜水艦警戒態勢などを十分にとっていなかった可能性もある。国防上の観点から明らかにできないにせよ、韓国軍もその点は痛いほど教訓としているはずだ」と見る。
 天安では沈没前に、携帯電話で家族と通話中だった兵士がいたことなどが判明している。南北和解ムードの中で規律が緩んでいたとして、韓国軍に対する批判も強くなっている。
 黄情報本部長は「対潜水艦の防御対策は難しい。基地を離れるのは識別したが、わが海域まで侵入し挑発することは予想できなかった。だから十分な対処ができなかった」と、「敗因」を語った。
 ◇日本、具体策なく米韓連携へ
 日本政府は哨戒艦沈没が北朝鮮の攻撃と断定されたのを受け、直ちに「韓国を強く支持する」とする鳩山由紀夫首相のコメントを発表した。ただ、具体的な措置には言及しておらず、当面は米韓両国との連携や中国への働きかけを強調する程度にとどまりそうだ。
 岡田克也外相は20日、調査結果について「客観的であり、信頼できると考える」と評価し「北朝鮮に対して国際社会とともに強く批判する」と語った。
 それでも、日本が北朝鮮に対して行使できる影響力は限定的なのが実情だ。06年のミサイル発射や核実験を受け、すべての北朝鮮籍船舶の入港禁止や北朝鮮からの輸入禁止に踏み切ったものの、北朝鮮は既にその打撃を中国などとの関係強化によって補っている。
 公式な北朝鮮との政府間対話は、拉致問題の再調査で合意した08年8月の協議以来途絶え、民主党政権下では一度も開かれていない。このため、日本は今月末の日中韓首脳会談や日中首脳会談で中国に対し、北朝鮮への影響力を発揮するよう要請するとみられる。だが、北朝鮮が関与を否定する中、中国が同調する可能性は低い。
 一方、北朝鮮の攻撃と結論づけられたことで、米軍普天間飛行場の移設問題で迷走する鳩山政権内に「抑止力論議に追い風だ」(党中堅)との見方が出始めた。普天間問題を契機に「抑止力」を疑問視する声が沖縄や社民党内で強まっており、政府は対応に苦慮している。28日にも発表する対処方針でも「抑止力の説明ぶりが焦点になっている」と政府関係者は明かす。【吉永康朗、仙石恭】
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毎日新聞 2010年5月21日 東京朝刊

社説:北朝鮮魚雷 共同対応で制裁措置を
毎日新聞 2010年5月21日 
 まがまがしい物証が白日の下にさらされた。韓国海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」の沈没事件につき、軍と民間の多国籍合同調査団は「北朝鮮製魚雷による水中爆発」が原因と断定し、魚雷のスクリューなど残骸(ざんがい)を公表した。爆発時に発生する物質がこの残骸と天安の両方に付着していた事実なども確認し、信頼度を高めた。
 また、「魚雷が北朝鮮の小型潜水艦艇から発射されたという以外の説明はできない」という判断も、潜水艦部隊の動向など状況証拠にも依拠しているものの十分な説得力があり、妥当と言えよう。
 鳩山由紀夫首相は「韓国を強く支持する。北朝鮮の行動は許し難い」とコメントした。一方、北朝鮮の国防委員会は声明で、調査結果を「捏造(ねつぞう)」と決めつけ、制裁などに対しては「全面戦争を含む強硬措置」で応えると宣言した。金正日(キム・ジョンイル)総書記を委員長とする事実上の最高機関による異例の直接反応である。
 きょう訪日するクリントン米国務長官は、中国、韓国と続く3カ国歴訪中、「天安」沈没問題も重要議題とする。この歴訪の事前説明でキャンベル国務次官補は、北朝鮮をめぐって「近日中に非常に深刻な状況に直面する」と述べた。危機局面に入ったと言わざるを得ない。日米韓は細心の注意を払い、緊密に協力する必要がある。
 韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は既に「断固たる対応」を宣言している。しかし武力報復の選択肢はない。事態がより深刻化する危険や経済への悪影響を考慮してのことだ。既存の南北協力事業のうち、北朝鮮側地域に韓国企業を誘致している開城工業団地は運営を維持するという。厳しい対立と冷ややかな協力が共存する南北関係ならではの緊張状態が続くことになる。これはやむを得まい。
 韓国政府は問題を国連安全保障理事会に持ち込み、対北朝鮮制裁に結び付けたい意向だ。しかし北朝鮮の後ろ盾になっている中国は一貫して慎重姿勢をとってきた。現状のままでは制裁決議どころか議長声明での非難も難しいだろう。
 だが安保理以外にも制裁的措置をとる方法はある。以前に効果が証明された米国の金融制裁強化や「テロ支援国家指定」の復活、米韓合同軍事演習によるけん制などだ。
 46人もの犠牲を出した事件は到底容認できるものではない。核問題を扱う6カ国協議の進展が一時困難になろうとも、まず確固たる共同対処で北朝鮮の行動を変えさせる必要がある。それが核問題の解決にもつながるという展開が望ましい。
 そのためには結局、中国の協力が不可欠だ。選択肢の少ない日本も、こうした点で知恵を出したい。
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毎日新聞 2010年5月21日 2時32分
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社説:韓国艦撃沈―北朝鮮に断固たる外交を
                          2010年5月21日  朝日新聞
 46人もの兵士が犠牲になった韓国軍の哨戒艦の沈没は、北朝鮮製の魚雷によるものだった。そして、それは「北朝鮮の小型潜水艦艇からの発射以外に説明がつかない」。5カ国からなる合同調査団がきのう、そう発表した。
 戦争の引き金になりかねない撃沈だったということだ。日本を含む東アジア全体の安全をも大きく揺るがす許しがたい暴挙である。
 動機は不明だ。金正日総書記への忠誠心競争が暴走した結果なのか。軍の威信を高め、後継体制づくりに利用しようとしたのか。昨秋、北朝鮮艦艇が海上の事実上の境界を南に下って韓国軍に撃退されたが、その報復との見方もある。いずれにしても異様な国家の異様な行動である。
 北朝鮮は報告書を「でっち上げだ」としている。だが、1968年には韓国大統領府への襲撃を図った。83年にビルマ(現ミャンマー)訪問の大統領一行を狙ったラングーン爆弾テロ、87年の大韓航空機爆破と、韓国に対してテロを繰り返してきたが、北朝鮮は関与を認めていない。
 冒険主義に走ることをいとわない危うい体制であることが改めて如実に示された。
 しかし、この攻撃は北朝鮮自身にとっても無謀の度が過ぎたのではないか。経済の窮状は深刻化し、金総書記は健康不安を抱えている。国の先行きはますます不透明になっている。
 また、決定的とも言える証拠が出たことで、これまでそれぞれの思惑から事態を大きく動かすことに慎重だった周辺国も態度を変える可能性がある。
 韓国の国民の憤りは激しい。李明博大統領は「断固たる対応措置をとる」と語った。国連安全保障理事会での制裁を呼びかける方針だという。
 北朝鮮にこれ以上の暴挙を重ねさせてはならない。同時に朝鮮半島の緊張をいたずらに高めない。これは日本を含め地域全体で取り組むべき課題だ。
 まず、米中の役割が大きい。ことに中国が重要な役割を担わねばならない。さきの金総書記の訪中では、経済支援などで中朝間に溝があったともいう。北朝鮮の言動を中国が不快に思っているからでもあろう。中国には、経済面での強い影響力を生かし、北朝鮮の挑発的な行動を抑え、外交の場に引き出す努力を続けてもらいたい。
 鳩山由紀夫首相は「韓国、米国をはじめ関係各国と緊密に連携・協力していく」と述べた。きょうクリントン米国務長官が来日して鳩山首相らと会談する。長官は中韓も歴訪する。月末には日中韓の首脳会議も開かれる。
 北朝鮮は東アジアで最大の不安定要因であり、この事件はすぐれて日本の問題でもある。米国、韓国との深い関係を生かし、中国に働きかけを強める。外交努力が待ったなしだ。

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石田ふたみ